写真 嶋本麻利沙

ふたごの作家Zwillingeの紙仕事/前半
フレーベルの星に、
ささやかな祈りの気持ちを込めて

美しく、透き通るような紙で折られた立体の星、
初めて目にしたとき、私たちはその輝きに
すっと心奪われてしまいました。
「フレーベルの星」。
小さくても不思議な存在感を放つこの星の生まれた場所を探しに、
ふたごの姉妹ユニット「ツヴィリンゲ(Zwillinge)」のおひとり、
森住香さんを訪ねました。

お話を聞いた人 ツヴィリンゲ(Zwillinge) 森住香さん
1976年 福岡市生まれ。大学から京都に5年住み、その後大学院で東京へ。長女を出産後に美術館ボランティアなどをしながら2007年、双子の姉徳永直子さんと共に「ツヴィリンゲ」を立ち上げる。作品製作や展示会のほかワークショップをおこないクライスター・パピアを紹介している。10歳の女の子、7歳と2歳の男の子のお母さん。
cargocollective.com/zwillinge

秋の気持ちがよいある日。木々が揺れる緑豊かな風景の中に建つご自宅の扉を開けると、中からユーカリのさわやかな香りが漂ってきました。廊下の向こうには、緑や黄色のフレーベルの星が、モビールのように連なっているのが見えます。

笑顔で迎えてくれたのは、「ツヴィリンゲ」の森住香さん。ドイツ語で「ふたご」を意味するこの言葉の通り、ふたごの姉、德永直子さんとの作家ユニットとして活動しています。

「現在は、姉の直子は熊本に暮らしていて、子育てに専念しているので休業中なんですけれど」と前置きをしつつも、まずおふたりの活動の始まりについて森住さんは話してくれました。

ツヴィリンゲを始めたきっかけは
押し入れにあった姉の作品

日本の美術大学で大学院を卒業し、その後は美術教育に携わっていた森住さん。あるとき帰省先の実家の押し入れから、たくさんの美しい紙や製本、箱などが出てくるのを“発見”します。
「ドイツに留学し、紙染めや伝統的な製本技術を学んでいた直子が、つくったものでした。驚いて、『わあ、何これ! 直ちゃん、すっごく素敵だね!』って声をかけたんです」
すると、直子さんはすごく嬉しそうにこう言ってくれました。
——そんなに、香ちゃんが気に入ってくれるんなら、いいよ、あげるよ。

「私たちはふたごで、幼い頃から好きなものも似ていたけれど、同時にどこか違うところがあって。私は自分がいいと思ったものを、たくさんの人に知ってほしい、みてほしい、と思うタイプだけれど、直子はどちらかというと、ひとりでその道を探求するタイプ。そして紙染めも製本も自分の中で夢中になってやったら、また次のやりたいことに向かうところがあるんです。
でも、本当に美しかったから、これを押し入れにしまっておくのはもったいないって思ったんです」

そこから、森住さんは、直子さんの染めた紙や、それを使ってつくられた文房具を、自分が広げる手助けをするからふたりで活動を始めようと誘います。ワークショップをしたり、作品を「ここは」という店に置かせてもらったり、そうして少しずつツヴィリンゲの活動を広げていきました。

フレーベルの星をもらったときの
感動を忘れられなくて

今ではツヴィリンゲの代表作として知られる「フレーベルの星」。半透明の紙で折られた立体の星のオーナメントは、クリスマス前には注文が殺到し、星を折りつづける毎日になるといいます。そんな星との出会いも、やはりきかっけは直子さんでした。

「ある時、直子が『これ、あげる』といって、真っ白い星をひとつくれたんです。そのときに、もう一目惚れしてしまって。『なんてきれいなんだろう』って。長い間、机の上に飾って、いつも眺めていたのを覚えています」

フレーベルの星、というのは、ドイツの幼児教育学者フレードリッヒ・フレーベルが考案した、紙で折る星のこと。実際、ドイツでは学校で折り方を教わるほど有名なものなのだそう。

「ドイツでは誰でも知っている星かもしれないけれど、この紙で星をつくったらきれいだろうと決めたのは直子です。私たちのフレーベルの星って、ドイツの人にも、『きれいだね、どうしたの、どこで買ったの?』って驚かれるくらいなんです。私も、ドイツ人がつくっているフレーベルの星より、自分たちの星のほうがきれいだなって思います。自画自賛ですけど(笑)。それは紙。この素材。やっぱりこの紙で星をつくるのはぴったりだったって、この間もふたりで言っていたんです」

半透明の凛とした硬さの紙は、クロマティコと言われる、クラシックトレーシングペーパー。窓辺にかざすと光を受けていっそうやわらかな輝きを放ちます。しっかりと尖った先端は、夜空に見える力強い星、そのもの。森住さんのご自宅には、窓辺と、廊下にひと連なりずつ、暖かい草原を思わせるような色合いの星がつるしてあります。

色とりどりの紙を細長く切り取り、その4枚の紙を使って、少しずつ織り込むように折っていくことで、立体的な星がうまれます。話しながら星を折る森住さんの手の動きは、丁寧でありながらもとてもスピーディ! あっというまにひとつの星が出来上がりました。

「でも、星をつくるのって、早く、たくさん折ればいいというものではないんですよ」
森住さんは一息いれて、そんなふうに言いました。

つくりながら変わっていった
星へ込める思い

「星の折り方を教えて欲しい」という要望に答えて、頻繁にワークショップを開いていたツヴィリンゲのおふたり。星を多くの人に知ってほしい、多くの人の手に届けたいという思いは叶ったようにも思えました。ところが、あるときを境に、まず直子さんが、そしていつしか森住さんも、星への思いが薄れていっていることに気がつきます。

「いつだったかたくさんの注文を受けて、折り終えた直子が、もう星を折れなくなってしまったんです。最近その感覚が私にもわかるようになりました。星をつくるのって結局誰でもできることなんです。インターネットを見れば、日本語でも、英語でもドイツ語でも折り方は載っている。星を折る事は単純作業です。でも、だからこそ、『何か』がないとつらいんです。
よく、『そんなに注文が入るなら、他の誰かに頼んで折ってもらえばいいじゃない』って言われるんですけど、それは、全然違う。自分たちにはそうする必要がないというか、星をそういうふうにするのであれば、全然、ツヴィリンゲでやる意味がないなって思うようになったんです」

こんなふうに、森住さんが星への思いを新たにするようになったのは、2年前に3人目の子どもを出産し、一度働き方を見直してからだといいます。

子どもが生まれての決意
「仕事は絶対楽しくしたい」

森住さんには現在3人のお子さんがいます。一番下の男の子はまだ2歳。産後、しばらく休んだ後、最近になって仕事を再開しました。

「3人目の妊娠中に長く入院していて、生まれた後に、子どもも、私自身も回復にすごく時間がかかって。仕事がしたい、でもできない、という状況になったとき、よく考えたんです。『自分に今できる仕事はなんだろう?』って。保育園にも入れないし、自宅で子どもを見ながらできることは?って。ツヴィリンゲの主な仕事は、紙染めですが、でもそれは子どもがいる状況ではとてもじゃないけれどできない。周りの音が聞こえなくなるくらい集中していないといいものができないのです。でも、星なら折れる。自分にできる仕事は星を折る事だなって思ったんですね。そして、子どもがいてもなお仕事をするなら、今までと同じじゃなくて、もっとずっと楽しい気持ちで始めようって決めたんです」

そうして星を折り始めた森住さんを見て、子どもたちはこういいました。
「なんでママずっと遊んでいるの? ママのお仕事って遊びなの?」

森住さんはその声に、素直にこう答えていました。
「『そうなんだよねえ』、って(笑)。『そうなんだよ。だって、星をつくるのって楽しいし、ママはこの仕事が楽しいから。星をつくっていると嬉しい気持ちになるからね』って言ったんです」

仕事をやるからには楽しく。でもそれは、いい加減にすることではなく、むしろ、自分の生き方をまっとうさせるように思いを込める、という意味でもあります。

「やっぱり、星を折るからには、きちんとそれなりの思いを込めて。少しでも嫌だなというような気持ちで折るのはやめようって決めました。だから、何かに腹立たしい気持ちでいるようなときには、星はひとつも折れないんです。星って、見えない気持ちが伝わるものだから。星は自分たちにっては、そういうものなんです。折り紙じゃない。直子に、最初にひとつだけもらって、『わあっ』て思った気持ちを、そのままみなさんにお伝えしたいんです」

星を折ることは、
私が、自分の手でできる「何か」

星を折るのに失敗はほとんどしない、という森住さん。自ら紙を手で切り、折っていく作業の中で、若干の乱れがあったとしても、それもするすると修正しながら、星を折り上げていきます。

「星って……やっぱり『希望』じゃないですか。空を見上げて星を見るとき、私たちは遥か遠くから届いてくる光を見ている。やっぱりそこに希望や夢や何か力強いものを感じて受け取りますよね。すごくポジティブなもの。クリスマスには、イエス様が生まれた事を知らせる大きな星が輝いて、それがクリスマスに星を飾るという意味になったんですよね。だから私も、折るときは『これを買ってくれる人に、何かひとつ、ちょっとでもいいことがありますように』ってそんな気持ちを込めて折っています。だから1日につくるのも数を決めて、無理はしすぎないようにしているんです」

ツヴィリンゲの星の売り上げの一部は、「フレーベルの星基金」として保管され、2016年には福島と都内の養護施設に寄付することが決まっています。

「星は、私にとって、『何かできること』かな。自分の力で、それをつくって、買ってもらって、その一部が誰かのためになる、そういうものなんです」

クリスマスには、ツリーに。
赤ちゃんや子どもたちの成長を見守る部屋の片隅に。
ふと見上げる窓辺に。
大切なひとを迎える扉のそばに。
フレーベルの星をかざると、空間がふわりと優しく、なる。
その不思議な力は、つくり手の静かな祈りから運ばれてきたものでした。

ふたごの作家Zwillingeの紙仕事/後半へ続く

2,800円(税別)
ツヴィリンゲの代表作、トレーシングペーパーで折った「フレーベルの星」。くらすことのオリジナルカラーひとつめは、赤とゴールドをメインにホワイトの星がきらめくセット。家族が集う暖かく幸せな夜を思わせるゴージャスな色合いの組み合わせです。ひとつひとつの星に紐がついているので、クリスマスツリーに飾るのにもぴったりです。ボックスに入っているので、大切な人に思いを込めたプレゼントにしても。
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3,000円(税別)
冬の日に窓から見上げる夜空の星を思わせる、ネイビーとシルバー、ホワイトが揃った「フレーベルの星」ひとつづり10個セット。ツリーに飾ると、少し大人っぽいクリスマスの装飾になります。窓辺に吊るすと雪の結晶のようにも見えて幻想的です。 素敵なボックスと、オリジナルの包装紙に包んでのお届けになりますので、ギフトにもおすすめです。
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3,000円(税別)
アイボリーとオフホワイトのナチュラルカラーのつづりの先に、ピンクのお花がぱっと咲いたような、愛らしい10個ひとつづりセット。大きな星と小さな星が交互に並んでいるので、深みが感じられます。寝室に吊るしておくと、目覚めと同時に柔らかな色合いが光に映り、心地よい気分で一日が始められそう。女の子の部屋や、赤ちゃんのゆりかごのそばに飾ってあげるのもいいですね。
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3,000円(税別)
パステルカラーの淡い色合いがとても可愛いらしいセット。グリーンの植物と一緒に飾れば、お部屋が春のひだまりのようなあたたかな雰囲気につつまれますよ。やわらかな色合いは主張しすぎず、季節を選ばずお部屋を彩ってくれそうです。素敵なボックスと、オリジナルの包装紙に包んでのお届けになりますので、ギフトにもおすすめです。
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3,000円(税別)
春の季節、小ぶりでかわいらしい花を咲かせる忘れな草。そんな忘れな草をイメージしたのがこちら。花びらの青やうす紫、花弁の喉元の黄色は、ひっそりとけなげにたたずむ忘れな草の姿を連想させます。ちなみに忘れな草の花言葉は「真実の愛」「私を忘れないで」。素敵なボックスとオリジナルの包装紙に包んでのお届けになりますので、ギフトにもおすすめです。
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3,000円(税別)
名前の通り、たんぽぽをイメージした、元気あふれる10個ひとつづりのセット。窓から入る自然な光のなか、ゆらゆら揺れる星たちが、部屋を明るく、あたたかく彩ってくれそう。男の子のお部屋の飾りとしてもおすすめです。素敵なボックスとオリジナルの包装紙に包んでのお届けになります。
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