BUNONの世界ができるまで、
そしてこれから

「なぜBUNONの服は繊細で儚げなのに、こんなに力強さに溢れているのか」
一度目に触れ、袖を通したら誰でもきっとその唯一無二の存在感に驚いてしまうはず。

繊細な刺繍にずらっと均等に並んだボタン、美しく揃ったピンタック……BUNONの服の存在感が大きいのは、色やデザインの美しさだけではなく、手仕事によるディテールへのこだわりによるもの。その細部に宿った美が服自体にオーラを纏わせているからだろう。

その始まりから、作り手さんとのやり取りやデザインのヒントまで、もの作りについてお話をお聞きしました。

BUNON
インドの伝統を維持する高い技術とドキドキするような発想が融合した美しい洋服の世界。
高い品質のKhadiにインド伝統の刺繍やジャムダニ織などの手仕事をふんだんにちりばめたコレクションです。

Photo:Haruki Anami

インドでのもの作りと“Slow Craft”

インドの生地との運命的な出会い

ディレクターの吉田謙一郎さん、デザイナーの浅野愛美さんを中心にインドのパートナーと共同で2019年にスタートしたBUNON。きっかけはインドで生地とオリジナルのサリーブランドを展開する方との出会いから だった。吉田さんは、まだ世界にはこのような生地を作っているところがあるのかと驚き、生地の持つパワーに魅了される。

「彼らの話しだけでは半信半疑だった私達も、インドから届いた生地を初めて見た際にまだこのような手織りで他にはない雰囲気をもつ生地を作っている方々がいるのかと驚き嬉しくなったのを覚えています。この素材と私たちが考えていたクリエーションが融合すれば新しいものが生まれるのでは、という想いからインドと日本のコラボレーションブランドとしてBUNONは始まりました。」

実はインドでも手紡ぎ手織りの伝統的なカディをつくっているところは非常に少なく、インド国内でも絶滅危機にある産業の一つで、すでにかなり珍しくなっているのだそう。

「手間と時間がかかることなので本来の作り方を続けていくことは難しく、今後も減っていくことは明らかですが、後世に残していくことはインドのパートナーたちの願いでもあります。
そのため、私達は村の方々と直接仕事を行い、なるべく間にかかるマージンをなくすことで村の方々の収入を増やしていくことも伝統を守っていく上で重要だと考えています。」

 

作り手とのイメージの共有

さらに大変なのは、物づくりにおいてのコミュニケーションの問題。デザインシートを元にやりとりをしているが、最初の頃は自分たちの思ったようなものに仕上がらずそれを伝えるのに1番苦労した。そこからは、イメージの共有が一番に重要なことだと考え、そこに神経を注いだのだそう。そうやってやりとりをしていくうちに、だんだんお互いのイメージが近づき、そして重なっていったと吉田さんは言う。

「最初は作りたいものと出来上がったものにズレがありました。そこで、現地に行って実際にものを見ながら、自分たちはこんなものが作りたい、こんなものが好きなんだ、と伝えていきました。話してみるとパートナーのスミトラ、スリマ夫妻とは好きなものが似ていたり、興味があることが似ていたりと共通点もあり、そこから少しずつイメージを共有していくことができるようになってきました。」

「そしてなにより、彼らはもの作りが大好きで何事も楽しんでくれ、こちらが“こうやりたい”と伝えたことに“できない”とは言わないんです。まず挑戦してくれる。その気持ちにこちらも答えて、を繰り返すうちにお互いの信頼関係が高まっていったように感じますね。」

あまりに細かなプリーツやピンタックにずらりと並んだくるみボタン。これを細かく指示するのはとても大変だったのでは?そう聞くと「それが、違うんです」と微笑む浅野さん。

「こちらがお願いしたよりも多くの、そして細かなタックや刺繍を施してくれるんです。私もサンプルとして届いたものを見てとっても驚きました。ブランドをスタートした当初からやっている花柄のプリント生地の細かな粒々の刺繍も、何箇所か、と指定してもどこかわからなくなるからつぼみの点の分は全部する、と言ってくれ生地の全てに点の刺繍を丁寧に縫ってくれたんです。いつもサンプルが上がってくるときは、今回はこうきたか!と圧倒されることも多いんですよ。」

 

コンセプトは“Slow Craft”

話を聞いていくうちに、BUNONの服作りには単に美しい、着やすい、というものとは別に 素材への敬意や環境や社会への配慮も感じた。ファッションでありながら、エシカルなもの作りにこだわっていきたい、という思いがお二人の根底にあるのが強く伝わってくる。

「インドの伝統を守っていくこと、そして村の方々と直接仕事を行うことでしっかり産業を成り立たせ、それが伝統を絶やさないことに繋がると考えています。
それは私たちのブランドコンセプトである” Slow Craft” という言葉につながります。” Slow Craft” とは、自らがエシカルでクリエイティブなものづくりを行うこと。1点として同じ洋服はなく、同じ想いを持つ人との繋がりを生み、持続する事で繋がりの輪が大きくなり未来に繋がっていくことをインドと日本の両国から目指しています。日本の仕様とは違う点がありますが、これまで彼らがサリーをつくってきた中で培った経験による特有の仕様も融合されておりそれがBUNON独特の世界観に繋がっています。」

 

BUNONの世界観とアイデアの源

BUNONのはじまりは生地との出会いから。ディレクターの吉田さんとデザイナーの浅野さんは新たなブランドを始める時に、偶然出会ったインドの生地に魅了される。それは運命的とも言える出会いだった。その美しい生地にBUNONオリジナルのデザインやプリントが加わり独自の世界感を作り出している。

 

作為的でない自然のものがデザインのヒント

シルク特有の光沢感に美しいドレープ、よく見ると手仕事の跡が見えるような細かなネップ、近くで目を凝らせば温かみがあり、引いて見ると美しい湖の水面のようなワンピース。幾何学ような模様に淡い濃淡のプリント。肩に繊細な刺繍の入ったサロペット。このようなデザインはどのように生み出されるのだろうか。

「シーズンごとにポエムやデッサンを描いてテーマを決めています。ヒントになるのはやっぱり自然のもの。作為的でないものに惹かれるんです。例えば動物園に行った時に見たフラミンゴの羽根や雨上がりの葉っぱについた雨粒。パールの輝きからヒントを得たこともあります。」

そうおっしゃる浅野さんの顔は、綺麗なものを見て目を輝かせている少女のよう。どんなに経験を重ねても素敵なものを見つけてドキドキするその気持ちが、もの作りへの第一歩になっているのだ。BUNONの服を見た時に感じる少し懐かしいような気持ちはきっと浅野さんが見ている風景を、私たちも同じようにどこかで見たことがあるからだろう。

 

何度もやりとりを重ねて色を共有

ブランドスタート時から作っているプリント生地もBUNONを象徴するものの一つ。浅野さんのドローイングを元にインドでハンドプリントを施してもらっている。

「これも最初は色のイメージが伝わらず苦労しました。データで送っても、微妙に思っていたカラーとズレることも多く‥なので、インドと同じシルクの糸帳を取り寄せ、この番号の色をここの部分、と細かく指定して仕上げていきました。」

今シーズン(23SS)のテーマは「つめたくてあたたかい」。ヒントになったのはBUNONのLOOKをいつも撮影していただいているスペインのフォトグラファーMarta Rubioさんの写真。浅野さんがぼんやりと考えていたイメージに、彼女の写真がビビッとインスピレーションをくれたのだそう。靄のかかったような空に山、そして手前の森。点描画なような淡いグラデーションが湖面に漂う水蒸気のようでもあり、あたたかとつめたさを表しているよう。そこからアイスブルーというカラーができ、今シーズンの柱となっていった。

photo:Marta Rubio

 

ドキドキする気持ちをファッションで表現したい

デザインやもの作りの原点は素敵なものを見てドキドキする気持ち。日常の生活の中での些細なことや自然の美しさを自由な発想から服の上に乗せていく。その軽やかな美しさを伝統の技術が支え、かたちになっていく。

「クラフト感が強いものをただ作りたいわけではないんです。そこに私たちだけにできるデザインをプラスして、ファッションとして発信することも大切だと考えています。私たちのアイデアと伝統的な製法の融合で、自分たちの想像を超えた作品が出来上がっていきます。私たちが1番BUNONを楽しんでいて、これに共感してくれる仲間を増やして行っている、というイメージです。このドキドキがたくさんの方に広まるといいなと思っています。」

自由な発想とデザイン、インドの方たちの伝統を守っていくクリエーションが重なり織り上げれて作られてくBUNON。そのもの作りには今世界的に起こる時短化、大量消費の時代に「誰と」「どのような環境で」「どう作るか」を大切にし、そのために時間が惜しまれず使われていることを実感する。そこから生まれる服を通して、それまでに重ねた時間や思いを纏えるのはなんと豊かなことだろう。

人から人へ伝承していく技術、そして文化。マテリアル・職人・ファクトリー・デザイナー全てが揃って初めて生まれる美しい世界。それはただのファッションではなく、未来へのもの作りに紡がれていく。

BUNON
インドの伝統を維持する高い技術とドキドキするような発想が融合した美しい洋服の世界。
高い品質のKhadiにインド伝統の刺繍やジャムダニ織などの手仕事をふんだんにちりばめたコレクションです。

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