取材・文 松本あかね
写真 米谷享

『FLW』デザイナー 大橋利枝子さんに聞く
重ねて楽しむ秋のリネン

「せっかくの秋だから、重ねて重ねて」
撮影中にこぼれた大橋さんの言葉をまとめると、こんなふうになるでしょうか。余裕のあるアームホール、ゆとりをもたせた腰回り、今季のちょっと大きめのサイズ感は「重ね着を楽しんで」というメッセージそのもの。

大橋さん曰く、今っぽい重ね着のポイントは、
「リネンとウール、シルクなど異素材を組み合わせること」。
たとえば、リネンにウール、ふんわりしたガーゼを重ねてみると、
「素材が変わるとやわらかさが変わる。するとこなれ感が出て素敵に見えます」。
新色のピーコック、レーズンにも注目。秋らしさを意識した色の重ね着も楽しみのひとつ。

「夏のリネンは半袖だったり薄地だったりしますが、秋は一年を通して着られるアイテムが多いです。一枚で幾通りもの着こなしができるので、ぜひお得に楽しんで」。
ニコッと微笑む大橋さんでした。

『FLW』を自分らしく着こなすコツ

『FLW』のアイテムは全てワンサイズ展開。9〜11号サイズの方が着られるよう、一点一点デザインが工夫されています。多くはゆったりした作り。だから、折ったり、まくったり、腰を落として履いたり。そんな微調整で、自分のサイズ感を見つけることが、素敵に着こなすコツといえそうです。
モデルを務めてくださる大橋さんの身長は155㎝、9号サイズになります。

大橋利枝子(おおはしりえこ)

スタイリスト、『FLW』デザイナー
雑誌『オリーブ』を経て、スタイリストとしてさまざまな方面で活躍。2012年より『FLW』のデザインを手がける。『fog linen work』のラインとの違いは、大橋さん自身の着たい服、スタイルのある女性のイメージを追求したシンプルでシックなデザイン。近著のソーイングブック『FLWのソーイングとスタイル リネンでつくる着ごこちのいいおとな服』(文化出版局)が好評。
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「『FLW』の服は普段着としても、お出かけ着としても着られる服を意識してデザインしています。でも実はそこはあまり、分けなくてもいいと思うんですよね。今の自分にしっくりくる一枚であれば、家の中でも、表参道でも(笑)、心地よく自信をもって着られると思います。皆さんにとってそんな一枚が見つかれば嬉しいです」

ユマ ロングシャツ

コートみたいに、ワンピースみたいに

「よく使える一枚になりました」
と大橋さんが太鼓判を押すロングシャツ。前を開けてコート風、ボタンを掛けてワンピース風、二つの着こなしを楽しめます。アイデアの素になったのは、おしゃれ上手として知られた脚本家・エッセイストの故向田邦子さんの作業着。
「以前に写真で見たのがスタンドカラーのスモックで、おそらくご自分でデザインされたもの。それにワークウェアの要素をプラスしてみました」。
秋らしい深みのあるグリーンは、
「一瞬派手に感じるかもしれないけれど、ネイビーやグレーと相性のいい色。意外と応用範囲が広いと思います」。

ユマ ロングシャツ(ピーコック) + ニット + リホ サルエルパンツ(ネイビー)

らくちんな着心地の秘密は背中のタック。ギャザーと違ってふくらまないのですっきり見えます。

スリットの入ったシャツデザイン。古着から着想した外付けのポッケはワーク時に便利。ペン、メジャー、スマホだってすっぽり。

ワンピース風に着るなら

ボタンを上まで掛けるとワンピーススタイルに。ピーコック×グレーの色の重ね着が新鮮です。

ユマ ロングシャツ(ピーコック) + ユイ スカート(アルトワーズ)

向田邦子さんのスモックと同じスタンドカラーに。共布の大きなくるみボタンがアクセント。

マオ カシュクール

ウエストマークで今年らしく

ボリューミーな襟元がフェミニンな、ストールカラーのカシュクールコート。いろんなアレンジが効いて、一枚で幾通りにも楽しめるお得アイテムがこちらです。大橋さんが見せてくれたのは、ワンピース風のこんな着こなし。
「ポイントはウエストマークを作ること。今、街でよく見かけるのはサッシュベルトですが、お手持ちのベルトを巻くだけで今年らしくなりますよ」。
アシェはグレーにカーキを混ぜたようなニュアンスのある人気色。ここでは新色ビスケットのスカートを合わせて。襟元にのぞかせたスカーフの水玉も効いています。

マオ カシュクール(アシェ) + 水玉スカーフ + ユイ スカート(ビスケット)

たっぷりしたストールカラーはピンで留めて。紺地に水玉のスカーフは「着物の半襟を意識しました」。

細めの革ベルトでウエストマーク。バックスタイルがきりっとマニッシュに。

ホワイトの異素材グラデーション

流行のホワイト・コーディネート。ウール、ガーゼなど異素材をミックスするとニュアンスが生まれます。アンティークリネンをイメージしたオフホワイトのコートとパンツに、同系色のニット、ストールを重ねて。

マオ カシュクール(アルバートル) + ニット + ストール + ミキ ワイドパンツ(アルバートル)

カホ ブラウス

ボウとハイネック、
2つのカラーを1枚で

ちょっとだけデザイン秘話。ある日、「ボウカラーのブラウスを作りたいな」。またある日には「ハイネックのブラウスってどうだろう」。かくしてふた通りの着方ができるレボリューションな一枚が生まれました。
ボウをたらした柔らかな雰囲気から、後ろ前に着るとエッジの効いた立ち襟のブラウスに。コーディネートではそれぞれワイドパンツ、サルエルパンツを合わせていますが、どちらもビッグシルエット。
「ウエストを折ったり裾をロールアップしたり、微調整しつつベストバランスをみつけてください」。
着物愛好家の大橋さんらしく、こんなひと言も。
「体型に合わせて着付けるのは着物から学んだこと。人によって着こなしが違ってくるというのはそういうことなのです」。

カホ ブラウス(アルバートル) + ミキ ワイドパンツ(ブラック) 

カホ ブラウス(レーズン) + リホ サルエルパンツ(アルトワーズ) 

ボウは軽くノットを作ってゆるっと結ぶ。一回結ぶだけ、ただたらすだけでもレディな雰囲気に。

印象的なバックスタイル。ボウは一回結びで。うなじがのぞくちょっとドキッとするデザイン。

メグ ワンピース

ニット+ワンピース、
デイリーな重ね着スタイル

Aラインで余裕のある身幅、太めのスリーブは重ね着を想定してのこと。これからの季節、下に厚めのニットを着てもシルエットが崩れません。
「ニットはお好きなもので。たとえばボーダー、それから同系色も合わせやすいと思います。アルトワーズは青みの加わったグレーなので、ネイビーの色馴染みがいいですね」。
ここではネイビーのニット、タイツを合わせています。着丈は身長155㎝の大橋さんで膝下くらい。背の高い方ならワイドパンツと合わせて、セットアップのように着るのもおすすめです。

メグ ワンピース(アルトワーズ) + ニット 

手首が隠れる長さのニットを合わせて。折り返しの付いた太めの七分袖です。

すっぽり被りやすいボートネック。アームホールも大きめだから、下にニットを着てももたつきません。

『FLWのソーイングとスタイル リネンでつくる着ごこちのいいおとな服』
(文化出版局)

Aラインのワンピース、リボンブラウス、サルエルパンツ、カシュクールコートなど、リネンの質感を生かし、シルエットにこだわったとっておきの24着を紹介。高橋ヨーコさん撮影のモデルカットもファッションページのようで見どころ。実物大パターン付き。

文化出版局:『FLWのソーイングとスタイル』