古道具“recit” 古いものの、ある暮らし
〈第十四回〉
西荻窪の外れに、ひっそりと佇む古道具屋、“recit”(レシ)。
様々な国や場所、時代からやってきた古いものたち。
ひとつひとつの物には、それぞれの物語があって、
またここから新たな物語を刻み始めるため
静かにその時を待っている。
そんな“recit” の店主 川上美保子さんにセレクトいただいたものたちと、
川上さんが写真と言葉で綴る、読み物「この場所から見える風景」。
"くらすこと"の店にて、月に一度、ご紹介していきます。
“recit”店主 川上美保子さんの連載
『この場所から見える、風景』
古いものを扱う仕事をしているけれど、古いものがすきなのかというと少し悩む。
古いものも新しいものも自然物も人の手で作られたものも境なく、きれいだと思う姿形があり質感があり、いつもそれを探しているように思う。
だから新しいものの中にもきれいだと思うものは当然ある。
比較的新しい素材でいうと、ステンレス。
厨房で使われる業務用などは形がシンプルで美しいし、清潔なのがいい。
ステンレスのシンクやポットをみがくのがすきで、さっぱり洗い上げるのは楽しい。
新しいステンレスの無機質な光は苦手だけれど、大事に使われ手入れされていくうちにまとう空気にやわらかさが出てくる。
まだ店を開く前、よく行っていた古いものを扱う店があった。
夏にはいつも麦茶をだしてくれて、それを注ぐジャグはとてもきれいな形をしていた。
ステンレスだし、そんなに古いものではないだろうと思いつつ、どういうものなのか、ずっと訊きそびれていた。
或る日、話の区切りのいいところで尋ねてみると、北欧のデザイナーのもので…という意外な答えが返ってきた。伊万里だの信楽だの日本のものを中心に扱っている店だったので、ジャグが北欧というのは思いもしなかった。
デザイナーはアルネ・ヤコブセン。1960年代の終わりに発表されたステンレスのシリーズのひとつだった。
その後探してみたけれど、写真で見ても店頭で見てもそれはかちんと冷たく感じた。
やはり道具は使われている姿が美しい。
腕からポットまで一連の流れがあり、すっと直線的で、じっと見つめてしまう程、きれいなのだった。
東京都杉並区西荻北 5-26-17 Tel:03-3397-6136
営業時間:11:30 〜 19:30 火曜定休














