取材・文 松本あかね
写真 米谷享

『FLW』デザイナー 大橋利枝子さんに聞く
春のリネン、ブルーを中心に
新しいカラーコーディネート

FLWの春の展示会できれいなブルーに目を見張りました。
凛としたすみれ、霞を帯びた空、朝早い海を思わせるブルーのバリエーション。
「今季のテーマは色。ブルーを中心に5つの新色を作りました」とデザイナーの大橋利枝子さん。

大橋さん自身は普段ダークトーンを着ることが多いそうですが、今回の服作りを通してたくさんの発見があったといいます。例えば定番色のネイビーと新色を組み合わせると、いつものネイビーが新鮮に感じられる。それは色と色とを組み合わせることで、その色の特徴や個性が際立ってくるから。
「トップスやボトムスを新しい色のものにしてコーディネートすれば、お手持ちの服も新しい気持ちで着られますよ」

今回はFLWの春の新色を使ったカラーコーディネートをご紹介します。
新しい色を取り入れて、大切なワードローブを生き生きと着こなす。そのヒントを見つけてみてください。

『FLW』を自分らしく着こなすコツ

『FLW』のアイテムは全てワンサイズ展開。9〜11号サイズの方が着られるよう、一点一点デザインが工夫されています。多くはゆったりした作り。だから、折ったり、まくったり、腰を落として履いたり。そんな微調整で、自分のサイズ感を見つけることが、素敵に着こなすコツといえそうです。
モデルを務めてくださる大橋さんの身長は155㎝、9号サイズになります。

大橋利枝子(おおはしりえこ)

スタイリスト、『FLW』デザイナー
雑誌『オリーブ』を経て、スタイリストとしてさまざまな方面で活躍。2012年より『FLW』のデザインを手がける。『fog linen work』のラインとの違いは、大橋さん自身の着たい服、スタイルのある女性のイメージを追求したシンプルでシックなデザイン。近著のソーイングブック『FLWのソーイングとスタイル リネンでつくる着ごこちのいいおとな服』(文化出版局)が好評。
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「『FLW』の服は普段着としても、お出かけ着としても着られる服を意識してデザインしています。でも実はそこはあまり、分けなくてもいいと思うんですよね。今の自分にしっくりくる一枚であれば、家の中でも、表参道でも(笑)、心地よく自信をもって着られると思います。皆さんにとってそんな一枚が見つかれば嬉しいです」

ハナ ノーカラーコート

パープルはブルーのさし色

明るいブルーのコートと、菫色のワンピースの組み合わせ。
「濃いめのパープルは、一見派手に見えるかもしれませんが、ブルー系と合わせて着ると肌馴染みがよくなります。顔映りがいいといってもいいかな?」
ターコイズは万能カラー。落ち着いたトーンで、どんな色とも合わせやすくて気に入っているそう。ブルーとパープルがしっくりくるのは、パープルがネイビーの親戚にあたる色だから。
「パープルはネイビーの延長線にある色。ネイビーやブルー系のさし色としてイメージしてみて」。

パープルを推す理由はもう一つ。
「パープルが似合う方って多いんですよ。ブルーが入っていますから」
大橋さんが紫の可能性に気がついたのは、趣味で着物を着るようになってから。
「着物には良い紫色がたくさんあります」
例えば茄子紺、竜胆色、江戸紫など。そんな伝統色との出会いが、今回のカラーバリエーションにもつながったというわけです。

ハナ ノーカラーコート(ターコイズ) + メイ ワンピース(ヴィオリーヌ)

ブラウジングで着丈を調節

「このコートは七分袖だけれど、私が着ると普通丈ですね笑。袖口は広くしてあるので、折り返さずにそのまま着ます」。
ワンピースの着丈も身長155センチの大橋さんにはちょっと長め。そこで腰のリボンをきゅっと引き絞って、ウエストマークを高めの位置にもってきます。
「目安はコートの裾からちょっとだけワンピースの裾が覗くくらい。鏡を見ながら、好みの丈の長さに調節してみてください」

パープルには黒よりグレー

裾のブルーとパープルのカラーバランスを整えたら、次はタイツ。こちらはパープルと相性の良いグレーがおすすめ。黒とだとコントラストがきつくなりすぎてしまいます。

ルナ ショップコート

ブルーが醸す雰囲気をまとう

ブルーヴィオレは伝統色のなす紺色をイメージした色。
「オリジナルでいろんな色を作ることができるのはFLWの強み。生地はヨーロッパのリトアニアで作っていますが、落ち着いたトーン、少しグレーがかったようなテイストは、ヨーロッパの感性も関係しているかもしれません」

なす紺色のコート、薄いすみれ色のシャツ、ブルーグレーのパンツ。どの色にもブルーが含まれている親戚同士だから、コーディネートに一体感が。定番色のコーディネートとは違った“雰囲気”をまとっているかのよう。
「昔、パリの街で見かけた清掃員の作業着がこんな色で、なんておしゃれ、って思いました。ショップコートにこの色を選んだのも、そのせいかもしれません」

ボタンはしないで、ラフにふわっと着るのがおすすめ。薄い色合いのインナーを見せることで抜け感も生まれます。
「薄いすみれ色のシャツは、水色の延長ととらえてもらうといいかな。いきなりパープルには抵抗があるようでしたら、水色のような気持ちで合わせてみてください」

ルナ ショップコート(ブルーヴィオレ) + ルリ シャツ(ラヴァンド) + マミ テーパードパンツ(ブルーグレー)

“抜け感”を出してすっきり着るには

「Mサイズだとジャストサイズ、Lサイズだと肩を落として少しダボっと着る感覚です」
大橋さんはMサイズを着用しています。
「すっきり見せるポイントは袖をまくって、肌を見せること。ちょっと肌を見せると、雑誌の言葉でよく出てくる“抜け感”や“こなれ感”が出てきます。スタイリストの技のひとつですね」

“男前”の後ろ姿にこだわる

すっきり着こなすためのこだわりは、バックスタイルにもあります。
「デザインとしてベルトが入っていますが、これには“あしなが効果”もあってスタイルを良く見せてくれます。小柄な方の場合、細いパンツと合わせた方がバランスが良くなります」
自分では見えないからこそ気遣いたい。後ろ姿もこれできりっと。

レイ トップ

Blue meets Blue

このコーディネートのポイントは色の組み合わせ。
「ブルーとブルーの組み合わせは普通避けると思いますが、今回はあえて」。
明るいネイビー(ブルージターヌ)と大橋さんが「万能カラー」と呼ぶ明るいブルー(ターコイズ)はいずれも新色。
「今回、色の組み合わせを考えるのが楽しくて。カタログの撮影のときには、これとこれいいな、あれとこれもとカラーコーディネートが何パターンも浮かびました」。
こちらもその一つ。ブルーとブルーの出会いが新鮮なコーディネートです。

レイ トップ(ブルージターヌ) + ユイ スカート(ターコイズ) 

甘すぎないふんわり袖の作り方

「ふんわりした袖が流行っていますが、ちょっとかわいすぎるような気がしていました。でも袖口を一回折ってみたら、私の作りたかったちょうちん袖の形に」
アームホールが大きくボリュームがあるけれど、程よく下に落ちる甘すぎないシルエット。
「デザインや着こなしは、こういう偶然から生まれることも多いです」

腰履きでイン、今どきのお作法

トップスをボトムにインすることに抵抗を感じる人が多いみたい、と気になる口調の大橋さん。
「ぜひローウエストで腰履きを試してみて。ウエストマークを作ることで、ふんわりしたコーディネートが引き締まります」
女の子っぽいアイテムを大人っぽく着こなすためのアドバイスです。

ケイ ロングカーディガン

この春おすすめのブルーグレー

新色の濃いブルーとブルーグレーのシックな色合わせ。ビッグシルエットのトレンドを意識した、どちらも丈の長いワンピースとカーディガンの重ね着です。
「ブルーグレーは新色ではありませんが、この春おすすめしたい色。丈が長いので大人っぽく見えますが、例えばデニムと合わせてカジュアルにも」

ブルーグレーのようなニュアンスを含む色合いは、合わせるカラーによって表情が変わってきます。
「ブルーと合わせると青みが、パープルと合わせると赤みが強調されるのを感じてもらえるかな。単色で着たときより、色の特徴や個性が出てくるのかもしれません」
ブルーグレーの中の青の要素が、海を思わせる濃いブルーと響き合う。そんな色の調和を感じられるコーディネートです。

ケイ ロングカーディガン(ブルーグレー) + ナミ ワンピース(アガート) + マミ テーパードパンツ(ブルーグレー) 

ブルーグレーの色合わせ

ブルーグレーはどんな色とも合うといっていいと思う、と大橋さん。
「ブルーが入っているからチャコールグレーより明るめ。ただ暗い色と合わせると同調して暗く見えてしまうので、明るい色と合わせるようにするといいですよ」
黒は避けて、例えば白なども良いそうです。

足元はツートーンの色重ね

カーディガンと同色、同素材のリネンジャージーのテーパードパンツは、生地特有の落ち感がポイント。
「レギンスとしてワンピースやチュニックに合わせてみてください」
アガード(濃いブルー)を挟んで揺れる、足元の色の重なりがきれいです。

『FLWのソーイングとスタイル リネンでつくる着ごこちのいいおとな服』
(文化出版局)

Aラインのワンピース、リボンブラウス、サルエルパンツ、カシュクールコートなど、リネンの質感を生かし、シルエットにこだわったとっておきの24着を紹介。高橋ヨーコさん撮影のモデルカットもファッションページのようで見どころ。実物大パターン付き。

文化出版局:『FLWのソーイングとスタイル』