
この本に初めて出会ったのは、確か大学生のとき。実家近くの図書館を物色していたときに、ふと美術コーナーで見つけた“江國香織“さんの名前。なぜ美術コーナーに彼女の小説が?と何気ない疑問から手にとったことがきっかけだったのですが、その後すっかり魅了され、再読回数は一番多いのでは?と思うほど。
絵画や画家に対して深く教養をもたれる江國さんが、「嫉妬しつつ憧れる」という古今東西27人の画家の名画をとりあげたエッセイ集なのですが、これが本当にすばらしいのです。まず、単行本の装丁。ハードカバーがとても美しい。表紙は、児島虎次郎さんの「睡れる幼きモデル」なのですが、5cmにも満たないちいさな絵が、大切に額縁に入れられ、美術館の真っ白な壁に飾られているような雰囲気を纏っているのです。
本の構成もおもしろく、まず江國さんが絵から受けた印象や想いが、その画家をとりまく時代背景などとともに綴られており、“一体どんな絵なのだろうか…“とわくわく期待と想像を膨らませて、ページをめくるとその絵がある、という作り。その画家に対して抱いていた想像通りの絵が現れることもあれば、ドラクロワやルドンがこんなキュートな絵も描いていたなんて…!と驚くような画まで出てきて、贅沢にも江國さんにガイドをしてもらいながら美術館を巡っているような体験ができる至福のエッセイ集なのです。
両手では数えられないほど、繰り返し読んだ本ですが、読むときの自分の状態によって、感じ方や、好きだな素敵だな、と思う画が異なるのも楽しさのひとつ。昨日の夜に再読し終えたばかりの今回のお気に入りは、マネの『海にとび込むイザベル』。
装丁も美しく、画も大きく見れるのでぜひ白泉社の単行本で読んでいただきたいのですが廃盤のよう。集英社から文庫本も発刊されています。みなさんのまちでも、図書館で単行本が借りられるかもしません。ぜひ探してみてくださいね。
本:『日のあたる白い壁』
著者:江國 香織 出版社:白泉社