くらすこと新連載
毎日毎日、ごはんを作って、洗って、片付けて。また、「今日は何にしよ〜」と考える…。ごはん作りって、正直、たいへん!
そんな日々のごはんについて、くらすことスタッフで話していて、みんなが思ったこと。それは、「みんな、実際のところ、何食べているの〜??」
おしゃれじゃなくてもいい。映えなくてもいい。知りたいのは、着飾っていない、毎日のふつうのごはん。
そこで、くらすことが気になっている方々に、ごはん日記をつけていただくことに。
後日届いた日記には、気になる献立はもちろん、作る人、食べる人の思いや、真似してみたいアイディアがぎゅっと詰まっていたのでした。
料理家の和田麻紀子さんは、農家さんの畑仕事のお手伝いをしながら、デザイナーの夫の昭一さん、4歳、8歳の2人のお子さんと、福岡県の中西部に位置する自然豊かな那珂川市に暮らしています。
麻紀子さんは、会うと必ずと言っていいほど、農家さんから教わった野菜の食べ方や、子どもたちも喜ぶ料理のアレンジ法などを教えてくれて、くらすことスタッフは、「そんな食べ方があったなんて!」と、いつも大盛り上がり。
「でも私、本当によく寝坊してるし、『明日の朝ごはん何にしよ〜』って、いっつも迷ってますよ」と麻紀子さん。
第1回目は、秋から冬のごはん日記です。
文・写真:和田麻紀子
編集:神武春菜
秋晴れで最高の天気の中、今日は次女の運動会。午前中で終了。お昼は家で食べるのにお弁当がいいと言っていたので帰ってきて昨日塩麹と生姜に漬けておいた鶏肉を唐揚げにすると、次女は自分でお弁当箱に詰めていた。自分で詰めるとよく食べる。ただ、小松菜は苦いと言って出した。
長女が次女くらいの年齢のとき、カブの葉は食べるのに小松菜は食べなくて、八百屋の人にアクの成分であるシュウ酸が多いから子どもによっては感じやすいのかもと聞いて納得していた。けれど、改めて調べると小松菜はシュウ酸がむしろ低いということを知る。思い込みって怖い。
いずれにせよ、食べたくないのは食感なのか味なのか理由はあるはずで、大人より子どもの味覚の方が鋭いから嫌なものは強制しないようにしている。けどはじめから嫌いとか言うのはお断りで、試しに食べて嫌だったら食べないでいいよという方針にしている。
ちなみに、日記の初日になる今日、早速寝坊してバタバタ。朝ごはんの写真は撮れませんでした。
パンだと畑仕事はもたないけど、畑がおやすみの日は、私は麹あんトーストを。子どもたちを送り届けたあとホッと一息。作った麹あんは砂糖なしだから罪悪感なし。炊飯器で茹でた小豆に麹を混ぜ、保温モードにしておけばできるからとても重宝している。
お昼は、あるものとソイミートでベジカレー。畑の玉ネギ、ナス、冷凍してあった畑のトマトとニンジン。買った野菜はエノキ、生姜、ニンニク。肉も魚も好きだけど、ときどき野菜だけの満足感を味わうのもいい。
ソイミートは肉もどきでしょと魅力を感じてなかったのだけど、使ってみたら食材としてとても便利。豆を茹でる時間を考えると、茹で時間も短く思い立ったらカレーも時間かけずに作れる。にしても、家族全員の正解のカレーが未だにわからない。
糸島で地魚の価値を高める活動をしている馬淵くんが声をかけてくれて、糸島の枝豆農家さんの収穫のお手伝い。その前に腹ごしらえをと馬淵くんの作る派手さのない、最高の海鮮丼を。イクラとかウニとかのせずに糸島の地魚だけ。いつ食べても幸せな気持ちになる。
枝豆は子どもたちもたくさん収穫させてもらった。収穫するときの集中力、これは人間の本能だと畑に行くたびに思わされる。「うんとこしょ、どっこいしょ」とリアル『おおきなかぶ』状態。
採った枝豆はマメモーグ(ネーミングは大体ダジャレ)という機械にかけて外していく。農業を経験して、野菜の数だけ農工具があることに驚かされる。除草、種まき、洗浄など、手がかかるところをどう効率化するかの世界。
畑の仕掛けにアライグマがかかっていた。動物園で見ると可愛いで終わってしまうけど、畑で出会うと小さな檻にかかった同じ動物を殺してしまう。人間って残酷だよね、といつも食べるときに命を頂いている実感持って食べないとだよね、と話す。
今年は久々にぬか床を作っていい感じに育ってきたなーと思ったら、暑さで痛んでしまい、短い付き合いになってしまった。冷蔵庫に入れるべきだった。そして新たに床を作った。今回は市販のぬるま湯を入れたらできるものを購入。ぬか床は育ててずっと引き継がなきゃな圧があると疲れてしまうので、調味料的にうまく回らなくなったら新しくするくらいのテンションで付き合ったらいいと思う。
餅つき機で祖母と餅を作ってから、餅が朝ごはんの仲間に入った。直売所でつきたてのお餅。子どもたちはお餅とヨーグルト。私は麹あんでおしるこ。
午前中は落花生の収穫。今の季節の畑は気持ちがいい。
畑で働くまでは土の上においてある野菜がもったいない!と思っていたが、畑にとっては肥料だったということが一番の発見だった。畑のために何を育てて混ぜ込むといいかということを考えて作っている。作物の先の土を作るということ。人間も同じだな、と。月並みだけど病気を防ぐことができるのは食と運動だなと40歳になって改めて思う。
畑のカブも頂いたし、里芋と鶏肉とキノコで夕飯は肌寒いのでシチューにしよう!油分が全部バターだと重いから半分オリーブオイルにして野菜と肉を炒めて、小麦粉を入れて軽く炒めたら牛乳を入れて、ホワイトソースを作らなくても里芋のとろみでとろみがついてくる。ごはんにも合うように白味噌で味を整える。でもパンないの?と聞かれる。
寝坊した。記録してわかる毎日寝坊していること。昨晩は寝落ちしてお米も研いでなくて、急遽うどん。炊いてあったお揚げと茹でてあったツルムラサキ、下関の実家から送ってもらった塩蔵ワカメ。バタバタしていても炊いてあったお揚げと茹でてあった野菜があって自分にありがとう。長女はパーっと食べてピアノで『猫ふんじゃった』を弾いて、「いってきます!」。そのあとに次女はマイペースにヨーグルト。
今日は、畑はおやすみで、おうちで作業の日のあるものごはん。うずらの卵の目玉焼きのせるとなんでも可愛くなるマジック。しらすには安定のカボス。
夜は夫が買ってきた豚肉を焼いて、友達からもらったイギリスのお塩で食べ比べ。結局手間かけるよりシンプルに焼くのがいちばん食べる。
ひたすら玉ネギの苗の周りを除草すること4時間。骨が折れるけど、大事な作業。
現代の農業はマルチというビニールをかけて雑草を生えないようにするのが基本で、その分沢山のゴミが出る。高価だけど土に分解されるトウモロコシ由来のものがあったり、稲藁をかける方法もあるけど、効率など考えるとビニールのマルチになる。
このマルチを片付けるのが大変だしゴミの問題もあって、かけずにひたすら除草する有機農家さんもいる。雑草なんていくらでも生えるので、いかにちょうどよく除草するか。機械を使って効率化しても、最後は手作業の部分も多い。涼しいからそれだけで作業がとても楽。
餃子は正義だ。入れるものの組み合わせ自由。今日は畑のモロヘイヤと鶏ムネのひき肉。中国の子と一緒に作った時にタネに水を入れていていたのが印象的で、それ以来肉ダネは水分の具合を気にする。そしてその子はタネを生のまま味見して吐き出していた。私は具をちょっと焼いて味見して調整。
和田麻紀子
profile
神奈川県生まれ。3歳と7歳の姉妹の母。学生時代、世界各国を旅し、訪れた国の日常食に興味を持つ。世界のお母さんの味と古くから伝わる保存食をテーマにフードユニットTORiを岡本雅恵と共に主宰し、中目黒でカフェとケータリングを行う。社員食堂やレシピ開発などをしながら2021年まで東京で活動。2022年、土に近い生活を、と福岡県那珂川市に移住し、無農薬野菜を育てる畑で働きながら食まわりのことと改めて向き合う生活をしている。
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