喜びの日も悲しみの日も、私らしく装いたい
—— shuóのお数珠とアクセサリーが生まれたわけ

私たちの一生に喜びと涙はつきもの。
「大切な日に自分らしく装って向き合いたい」
その思いから、冠婚葬祭用の小物を扱う
「shuó(シュオ)」は始まりました。

喜びの席だけでなく、悲しみの席にも寄り添ってくれるジュエリーと小物は、
どんなふうに生まれたのでしょうか。

写真 吉森慎之介
構成・文 松本あかね

shuó」はディレクターの吉田直子さん、デザイナーの星芽生さんが
2011年に2人で始めたブランドです。

恵比寿駅から坂を登った先にあるお店のショーケースには、パールをはじめ、オニキス、水晶、ダイヤモンドなど、お祝いや喪の席にふさわしいアクセサリーが、しっとりとした情感をまとって並んでいます。

そして淡い色の石が連なるお数珠のことを
「ジュエリーのように美しい」と言ったら驚かれるでしょうか。

すっきりとモダンな和の色を取り合わせた数珠袋と服紗のペアは、
目に留めるだけで心が澄んでくるようです。

明らかに特別なときのもの、とわかる品揃えに
すっと気持ちが引き締まるのと同時に、ほっとする部分を感じていることも不思議です。

コムデギャルソンと
サンゴのお数珠

—— 2011年にスタートを切ったshuóですが、どんなきっかけで始めることになったのでしょうか?

吉田 私も星も人との出会いが多い仕事だったせいか、華やかな席もなのですが、悲しみの席に行く機会も、同世代の30代の友人たちより多かったと思います。
当時は今よりも洋服が大好きで、服も小物も買ってはいるのに、いざパーティやお葬式となると“いわゆる”というスタイルになってしまって。

 そのときだけね。

吉田 普段の自分とは違う、別人みたいな衣装で大切な時間を過ごすというのはちょっと違う、という違和感をずっと感じていました。でも、お葬式に行くと時々とても素敵な人がいるんです。コムデギャルソンの黒い服に、赤珊瑚の数珠を使っている方とか。

 わかる!

吉田 そういう大人の方を見るにつけ、悲しい席も、全力で装うことで大切な人を見送ることができるんだ、ということをリアルに実感して。そういう大人になりたいと思っていたのですが、でも全然、自分たちはそんなふうじゃないという話をよくしていたんです。
「いつもあわてて、なんの準備もなく、借りてきたような服でお葬式に出ているよね」と。

それで、お数珠やパールのネックレスを、いつものモノ選びの延長で選べたらいいね、という話をしたのがshuóがスタートした時のいちばんの思い出。

私たちも30代で、それまでは素敵なものをという一心で仕事をしてきたけれど、誰かが必要としているもの、人の役に立てるようなもの作りをしたいね、と。そこで声を掛け合ってスタートを切ったのが10年前のことでした。

京都で教わった
お数珠の自由な使い方

吉田 ジュエリーデザイナーが数珠を作ったら素敵だろうと思っていたのですが、最初は「本当に作っていいのかな?」という気持ちもありました。

 ありましたね。まず、こうでなきゃいけないんじゃないかと考えてしまうことがすごく多くて。
だからまず知識が必要だし、実際に触れてみたい。そう思って京都へ行きました。

吉田 京都にお数珠を扱うお店が集まっている通りがあると、親戚が京都でお坊さんをやっているという友人が教えてくれて、二人でそこへ行ったんです。

プロのお坊さんたちが使うお数珠を扱う所で、そこでいろいろなお数珠に触れました。きれいなターコイズの石を使ったものとか、以前見た赤珊瑚のお数珠も。赤や青の鮮やかなお数珠がたくさんあって、
「こんなにきれいな数珠、作っていいんだね」
「数珠ってジュエリーみたいに美しいね」
と盛り上がりました。

 本式のものだけでなく、自分で作る数珠キットがあったり、ちっちゃな子ども用とか、指輪につける数珠みたいなものもあったりとか。

吉田 そうそう、ブレスレットの形とか、あとは「お寺めぐりをするときにお持ちください」と書かれて店頭に並んでいたり。

東京にいるとわからなかったけれど、京都へ行って美しい数珠に触れて、自分たちで組んだものを使って葬儀や法事に出ていいんだということをそこでプロの方達に教わって、じゃあ私たちが作っても大丈夫だね、と。

最初に作ったのは
“軽やかな”お数珠

—— 最初に作ったのはどんなお数珠でしたか?

 この数珠がそうですね。

吉田 数珠を作ろうと二人で考えていたとき、周りに「なんで作るの?」「なんで数珠なの?」と驚かれました。それで怖くない数珠、というと変かもしれませんが、積木とか木のおもちゃみたいな軽やかさがあるものを最初に作ってみようと。なんていうんでしょう? かわいらしい、おもちゃみたいな数珠を作ったんです。数珠を持つとか、買うということが、もっと親しい行為になるように。

 この数珠がやっぱり、なんだろう、思い入れがありますね。

お数珠が
心の支えになる日

吉田 これまでいろんな方にshuóの数珠を買っていただいたんですけど、喪主になられた方がこの数珠を手首にかけている姿を見て、「うちで最初に作った数珠がこんなふうに使っていただけているんだな」って、じーんときたこともありました。

—— その方にとって心の支えになっていたのかもしれませんね。お二人にとって、持っていてよかったという場面はありますか?

吉田 私自身、持っていてよかったなと思うのは、数珠と服紗と数珠袋の3点セット。クローゼットに置いておくと、これが自信というか安心感になっている。
妹も同じことを言っていました。法事のときに
「これをセットにしておいたから、安心して今日は来れたよ」と。

 私は母が4年前に他界したのですが、それから毎朝、お仏壇に手を合わせています。お葬式だけではなく、その後の人生の中に、今までいた大切な人を思う時間があったらいいな、と。
自分の魂じゃないですけど、お数珠に気持ちが入っていくんですよ。そういうふうにずっと寄り添えるものとして使ってもらえたら嬉しいな。

—— 考えてみたら、式があって終わりではないですよね。その後の時間も続くということ。

 生活の中に一つあると安心というか、安らげる。
みなさんが経験することだと思うし、そのことを暗く考えないためにも、明るい色の数珠を買ってくださる方も。

吉田 私の妹も、黄色の房の数珠を使っているのですが、
それを取り出したとき、黒の礼服に映えてきれいでした。
黄色といっても派手ではなく、気持ちの整うような落ち着いた色味のものを選んでいるので。
人によって使い方はそれぞれですが、いろんなシーンの支えになればいいなと思っています。

—— さっと取り出したお数珠がとてもきれいに見えたのですね。

吉田 私自身、そういうシーンを見かけたことがこの仕事を始めたきっかけにもなったので。

 そうだね。

吉田 私たちが作ったものを持ってくれている人が、そんなふうに誰かの目に留まると嬉しいなと思います。

shuóのパールのネックレス、
アップデートサービス

—— あこや貝のパールのネックレスは1本持っておきたいという方も多いと思うのですが。

吉田 これまでにいろいろ見てきたけれど、shuóのにします、と言ってくださる方は、価格的にも品質的にもバランスがいいね、と。やっぱりパールというもの自体が素敵で上品。その上でshuóのネックレスの何が違うかといえば、星が金具の職人さんと何度も話し合って作った留め金ですね。

 1年かかりましたね。

吉田 シンプルでマットな留め金がいちばん、shuóらしい。

—— そういえば、私が祖母からもらったものは留め金が花というか雪の結晶みたいな形になっています。

吉田 だいたい、お母さま、おばあさまから贈られたというとそのタイプになりますよね。

—— たとえば普段使いしたいと思っても、そこだけが場違いに思えて、なんだか気が引けてしまうというのはあります。

吉田 私のもの、という感じがしないですよね。

 でもお手持ちのものを生かしたいと思うと。お母さま、おばあさまから受け継いだもの、大切じゃないですか。shuóでお預かりして留め金を換えることもできますし、ちなみに、私が今しているものも3球くらい抜いて短くしているのですが、自分の首の長さにバランスよく合わせるというオーダーもお受けしています。

吉田 もし眠っていたパールがあったら、蘇らせるお手伝いができれば嬉しいです。

おわり

吉田 直子 (左)
shuóディレクター。東京造形大学デザイン学科卒業。
ライター、『YAECA』のプレスとしても活動。
2011年より大学時代からの友人でジュエリーデザイナーの
星 芽生さんと『shuó』をスタート。
星 芽生 (右)
shuóデザイナー。多摩美術大学デザイン科卒業。
2004年にジュエリーのブランド『pommier』を設立。
ブライダルリング、ジュエリーコレクションを展開中。

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shuóの小物と合わせて、
くらすことのオケージョン・スタイル

「くらすこと」ではこの春初めて、
オリジナルのオケージョン・アイテムを作りました。
コンセプトは「わたしたちらしく」。

足首近くまですっぽり包んでくれる
マキシ丈のワンピース。
ノーカラーでドロップショルダーの、
肩が凝らないジャケット。
腰回りをカバーする
ワイドなテーパードパンツ。

1日着ても疲れない、自分らしくいられるデザインを
クラスカ発のアパレルブランド「HAU」デザイナー、
藁谷真生さんと一緒に追究しました。

ジャケットとパンツでセットアップに。
ワンピースの上にジャケットを羽織って。

パールやブラックオニキスなどのアクセサリーを
合わせれば、シックで上品にまとまります。

悲しみの席に参列する場面では、
自分が美しいと思うお数珠を手元に。

大切な日だからこそ、自分らしく装う。
そのときために準備しておきたい
オケージョンアイテムです。

Model:Shiho Kanzaki
Photo:Haruki Anami
HairMake:Rurika Amada(MINT MAISON

くらすことの
オケージョン・スタイル
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