横尾 香央留/糸のゆくえ

宝島染工 大籠千春

日本からフィンランドへ。何度も海を行ったり来たりして、少しずつ編み地が足されていく横尾香央留さんのニットの交換日記、まだまだ続いています。次なるアイデアを求め、横尾さんは九州へ降り立ちました。今回は、天然染料で染め物をする宝島染工の大籠(おおごもり)千春さんを訪ねます。

陶器→木工と作家のアトリエを訪ね、少し調子が乗ってきた横尾さん、ぜひ染色も! ということで、今回アトリエ見学をお願いしたのは、博多から車で約1時間ほど福岡県の三潴郡という場所にアトリエを構える宝島染工。染工所を主宰する大籠千春さんは、とてもサバサバとした潔い女性。私たちが見学するというので、藍染めの工程を少し待っていてくださいました。

横尾香央留 今回は藍染めの工程を見せてくださり、ありがとうございました。空気に触れると、どんどん色が変わっていく姿はとても不思議でした。簡単に藍染めの工程を教えていただいてもよいですか?

大籠千春 はい。伝統的な手法では、瓶の中にインド藍(染料)とアルカリ水、藍を甕の中でもう一度発酵させます。 発酵、還元してくると表面に藍色の泡、華が立ってきます、これを「藍の花」といい、これが立ってきたら染めることができます。藍が立つまでの期間は、季節や気温、湿度によって変わってきます。この瓶の中で起こっているのは、藍の化学反応で、発酵により微生物が化学変化を起こしてくれるんですね。

横尾 なるほど。

大籠 アルカリ性の条件下で還元した液体は、再び酸化すると元の藍色に戻っていくんです。繰り返し藍染液に浸していくことで、藍色はより深いものになっていきます。

横尾 最初は黄色に近い色なのに、時間が経つとどんどん緑から青になっていく。すごくスピードが速いんですね。

大籠 そうですね。

横尾 だから藍染めのものは一点一点風合いが少しずつ異なるんですね。

大籠 それを同じような色味に仕上げていくのが職人の技になります。浸す時間や回数を調整して、一定の染め上がりに仕上げていくのです。

横尾 グラデーションや柄のものはどうやって出しているんですか?

大籠 柄(写真上)の場合は、布を折畳んである一部分だけを少しずつ染液に浸し、それを一定の回数繰り返します。そうして広げると、こんな柄ができ上がるのです。

横尾 きれい。面白いですね。大籠さんは、もともとはどんなお仕事をされていたのですか?

大籠 小さな頃から絵を描くのが好きで、染め物にも興味を持ちました。以前は婦人服を藍草木染で作るメーカーに勤務、いくつかのタイプが違う工場を経験し独立しました。それから独立して、九州にやってきて、という感じです。

横尾 いまは、ご自身で洋服やストールなども作っていらっしゃいますよね?

大籠 以前から、人がずっと使えるものを作りたい、という気持ちがありまして。メーカーの仕事だけではなく、自分たちで洋服も作り始めました。

横尾 素敵です。やっぱり色味が美しい。

大籠 洋服のデザインについては、性別や年齢の制限をしたくないので、いまのようなかたちになりました。

横尾 布単位での販売もされているのですか?

大籠 しています。洋服にしても布地にしても、そんなに量は多く作っていません。せんべいやさんが作っている割れせんみたいなもので(笑)。

横尾 じゃあ、出合えたらラッキーということですね。

横尾 羽織ってみてもいいですか?

大籠 ぜひ。着てみると、かけてあるのとでは柄が全然違うでしょう。それが布の面白いところですよね。

大籠 仕事としてちゃんと成立するような場所を作りたいと思っていました。いまの時代は、ものをたくさんつくる時代じゃあありません。だから、自分たちでできる範囲のことをやって、誰かに選んでもらえたら嬉しいなと思っていて。こんな辺鄙な場所でも、注文してくださる方がいるし、働きたいと言う若者も少ないですがいます。

横尾 若い方が働いていらっしゃいましたね。結構重労働だと思うんですが、でもやり甲斐はありそうですね。

大籠 藍染めが中心ですが、草木染めもやっていますし、材料さえあれば、何でも染めることができます。昔は小豆の茹で汁で布を染めていたそうです。染め物は、生活に密着した知恵なのだと思うので、今後も残していきたいですね。

横尾 何でも染められるんですね、面白い。染め物に対する考え方が少し変わりました。今日は、ありがとうございました。

宝島染工

天然染料を100%使用し、昔ながらの染色方法や手作業を使って、染色加工をいまの市場に合うかたちで提案をする。
www.takarajimasenkou.jp

横尾香央留

1979年東京生まれ。
ファッションブランドのアトリエにて
手作業を担当した後、2005年独立。
刺繍やかぎ針編みなどの緻密な
手作業によるお直しを中心に活動。

主な著書
『お直し とか』(マガジンハウス)
『変体』(between the books)
『お直し とか カルストゥラ』(青幻舎)
『プレゼント』(イースト・プレス)

主な個展
「お直しとか」(2011/FOIL gallery)
「変体」(2012/The Cave)

主なグループ展
「拡張するファッション」
(2014/水戸芸術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)

編集・文/上條桂子 写真/藤本幸一郎

《横尾香央留 糸のゆくえ》の記事

  • フィンランドと日本を行ったり来たりのニットの交換日記。ヘルシンキ在住、アアルト大学の学生でマリメッコのテキスタイルデザイナーでもある島塚絵里さんが編み繋いでくれたニットのテーマは『森からの贈り物』。

  • 日本からフィンランドへ。何度も海を行ったり来たりして、少しずつ編み地が足されていく横尾香央留さんのニットの交換日記。次なるアイデアを求め、天然染料で染め物をする宝島染工の大籠(おおごもり)千春さんを九州に訪ねます。

  • フィンランドと日本を行ったり来たりしながら、少しずつ編み地が足されていくニットの交換日記。横尾さんは木工作家の山口和宏さんのアトリエを訪ね、お話をした一日から浮かんだ光景をニットに綴っていきました。

  • フィンランドと日本を行き来し、むくむくと成長していきたニット。次の編み地のアイデアを考えるべく、横尾さんが次に訪ねたのは、福岡県うきは市、木工作家の山口和宏さんの工房でした。

  • フィンランドの小さな町カルストゥラで出会った元マリメッコのチーフデザイナーノーラから届いた小包。そこにはニットと続きを編んでという手紙が入っていました。その後、ニットはフィンランドと日本を行ったり来たりしながら、その場の空気と物語を一緒に編み込んで、少しずつ、ゆっくり大きくなっていきます。

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