見えないものを語るインタビュー

寺田優さん/寺田本家24代目当主 その1

大切なことは見えないところにこそある。
そんな見えないものの存在を認め、
さまざまな分野で活躍する方たちに
お話を伺います。

そのユニークな酒づくりと他にない味から
全国的に知られた存在、寺田本家。
24代目当主、寺田優さんが
酒を醸してくれる微生物たちと日々接し
目に見えない小さな彼らの存在を大きく感じながら
宇宙的視点で見る「見えないもの」について。

人の思いは、微生物に届いているし
感じてもらえているんじゃないか

1000~2000年前から伝統的に続いてきているといわれる酒づくりですが、微生物が役割を果してるとわかったのは最近のこと。それまでは、なぜそうなるかはわからないけれども、米を筵で包んだら麹ができたとか、その麹に米を合わせたら酒ができたとか、そうした経験の積み重ねで少しずつ日本酒のつくりかたが確立されていったんです。理屈はわからないながらも、おいしくできてほしいという願望や祈りといった人の想いが大きく働くことは理解されていたと思うんですよね。
微生物にどんな働きかけをしたらどういう結果になると科学的にわかっている現在でもやっぱり、それがすごく関係するんだと思っています。想いというのは、じつは微生物に届いているし、感じてもらえているんじゃないかって。というのは、自分たちでも実感していることなんですが、同じ原料で同じ方法でも、つくる人によって酒の味が違ってくるんですよ。いろんな要因があるとは思いますが、それには少なからず、人の想いが響いているからなんじゃないかなと。
微生物は非常に小さい生物で、たとえば酵母菌は5ミクロン。1mmの5/1000とか、そんな世界なんですよ。小さい生物だからこそ、すごく純粋な存在で、いろんな影響を直接受けるんじゃないかと思うんです。人間の想いというのもひとつのエネルギーでしょうから、微生物はそれを感じとって、もっと元気に発酵しようとか、ここはちょっとおとなしくしとこうとかってなるんじゃないか。そうだとすれば、だからこそ、自分たちが大事にしているお酒づくりは、心をこめて手づくりでやっていこうと思うのです。

なにが、お酒をおいしくするか?

——寺田本家の酒づくりの特徴のひとつでもある、酒を仕込むときに歌うのも、そのためですね。

そうです。祈りだとか、内側から立ちあがるっていうのが歌の語源だという説もあるそうです。想いを伝えるために歌が生まれたんじゃないかっていう話もあるそうで。だから歌うのは、楽しくするためってこともありますけど、見えない生き物に想いを捧げるっていう大きな意味があったんじゃないかな。
酒屋もそうですが、農家さん、木こりさん、猟師さんと、いろんな仕事の現場には歌があったそうです。昭和30年代に、そうした歌を全国から3万曲集めて収録した人がいました。それくらい、日本人というのは昔から歌いつづけてきて、歌と仕事がセットになっていたような、ちょっと変わった人たちだったんじゃないかと思うんですよね。この土地で生きていくことのリズムがきっと、遠くにいる神様ではなく、身近にいるいろんな神様に語りかけるような、神様と行き来するような感覚があったんじゃないかっていう気がします。
歌うとやっぱり、みんなの心もひとつになりますし、歌を聴いて微生物もより元気に発酵してくれるんじゃないかな。蔵によってはビートルズやモーツアルトを聞かせるところもあるようですが、いずれにしても、お酒をよりおいしくしていこうとしてやっていることなんですよね。歌っていうのは振動でもありますから、その振動にしろ波動にしろ、なにかしらおよぼすものがあるんだろうなと思います。
不思議なことに、そういうことをやりはじめたら、お酒の売れ行きも変わってきた感じがあるんですよ。どのぐらい直接的に関係しているのかは実際のところはわかりませんが、自分たちがを楽しんでいる気持ちが歌に込められ、それが酒に込められたということなのかな。

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——「気」ともいえるでしょうか。

そうですね。お酒は生き物だっていう表現はよくされますが、それは、そこに込められてる気だとか波動だとかが、立体的な背景として大事なのかなという感じがします。大量生産のものと、生産者の顔が見えるすごくこだわった商品と、これからもっと両極端になっていくのかもしれませんが、人はやっぱり人なので、人のつくったものがいちばん幸せにもしますし、身体を癒すことにもなるんじゃないかなと。
たとえば食べ物ですと、どんな栄養素だとか、どのくらいのカロリーだとかっていうのではないところが大事なんじゃないでしょうか。コンビニのおにぎりよりも、お母さんが握ってくれたおにぎりのほうがなぜおいしいかというと、見えない気をまとってるからですよね。いまの科学では評価や数値化をなかなかしづらいところですが、それがもののありかたを変えている事実は、少しずついろんな方面で気づかれはじめているんじゃないかな。そしてその気づきが、ちゃんとした手づくりのものを評価するとか、顔の見える関係を信頼するとかっていう流れになっているのかなと思うんですね。
そういう意味で、見えない気をいかに込められるかっていうのが、いいものづくりができるかってことに懸かってくるんだと思いますね。

「寺田優さん/寺田本家24代目当主 その2」へつづく

寺田 優(てらだ まさる)
無農薬の米を使って無添加で酒づくりをする寺田本家の第24代目当主。学生時代のバックパッカーに始まり、動物を撮影する動画のカメラマン、世界中の農業研修を経て、寺田本家に婿入りする。添加物入りの酒づくりからかつての自然酒づくりに立ち返り、寺田本家を大きく方向変換させた先代の遺志を継ぎつつ、寺田本家の地元である千葉県神崎町を活性化する「発酵の里プロジェクト」発起人を務めるなど、発酵の魅力を伝える使命を胸に活躍している。
www.teradahonke.co.jp

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