Bionのクリスマスボックス 2019

海のそばの、日々音があふれる工房で作られる
日常のお菓子

Bionという名前は、漢字で「日音」と書く。門司港の海に近いお店の工房で仕込みをしていると、船の汽笛の音や鳥の鳴き声がよく聴こえてくるそうだ。そんな中、店主の寺井きよみさんは、フランスの地方菓子をメインに、日々の糧となるような素朴なお菓子を焼いている。

店内にはお菓子のショーケースと、カフェスペース。
棚にはシロップ漬けの果物の瓶や、ドライハーブが並んでいる。

きよみさんが、お菓子づくりの楽しさに出会ったのは中学生のとき。

「オーブンレンジについていたレシピ本の方の教室に行って、そこでアップルパイを作ったんです。冷凍パイシートだったんですけど、それでもすごく感動して、うれしくて。こんなに楽しいことってあるのかなっていうくらい。」

それが原体験となり、家でお菓子を作ったり、フードコーディネーターの学校やお菓子教室で勉強を重ねた後、フランスに本校がある料理学校のル・コルドン・ブルーに進学。

「製菓の学校に行くと、さらにパイ生地から作るんですけど、普通の小麦粉がわーってふくらむじゃないですか。それが面白くて。お菓子は、そのままでは食べれないものが食べられるもの、素晴らしいものになるところが楽しいですね。魔法のように別のものになる。そこに惹かれて、どんどんのめり込んでいきました。ないものができる、というのが好きなんでしょうね。」

のめり込んでいった、という言葉の通り、お菓子の歴史を調べたり野菜ソムリエの資格を取ったり、自ら畑を耕したりと、お菓子や素材について気になることはまず自らやってみる。きよみさんは、そんな探究心と行動力の持ち主だった。

あるときフランスを訪れたきよみさんは、美しくショーケースに並ぶケーキよりも、パン屋さんの一角に置かれている素朴な家庭菓子に惹かれる。背伸びしない、誰でも手に取れる、日常のお菓子。それに、フランスでは料理に砂糖を使わない分食後のデザートに寛容で、甘いものが受け入れられている文化も好きなのだと教えてくれた。だから、Bionのお菓子はサブレやクグロフなど、フランスにルーツのある素朴な焼き菓子を中心に作られている。

そこで過ごす人がいて、100になる
Bionがカフェをする理由

Bionをオープンする前は、古いビルの中に雑貨屋さんがあって、そこでお菓子を販売していた。そのときに、自分のやりたいことがわかったという。

「販売だけではなく、テーブルがある空間が作りたいんだなということをつくづく思って、今のカフェのかたちになりました。カフェはお客様がその場所で過ごす時間を含めて、100になる。お客様がテーブルを囲んでる姿が好きで、楽しそうにされているのを裏からちらっと見て、いいなあと思うんです。」

もともとひとりで過ごす時間も好きで、喫茶店やカフェに行くことが楽しみというきよみさん。

「自分自身もカフェで過ごすことで疲れが取れたり、リセットできたりしているので、特に子どもを産んだ前後にはそれをすごく感じて。ちょっとひとりになってお茶を飲んだりとか、本を読んだり、手帳を書いたりする時間はとても貴重だなあと思います。」

店を作ることが目的というより、お客様にそんな時間を提供できるようになりたい。その想いに、お菓子を組み合わせて、カフェをオープンさせた。

長年の夢だったクッキー缶

店舗のほかに、月に一度ネットで販売するクッキー缶は全国から注文が舞い込む人気ぶり。何種類ものお菓子が、隙間なく美しく詰められている缶を開ける瞬間は、思わず顔がほころぶ。

「クッキー缶は、ずっと作りたいと思っていて去年ようやく形になりました。作るのは大変ですけど、それがいろんな方の手に渡って食べてくださるときの物語を想像するとうれしくて。買ってくれた方がとてもよろこんでくれて、あたたかいメッセージがたくさん届くんです。」

お菓子を焼くのは、きよみさん一人。お菓子作りの準備や梱包、カフェの営業をスタッフが、パッケージのデザインや経理を夫の啓祐さんが担当し、きよみさんは集中してお菓子を作れるようになったという。

お菓子が好きで、探求して、その仕事を心待ちにしている人たちがいて、きよみさん自身もその中に喜びを見出している。天職とは、こういうことなのだろうと思った。「出来たときにいまだに毎回、自分でも感動するんです」、と楽しそうに教えてくれた。

クッキー缶にも入っている塩バターサブレは、Bionが開店した当初からある看板メニュー。門司港は海の近くなので、塩を使ったものをつくりたいと思って考えたそう。発酵バターの芳醇な香りたっぷりで、塩がアクセントになって繊細な甘みを引き立たせる。少しずつかじりながら、ついついお茶をお代わりしたくなるおいしさ。この時期だけクリスマスらしい型を使って焼くオーナメントのクッキーには、紐を通せるように穴が開けられている。

「子どもが小さいときは、紐を長くして首にかけたまま遊ばせたりして。すごくかわいいんですよ。すぐ食べるんですけどね。(笑)ぐるってまわって、戻ってきたらもうなくなっています。(笑)シンプルなツリーに飾ってもかわいいです。」

「クリスマスみたいなイベントには、わりとわくわくするタイプです。ツリーを出して飾ったり、いつもより少しだけ特別なお菓子や料理を作ります。外で過ごすというよりは、家族で団欒する過ごし方が好きですね。クリスマスが近づくと、クグロフとかシュトレンとか、街に並んでいるお菓子やパンがクリスマスムードになるのでそれを見るのも楽しいです。お店では12月になると、オーナメントクッキーにアイシングをしたりもします。」

「まだ出会っていないお菓子があるんじゃないかと思ったら、いろんなところに行きたくなるんです。まだ食べていないものが食べたいですね。お菓子に恋しているというか、自分が作るものにも毎回感動していて、いまだにお菓子にときめいています。」

作りたいお菓子が多すぎて、追いつかない!と笑うきよみさんのお菓子への想いは、たしかに食べる人に伝わって、その喜びがまた返ってきて、次のお菓子に向かうエネルギーになる。お菓子への尽きない探究心の源は、この想いの循環にあるのかもしれない。

Bion クリスマスボックス A

畑から刈り取ったばかりの
自然の豊かさを感じるハーブのブーケ

今回、シュトレンやクッキーと一緒にお届けする贈りものをきよみさんに考えてもらった。クッキー缶と一緒にお届けするボックスに選んだひとつめのギフトは、大分県にあるハーブ園「おおがファーム」のハーブ。数種類のハーブをぜいたくに束ねた大胆なブーケで、フレッシュないい香りが漂ってくる。

「おおがファームさんとの出会いは、マルシェに誘っていただいたのがきっかけです。ハーブ園だけではなくローズガーデンもあって、テーマパークのように1日楽しめる場所。天井ほどの高さに自生しているハーブを切って送ってくれるので、いきいきとしているんです。お店が10周年のときに、ハーブの束を作ってもらったことがあるんですが、それがすごくよかったので、クリスマスに自分へのごほうびにいいなあと思って。大神ファームさんの自然の豊かさを、そのままお届けできたら。並べて置いているだけでも癒されます。」

「ハーブは、ローズマリーとか、タイムはお菓子に使いますが、インテリアとして飾るのも好きで、前のお店では、天井からたくさん吊り下げていました。今置いているハーブは、移転のときに送っていただいたもの。ドライになって色が変わるんですけど、それはそれですごくいい。森や畑が好きだけど、ここではできないので、緑に触れたいという気持ちがあるのかもしれません。」

四季折々の植物を慈しむ
椿野恵里子さんのポストカード

次に選んでいただいたのは、フォトエッセイスト 椿野恵里子さんのポストカードセット。

「椿野さんの、写真のカレンダーが好きだったんです。それで、椿野さんが本を出版されたときに本を仕入れてお店に置かせていただいて、お茶のワークショップをしていただきました。そのときからお付き合いが始まって、カレンダーとポストカードも販売させていただいています。今回は赤い実のポストカードを作られていたので、クリスマスらしいなと思って選びました。」

クッキー缶をそっと開けて、今日の自分へのご褒美をお皿に載せる。部屋に漂うハーブの香りを楽しみながら、大切な人にクリスマスカードを書く。そんな、心穏やかに過ごす時間が想像できるセットです。

Bion クリスマスボックス B

ボックスBは、2010年のオープン当初から作っているというシュトレンのセット。子どもも食べやすいようにと、スパイスは使わずに焼き上げているBionのシュトレン。今回ご用意いただいたのはショコラ味で、レーズン、いちぢく、プルーン、くるみ、アーモンド、チョコレートが入っている。

シュトレンショコラと相性抜群な、
深煎りのコーヒーとカップ&ソーサー

一緒にお届けするのは、福岡を拠点に活動する店舗を持たない珈琲屋 cielgris coffeeのドリップパックと、イイホシユミコさんのくらすこと別注カラーのカップ&ソーサー。

「cielgris coffeeさんとは、イベントで出会って、展示会でコーヒーを出店される際にお菓子を頼んでいただいたのがきっかけです。cielgrisさんのコーヒーは酸味が少なくて香ばしく、冷めてもおいしい。スタッフもみんな好きなんです。お菓子とコーヒーをセットで販売したこともあります。そのときとても好評だったので、今回はBionのシュトレンと、コーヒーカップと一緒にお届けできたらいいなと思って」

コーヒーは、曇空を思わす様なスモーキーな苦味と柔らかな甘味とコクを感じる「曇天ブレンド」と、華やかな香りと仄かな甘さ、霜の降りた朝の様な雰囲気のキリッとした後味が特徴の「霜天ブレンド」の2種類をご用意いただいた。

ソーサーは、お皿としても使えるのでシュトレンを載せるのにもぴったり。
きよみさんの好みでもある深めのコーヒーは、ショコラシュトレンとの相性も抜群。少しずつ切り分けながら、しっとりと馴染んでいく過程をコーヒーと一緒に楽しむセットです。

Bion(日音)
九州門司港にて、国産小麦、全粒粉、発酵バター、有機オートミールや、農家さん、ハーブ園から届く果物やハーブ、日本の美味しい素材を香ばしく焼きあげた自然な甘さの焼き菓子を作る。
〒801-0841 福岡県北九州市門司区西海岸1-4-24 101 Tel:093-331-3338
12:00〜17:00 / 営業日 木・金・土 第2、第3日曜
instagram.com/bion.kiyomi

おおがファーム
やわらかな日差しと海からの心地よい風、訪れる季節ごとに新たなハーブやバラの香りを楽しめるローズガーデンのあるハーブ園。別府湾を一望する海岸線と美しい森につつまれ、自然と調和しながら豊かに暮らすオーガニックライフを提案する。
〒879-1504 大分県速見郡日出町大字大神6025-1 Tel 0977-73-0012
9:00〜17:00(レストランとショップは10:00〜)
火曜休(祝日の場合は営業、4月~5月の間は無休)
ogafarm.com

椿野恵里子
お花の写真家。1974年3月生まれ。20歳の頃より独学で写真を撮り始める。自然の光を大切にして、季節の花や果実をフィルムカメラで撮影をしている。2000年よりカレンダーの制作を始めて21周年を迎える。
現在は夫である陶芸家/安部太一と息子6歳と共に自然豊かな松江に暮らし、カレンダーの制作を中心に不定期で草花の会や植物を使ったリースなどの制作も行っている。
huukeinoato.jp

cielgris coffee
店舗は持たずイベント出店や花屋さんの2階を間借りして月一のペースで喫茶をしているとても小さな珈琲屋。cielgrisはフランス語で曇天という意味で、”DONTEN”という響きとどんよりとした灰色の空の雰囲気が好きだから付けた名前。珈琲豆は福岡で30年続く職人さんの手によって丁寧にハンドピックから焙煎までされたものを使ってブレンドしています。
instagram.com/cielgris_coffee

photo:Haruki Anami