赤ちゃんのお弁当 その3
〜教える人 セトキョウコ

写真 馬場わかな  構成・文 松本あかね

赤ちゃんにお弁当があったら、お出かけがもっと楽しく。
離乳食のお弁当の作り方を3回に渡って料理家のセトキョウコさんに習います。

野菜うどん 
—— 後期(9〜11ヶ月頃)

いろいろな野菜と乾麺を濃いめの出汁で煮込みます。
素材から出るうま味は赤ちゃんが好む味わいのひとつ。

用意するもの:蓋つきガラス瓶(120cc)
※蓋が金属製のツイストキャップのもの

瓶は煮沸消毒しておきます

1. 鍋にかぶるくらいの水と瓶、蓋を入れ火にかけます。
2. 沸騰したら10分ほど煮沸します。
3. 乾いたフキンの上に逆さにして余熱で乾燥させます。

野菜うどんの作り方

材料:
乾麺 … 15g
人参、大根、しめじ、えのき、ブロッコリなどの野菜 … 計20g
鳥ひき肉 … 5g
出汁 … 100cc ※「赤ちゃんのお弁当 その2」『出汁は濃いめで』参照
しょうゆ … 1、2滴
塩 … ごく少量
水溶き片栗粉 … 適量

1. 野菜はそれぞれ粗みじん切りにします。
2. 鳥ひき肉と一緒に鍋に入れ、出汁で柔らかくなるまで煮ます。あくが出たら丁寧に取り除きます。
3. 乾麺は1㎝くらいの長さに手でパキパキ折り、やわらかめに茹でます。
4. 麺が茹で上がったら1の鍋に加えて一煮立ちさせて、醤油と塩で調味、水溶き片栗粉でとろみをつけます。
5. 熱いうちに煮沸消毒して乾かしておいた瓶に詰めます。

脱気します

1. 蓋をギュッと締める直前まで締めます(少しゆるいくらい)。
2. 鍋底にフキンを敷いて瓶を置き、瓶が半分以上浸るくらい水を入れます。
3. 火にかけて沸騰したら15分、煮沸します。

蓋をきつく締めます

4. 15分経ったら、トングなどで瓶を取り出し(熱いので注意!)、蓋を最後まできつく締めます。
5. 再び鍋に戻し、15分間煮沸します。

できあがり!

食べるときの留意点:
• 作った日のうちにお召し上がりください。
• 食べさせるときは、大人の舌で味を確かめてから。
• 食べ残しは廃棄しましょう。

あると便利なもの その1

ミニすり鉢&ミニすりこぎ、ミニマッシャー。
「小さなすり鉢は、子どもが生まれたときに買いました。少量のときは、バーミックスより使いやすいと思います」。洗うのもらくちん。
※ミニマッシャーは「くらすこと オンラインショップ」で取り扱いがあります。
ミニマッシャー

あると便利なもの その2

離乳食スプーン3種
左から、「離乳食さじ」(荒井智哉)、「はじめての匙」(匙屋)、「こどもスプーン」(輪島キリモト)
「離乳食スプーンは、全体が15 ㎝くらいの長さで、口に入れる部分が浅いものが使いやすいと思います。お店で大人のものから取り分けてあげるときにも便利なので、外出するときは持ち歩いていました。漆塗りのものは、抗菌作用があると言われていて、それも安心ですよね」
※「離乳食さじ」(荒井智哉)は「くらすこと オンラインショップ」で取り扱いがあります。
荒井智哉 離乳食さじ

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手づかみ弁当
—— (12〜18ヶ月頃)

ミネストローネのおやき、温野菜スティック、青海苔入り卵焼き、おかかむすび。

1歳をすぎたら、そろそろ手づかみ食べの時期が始まります。
「おすすめはおやき。これはミネストローネの野菜を絞って、みじん切りにしてから粉と混ぜ、
スープを少しだけ足して、お好み焼きのように焼いて細長く切ったもの。
野菜もとれ、手で食べられて本人も喜ぶという、母子ともにうれしいメニューでした。納豆や青菜を入れても」
「小さなおむすびのコツは、手のひらで転がすようにすること」
少し多めの量なので、おかあさんも味見がてら食べてみるとよいでしょう。

離乳食期のおかあさんへ

最後に離乳食期のお子さんのいるおかあさんたちへ、
セトさんからのメッセージ。

・・・お子さんも3歳になられたそうですが、今もお弁当を持って出かけることはありますか。
今は保育園に通っているのですが、土日に「お弁当持って公園へ行こうよ」というとふたりですごく盛り上がったりして。楽しいなと思います。お弁当もよく作りますが、時には外食もします。息子は外食好きなんです。「いらっしゃいませ」と言ってもらうのがうれしいみたい。

・・・離乳食の頃もよく公園へ行かれていたのですか。
私自身、公園が好きなんですよ。離乳食が始まったのはちょうど春を迎える頃で、暖かい日にはお弁当とピクニックシート持って出かけて、息子といっしょに寝転がったり。そうすると、自分も子どももすっきりして、気持ち良く家に帰ってこられるので。それまでとは一日の時間の過ごし方も変わってきたと思います。

・・・当時、離乳食のことで悩んだことはありましたか。
離乳食の最後の頃、白いご飯を食べなくなってしまったことがありました。混ぜごはんや炊き込みご飯は食べるのに。でも味の濃いものばかり食べさせていたら、それに慣れてほかのものを食べなくなるんじゃないかと思って、けっこう悩みました。
検診のときに栄養士さんに相談したら、「味の濃い炊き込みご飯をずっと食べていたら、ある日飽きて白いご飯が美味しくなる時がくるのだから」と言われて。それで急に気が楽になって、野菜をなるべく入れるとか、栄養バランスに気をつけていたら本人が好きな味付けのものを、少し続けても悪いことじゃないんだと。一生それしか食べないということじゃないんだなと冷静に考えられるようになりました。

・・・「ばっかり食べ」という言葉もありますね。
たとえば、かぼちゃとか甘い味のものしか食べないと悩んでいる方も多いと思うのですが、もしかぼちゃしか食べてくれないのなら、みじん切りにした野菜を混ぜてお団子にして焼いたり、喜んで食べるものがあったら、それをベースにして少しずつ他のものにも慣れていってもらうと考えたらいいのではないかしら。子どももそれぞれにブームがあるものだと思いますし。

・・・そうやって工夫しながらベビーフードを作ること、楽しめましたか?
はい、楽しかったです。瓶に詰めるので外から見えますよね。おかゆに黒米を混ぜて赤い色をつけたり、色どりを考えるのも楽しかった。きれいだとこちらもあげるときの気持ちが盛り上がって、子どももすごく期待して待っていて。でも食べたらなんかちょっとちがうじゃん、みたいなことも(笑)、もちろんありつつでしたけれど。

・・・今、お子さんは「食べること」が好きですか。
最近は、初めて食べたものの感想を言うようになりました。なかなか面白いこと言うな、と感心することも。食事のお手伝いも好きでよく「手伝おっか」とやってきます。それがまた大変なんですよ、進まなくて(笑)。でも、そうやって食べることにまつわることを楽しんだり、興味をもってもらえると、楽しみもひとつ増えるし、いいことだなと思っています。今は野菜はあんまり好きじゃないけれど、そこは頑張って克服していただくとして(笑)。

離乳食が始まってから出不精に、
「お弁当」を持参するようになっておでかけが楽しくなり、
今でも休日にはお弁当をもって公園へでかけるのが親子ともに楽しみというセトさん。

セトさんと息子さんの「赤ちゃんのお弁当」時代のお話から、
食べることは赤ちゃんにとって、たくさんの「初めて」に出会う、
豊かな経験なのだと感じました。
なにより、「食べることが楽しい」という記憶は
その後につながっていくことを、実感させられたお話でした。

食べ始めはお弁当始め。
戸外が気持ちよいこれからの季節、
ぜひお弁当を持ってお出かけしてみませんか。

prifleプロフィール:
セトキョウコ 料理家。都内を中心にケータリングやイベント出店、雑誌などで活動。月刊『クーヨン』(クレヨンハウス)にて親子のとりわけレシピ&エッセイ「ちいさいおさじおおきいおさじ」を連載中(〜2015年3月)。最新の活動予定はこちらから