冷蔵庫のなかって、生活や暮らしぶりがそのままつまっている
じつにプライベートな空間です。
そんな冷蔵庫のなかを収めた写真、そして、冷蔵庫の持ち主のポートレイト。
「人間」と、その人間をつくる「食」を並べて見せることで
「いのち」と「くらし」のありようを象徴的に表現しようという試みです。

第5回 村上家(日本・福岡/2013年・初冬)
研二さん、直子さん

福岡県糸島市。海も山もある豊かな自然にあふれていながら都心へのアクセスもよいことから、近年、地元民だけでなく県外からの移住者も増えている人気のエリアです。自然農の畑を始めるため、村上さんご夫婦はこの地にやってきました。おふたりとも九州のご出身です。
「それまでは畜産飼料の会社に勤めていました。子どものころから植物や鶏を育てるのが好きで、それもあって農に関わる仕事を選んだんですが、実際に食べ物や生き物が育つ場所、それを食べている人とは距離のある仕事だということに気がついてしまったんです」。
そして都心に転勤になると、高層ビルのなかで電話片手にパソコンで仕事するように。本当に土から離れてしまい、自分のなかの疑問はますます強くなっていきました。
「あと何年生きられるかなと思うと、やりたいことをやりたい。自分の信じることをやりたい」と、ついには13年半勤めた会社を退職しました。それが、6年前のこと。

研二さんの畑は、自然農の畑。作物はいろいろで、自分たちが食べるぶんをつくっています。「畑を始めたころは稼がないとと思って、出荷したり、加工品をつくったりもしていたんですが、やっぱり自分が食べるぶんを育てるのがいいなと思って、だんだん縮小していきました。でも知り合いには出荷したり譲ったりすることもあります」。

研二さんが農業を生業にするようになってから、おふたりの家事の分担が変わったそう。「自分が育てた野菜のことは料理もしないとわからないということで、ごはんづくりは僕が担当になりました。毎日のごはんなので、そういつも楽しんで料理しているわけでもないですけどね」と研二さん。
「味が決まってないときなんかはたまに口出しもしますが、塩は足してねって最初に予防線を張られることも(笑)。でも、つくってもらっているだけでありがたいので(笑)」とは、奥さまの直子さん。

糸をつくりたくて、綿花も栽培。「自分で育てた綿でタオルにでもできたらいいなと。奥さんのつくる服の原料にもできたら」。

研二さん自ら交配している、販売用の花。「原種の可憐な小ささと園芸種の丈夫さをもった花をつくりたくて。園芸家は花を大きくするために努力してきたけど、反対に小さくするのはなかなか簡単にはいかない」。

食べる用と、畑に撒く用の大豆、ごま、ササゲなど、収穫した豆類いろいろ。

村上家の冷蔵庫は、ふたつ。台所にあるいわゆる家庭用の冷蔵庫と、納屋にある業務用の大きな冷蔵庫(冷凍庫つき)。たくさんのいろんな野菜の種と、たくさんのお酒に圧倒されます。「この種を持っていたら、無人島に移住しても、半年ぶんくらいの食料は確保できるかもしれません。こっちは生姜シロップ、マッコリ、ビール。すべて手づくりです。…ビール、多いですね(笑)」。

こちらはいわゆるふつうの村上家の冷蔵庫。ふだんは和食が多いですか?と尋ねると「いいえ、炒め物が多いです(笑)」。

村上家の手前味噌。容器は、いちばん最後に買った市販の味噌の容器。

塩、醤油、ドレッシング、酒、コーヒーなど、糸島で知人がつくっているものを常備。

マッコリ用に起こした酵母、生姜シロップ、どぶろく。お手製のものが瓶に入って。

種や皮など、食べ残しをバケツに入れて、畑へ返しに。「畑からもらったものをこうして畑に返すと、循環していることをいちいち頭で考えなくても、すとんと理解できる。本来的にはゴミもないし、それぞれが次の命にとって価値のあるものにしていく。それでまわるしくみがこれまで続いてきたとするなら、そこから大きく離れることは効率が悪いことのはずなんです。自然農の基本は“持ち込まず、持ち出さず”。僕はいま排泄物を返すことはできていないので“持ち出し”てしまってますが、本当は生き物は“持ち込まず、持ち出さず”で生きるはずで、人間もその例外ではない。そういう暮らしに近づいていきたいんです」。
研二さんが将来的に目指しているのは、食べ物だけではない自給自足です。「生きるための仕事と娯楽はなんでもいいというわけではない。この選択肢しか自分にはないと思ってやっています」。淡々と静かな語り口だけれど、それが信念であることは十分すぎるほどに伝わってきました。

※研二さんが交配している花。取材時には出たばかりだった芽が
ぶじに咲いたと、うれしいお知らせをもらいました。
ついに花を小さく咲かせることに成功したそうです。

村上研二さんオリジナル 唐辛子ソース

唐辛子の品種や収穫時期によって、仕上がりの味や辛さ(色も!)が大きく変わるのも楽しい。ホワイトソースに加えたり、焼きしいたけにからめたりするのが、村上さんのお気に入り。

材料

かぼす1:とうがらし1:塩1の配合
にんにく 少量

つくりかた

すべての材料をフードプロセッサーにかける(唐辛子は種ごと)。

※唐辛子の種を除くと辛さが少しおさえられます。
※パプリカを加えると甘みが出ます。

村上家
研二さん、直子さん
研二さんは、自然農の田畑をやる傍ら、暦づくりも。本来、生き物は自分がいつなにをすべきか知っているはずで、それに鈍感になっている感覚を取り戻すべく、農暦や自然現象を盛りこんだ暦を手づくりしている。今年から商品化している。
直子さんは、BUCOLICAというブランドを手がけ、日々日常の服を手づくりしている。

《あのひとの、冷蔵庫》の記事

  • 家族団欒の場であり、仕事の場でもある。公私かかわらず、キッチンは瀬戸口さんの本拠地です。

  • “持ち込まず、持ち出さず”の自然農の精神を人生そのもので実現しようとする村上さんの暮らし。

  • エネルギー、食べ物、仕事の自給がテーマ。そして食べてばっかりの、仲よしシェアハウス。

  • お子さんの誕生直前、最後のツーショット(?)の堀家を取材。おふたりによると、堀家の冷蔵庫のウリは3Dマグネット!ということですが…。

  • 文吾さんが一目惚れしたのは奈々子さんのカレーでした。愛のキューピットは食べ物だったのです。

あわせて読みたい記事・おすすめ商品

オンラインストア入荷情報