第10回

横尾 香央留/糸のゆくえ

そろそろ交換ニットの参加者探しが
難航してきたこともあり
編集者の上條さんと共に
フィンランド大使館に相談に向かった。
初めて入る大使館には大きな織り機の
アート作品が飾ってあり
カルストゥラのクラフトセンンターで
織り機と格闘した思い出がよみがえる。

大使館のコッコさんと秋山さんに
交換ニットの経緯をお話しし
「フィンランド在住の参加者を探しています。」
と伝えると すぐに数人の名前があがった。
その中のひとりが昨年まで
こちらに勤務していたウラさんだった。
「彼女 いつも編み物をしていたよね」と
おふたりが話しているのを聞き 期待が膨らむ。
ウラさんから参加してくれるとすぐに連絡がきて
ニットは4度目のフィンランドへ。

会ったことのない人の元に
交換ニットのバトンが渡るのは初めてのことで
わくわくしながら出来上がりを待っていた。
フィンランド郵便局のかわいいボックスが届き
あけた瞬間に笑みがこぼれる。
“やっぱり地味だ!”

ヨコオ・カオルさんへ、
ニッティング・ダイアローグ・プロジェクトに参加する機会をありがとう。
とても素晴らしいプロジェクトね!

私はまず毛糸選びから始めました。
2017年はフィンランドの建国百年記念だったから青と白の毛糸を使うことにしました。
二玉目は自分で紡いだ毛糸を使っています。

昨秋からスピンドル紡ぎ車で紡ぎ始めたの。
きれいな黄色のコマで、それも自分の手作りなの。
紡錘を回す時間はとてもいいもので、とてもリラックスできるわね。
使っているのはフィンシープの毛糸で、シルク糸も編みこんでいるの。
それではまたね。

ウラより

そうか フィンランドカラーを意識しての
このカラーリング。
たしかにわたしも知らずのうちに
ブルー系を使いたくなっていたのは
そのせいかもしれない。

フィンランドは日本に比べて
織り機や紡ぎ車を気軽に使える施設が多く
とても身近なもののように思う。
しかもウラさんはコマまで自作!
わたしも糸紡ぎを体験したことがあるが
とても根気がいるし 全然うまく出来なかった。
“リラックスできる時間”に至るまで
どれくらいの鍛錬が必要だろう。
自ら紡いだ糸をこのニットに
編み込んでもらえたことが
とてもありがたく そしてうれしい。

横尾香央留

1979年東京生まれ。
ファッションブランドのアトリエにて
手作業を担当した後、2005年独立。
刺繍やかぎ針編みなどの緻密な
手作業によるお直しを中心に活動。

主な著書
『お直し とか』(マガジンハウス)
『変体』(between the books)
『お直し とか カルストゥラ』(青幻舎)
『プレゼント』(イースト・プレス)

主な個展
「お直しとか」(2011/FOIL gallery)
「変体」(2012/The Cave)

主なグループ展
「拡張するファッション」
(2014/水戸芸術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)

写真/ホンマタカシ 編集/上條桂子 翻訳/江口研一

《横尾香央留 糸のゆくえ》の記事

  • 交換ニットの参加者探しが難航し、相談に行ったフィンランド大使館。ニットは4度目の海を渡り、はじめて会ったことのない人の元へ。

  • フィンランドと日本を行ったり来たりのニットの交換日記。絵里さんが染めたキノコ染めの糸を見ていたら、ひさしぶりに染めがしたくなってきた。

  • フィンランドと日本を行ったり来たりのニットの交換日記。ヘルシンキ在住、アアルト大学の学生でマリメッコのテキスタイルデザイナーでもある島塚絵里さんが編み繋いでくれたニットのテーマは『森からの贈り物』。

  • 日本からフィンランドへ。何度も海を行ったり来たりして、少しずつ編み地が足されていく横尾香央留さんのニットの交換日記。次なるアイデアを求め、天然染料で染め物をする宝島染工の大籠(おおごもり)千春さんを九州に訪ねます。

  • フィンランドと日本を行ったり来たりしながら、少しずつ編み地が足されていくニットの交換日記。横尾さんは木工作家の山口和宏さんのアトリエを訪ね、お話をした一日から浮かんだ光景をニットに綴っていきました。

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