〜川原真由美さんインタビュー番外編〜
川原真由美さん×藤田ゆみ(くらすこと)対談

くらすことロゴマーク誕生秘話

くらすことのロゴの生みの親、デザイナーの川原真由美さんと
そのロゴの育ての親、くらすこと主宰の藤田ゆみが
我が子の成長ぶりについて語りました。

——ふたりが初めて出会ったのはいつだったんですか?

藤田 2005年ぐらい。『ひとりがけの椅子』(川原さんと青木美詠子さんの共著)がすごい好きだったので、なにかお願いできたらいいなと思っていて。それで『くらすことの本』をつくるときに、ADをやってもらってた(嶌村)美里さんに紹介してもらったのかな。

——では、『くらすことの本』が、くらすこととの最初の仕事だったんですね。

川原 はい。はじめは表紙のイラストだけだったんです。追加でタイトル文字もオーダーしてもらって。ある書体をもじって手描きしました。たしかそのあとに、くらすことのロゴマークもデザインさせてもらうことになったんですよね。

藤田 ロゴと、ホームページのイラストだったと思うんですけど。オンラインストアの「台所道具」とか「こどものもの」といったような、カテゴリーごとのトップのモノクロ画。

川原 あ、そうですね。

——ロゴは『くらすことの本』のタイトルをアレンジしたものですよね。

藤田 うん。はじめから流用ということではなくて、あらためてロゴとして考えてもらったと思うけど。

川原 でも結果的に、やっぱり『くらすことの本』のタイトル文字の方向にしようってなったんですよね。ほかにゴシック系のとか、クレヨンで描いてみたりとか、いろいろ試しているうちに、これだなっていうイメージがだんだん固まってきたんです。ほかにいろいろつくっても、なかなかしっくりこなくて、やっぱり最初のこれがいいなって。で、その文字に○△□をつけた。

——図形をつけてほしいといった具体的な注文はとくになかったんですよね?

川原 そうですね。ロゴをつくることになってから、藤田さんに取材させてもらったんです。くらすことはどんなことを思想としてやろうとしているか、といったことをいろいろ聞きました。それで、めずらしいものではなくて、とてもシンプルな基本のもの、人の本質みたいな、血と骨と肉みたいな、そういうことかなって感じて。そこに積み木のように重なっていく。自由自在に動いて、外との相乗効果で化学変化を起こす、そんなイメージがあって。これから雑貨とかも扱っていきたいって話だったから、じゃあちょっと形を入れようと思って、○△□のマークをつけることにしたんですね。で、それが動きだすような感じになるといいなと思って、ちょっとバランスを崩してるんですよ。安定しているよりも、自由に動く感じがいいなって。ちょっとずつ変えて、いろいろ試してみたんです。

藤田 あのころは活動をはじめて3年めぐらいだったかな。どっしり落ち着いてというより、とにかく流れの勢いのままに、あれこれどんどんやっていこうという時期で。だから川原さんからいろいろ提案してもらっても、あんまりよくわかんなかったんです。でも、あのときにこれかなあって選んだものが年々、しっくりしてきて、やっぱりこれでよかったんだと思います。私自身や、やっていきたいことをちゃんと見てくれて、ちゃんと考えてくれたんだなって。

_MG_5749川原 私も、こうしていま看板とかパッケージとか、いろんなところに使われているのを目にすると、自分のつくったものがどんどん育っていってるなって感じる。そうやって時間をかけて使われていくことによって、ロゴがどんどん意味をもってくるというか、肉づけされていって骨太になるというか。文字も図形も、垂直水平がとれない、ちょっと使いにくい感じじゃないですか。私はつくって渡すだけで、その先はくらすことの使いかたしだいだったんですが、すごくいかして使ってもらって。どんどんいきいきしてきたな、育ってきたなって思ったんですよね。

藤田 うん。

川原 最初に考えていた以上に意味をもって、しっくりしてきている。

——ロゴをつくった人と使う人、双方の立場から同じことを感じているんですね。

藤田 ここ2〜3年、すごいしっくりしてきたなと思っていて。

川原 たとえば自分がつくった服を素敵な人が着こなしてくれて、想定していたよりもよく見えるみたいな。

藤田 嬉しい!

川原 でもロゴってたぶん、本来そういうものなんですよ。デザインができても、それだけでは完成していなくて、ロゴを使う人たちがどんどん意味をつけていって、初めていきてくる。もともとロゴにはそういう意味合いがあるんですよね。ちょっと先を行くっていうか、そのためにつくるから。

藤田 ほんと、そうだと思います。

川原 みんなが向かう先に旗があると、わかりやすいから、デザイナーはそれを考える。だから私も、お医者さんが診察するみたいに藤田さんに取材したんです。

藤田 当時はまだ、自分がやっていくべきことがぼんやりしていた。

川原 最初はみんなそうだと思うんですよ。たとえ明確に決まっていたとしても、変化していくものだし。でも話をしたら、その人となりみたいなことはわかるじゃないですか。そうすると、向かうであろう方向がなんとなく見えてくるというか。他人だからこそ当人よりも見えることもあるでしょうし。くらすことの場合は、その探る作業がやりやすかったから、あんまり迷わなかった。たくさんラフはつくったけれど、わかんないなって苦しんだ憶えは全然なくて。

藤田 自分もまだよくわかっていないながらも、人が集まって場所をつくっていくっていうようなことは言った気がします。あと憶えてるのが、どういう活動をやっていきたいかっていう話で、その当時住んでいた家の近所に老人ホームがあって、その前を夜、通りがかったとき、明かりのついたカーテン越しにそこに住むおばあさんのシルエットが見えて。そんなとき、その人がその人らしくいきいきと日々暮らせますようにと心で祈らずにはおれない、そんなことなんです!みたいな、ものすごく抽象的なことを言った気がします。

——そういうことはいまでもよく言ってるから、根っこにあるということなんだね。

川原 何度も手直ししたのに結局は最初に描いたものに戻っていったのは、そういう話を聞いて、バランスを整えなくていいんだって思ったからかもしれない。きちんと決まってなくてもいいんじゃないかって。それは曖昧になってしまう危険性もはらんでいるんだけど、そこは明朝でカチッと各文字がつくってあれば、そして○△□っていう決まったかたちがあれば、全体は不安定に浮遊していてもいいのかなというか、そのほうが、いつでも変化しうる藤田さんのやりたいことに合ってるのかなって。ここまで具体的に考えられていたわけではないけれど、そういうニュアンスは感じていたと思います。

藤田 それにしても、どういうふうにしたいとか、どういうことを大事にしたいってことを訊いて、それをかたちにしていくって、楽しいですね。

川原 そうですね。つくるための材料は、訊くことからしか得られないですからね。

——まだ始まってなくて、かたちがないから。

川原 そうそう。感じとるしかないというか。

藤田 ロゴって大事ですね。

——大事ですよー。みんなが思い浮かべるアイコンだもの。

川原 そう簡単に変えられないし。

藤田 くらすことが伝えたいこと、やっていきたいことの根幹は変わらないけれど、自分も歳をとって感じることも変化するし、いろいろな人が関わってくれることで活動のかたちも変わりつづけていく。そんなくらすことをまさに表していて、いまとなっては、これ以外は思いつかないです。……ありがとうございました(笑)。

川原 こちらこそ!

川原真由美{仕事の原画}展

イラストレーターでありグラフィックデザイナーでもある川原真由美さんによる、初の原画展を開催。高山なおみさんの著作や『暮しの手帖』『クウネル』などで、きっとみなさんも見たことのあるイラストを、たくさん展示します。

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