我が家のリアルごはん日記

日々のごはん作りって、正直、たいへん!
「実際のところ、みんな、何食べているの〜??」
おしゃれじゃなくてもいい。映えなくてもいい。
知りたいのは、着飾っていない、毎日のふつうのごはん。
そこで、くらすことが気になっている方々に、ごはん日記をつけていただくことに。

後日届いた日記には、気になる献立はもちろん、作る人、食べる人の思いや、真似してみたいアイディアがぎゅっと詰まっていたのでした。

今回は、関東から福岡へ移住して3年目、食の仕事と農業をしながら家族4人で暮らしている料理家・和田麻紀子さんの日記です。

我が家のリアルごはん日記 一覧

料理家 和田麻紀子さんちのリアルごはん日記

神奈川県生まれ。5歳と9歳の姉妹の母。学生時代に訪れた国々の日常食に興味を持ち、世界のお母さんの味と保存食をテーマに岡本雅恵とTORiを主宰。中目黒でカフェとケータリング、社員食堂やレシピ開発など、2021年まで東京で活動。
2022年、土に近い生活をと福岡県那珂川市に移住し、有機野菜を育てる畑で働く。2024年春に福岡市南区大楠に食の拠点aeru」をオープン。

文・写真:和田麻紀子
編集:神武春菜

春から夏のごはん日記より

畑はもう夏!

5月から自分にとっての食の仕事の拠点としてお店をはじめた。
屋号は「aeru」。今まで出会った人、これから出会う人やものを繋げるイメージで、苗字の和田の「和」から「和える」に決めた。できるだけ生産者の顔が見える自然な食材を使って、少しでも体が軽やかに、元気になるような食を提供できたらと思い日々奮闘中。お店の営業は週3日、畑には週1日通う日々がはじまり、てんてこ舞いの毎日が続いている。

今日は畑仕事。「まだ早いよー」と思いながらも、畑はもう夏だ。春野菜の季節は一瞬で尊い。ここから、暖かさと共に夏野菜が急激に成長していく。

黄色い花の下に、小さな実をつけているカボチャ。葉っぱが日傘みたい。賢いな。
ナチュラルワインのラベルに、てんとう虫の絵がよく描かれているのは畑に必要な存在だから。アブラムシを食べてくれる大切な有機農家の仕事人。

クタクタで家に帰って、夜ごはんはお店の残りもののビビンバ。家では、コチュジャンを入れたい人は食卓で入れて食べるけど、お店用に作ったものなので、すでに肉に揉みこんでいる。子どもたちは食べないかなーと思いながら出すと、温泉卵をのっけてペロリ! いぶりがっこと生の玉ネギ、ディルが入ったポテトサラダは手もつけなかった。

これは食べないと決めつけていたものを食べたり、好きそうだと思って出したのに食べなかったり……。家族の食の好みをちゃんと把握しているつもりだったけれど、勝手に決めつけている部分も多いのかもしれない。その日の気分や体調、変わっていくであろうそれぞれの食の好みに合わせて作る家のごはんって、つくづくオーダーメイドだなと思う。

温泉卵は、普段目玉焼きの黄身を食べない次女も食べていた。下味をつけて冷蔵していたお肉を炒めて、お味噌汁作っただけ。

仕事と家庭のバランスを考える

何の記録も残せないまま一週間が経っていた。日々の食卓は、だいたいトマトとお味噌汁があればよしで、あとはお店の残りもの、焼いただけの肉か魚だったかな。もはや覚えてない(写真を撮る余裕もなかった……)。「お店でも、畑でも、家でも、ずっと作り続けてるね」と、お店に来てくれた友人に言われて気がつく。

仕込みが終わらず、夫と子どもたちでうどん屋さんの日もあった。記録さえできない期間のごはんこそ、リアルだなと思う。

枝豆は冷凍のものを活用。海苔は福岡県柳川市にある成清海苔店のもの。

お店を初めて一ヶ月。土曜日も営業しているので、夫に子どもたちを任せている。家族との時間を減らして、自分の仕事をするべきなのか、家族単位でそれがよいのか否か、改めて家族会議しなくてはと思いながら、今日は一週間ぶりの畑の日。

曇天で少し肌寒い。オクラの除草と春野菜の片付け。雨が降ると雑草がぐんと伸びるから梅雨までにやっておくことがてんこ盛りだ。田植え待ちの苗も育っている。農家さんが一年で一番忙しい時期。

この花は何の花でしょう? とってもいい香り。正解は偏愛野菜のニンジン! 頂いて花瓶にさして愛でた。

初採れのトウモロコシを頂く。無農薬でトウモロコシを育てるのは簡単なことではない。自分が虫だったら真っ先に食べたいものね。甘いだけでなく旨みも強い。茹でてテーブルに置いておいたら、あっという間になくなっていた。アルミホイルに、余っていたささみとエリンギ、味の一醸造の「味の母」で溶きのばした味噌を入れて包みオーブントースターへ。あとは昨日の残り。お店で炊いて残った黒米入りのご飯を家で食べることが増えたのだが、次女が白いご飯がいいとブーブー言ってくる。

サイキさんのトマトに出会ってトマト嫌いの夫も食べられるようになった。トマトはとにかく手がかかる野菜で、作ってわかるありがたみ。ぬか漬けは私しか食べないから最近管理がさらに適当に。

お味噌汁はいりこ派

淡竹(ハチク)を頂く。見た目がもはや竹(肝心の写真を撮り忘れてしまった)! 初めて茹でるけど、どこまで食べられるのかわからない。とりあえず茹でてみたら意外と下の方まで食べられる。普通の筍よりもアクが少なく美味しい。冷蔵庫にあった豚肉とズッキーニとオイスターソースで炒める。

お店で扱っている福岡の糟谷郡にあるファーべ農園大庭さんが作ったスティックブロッコリーが葉っぱまで美味しい。洗ったけど付いていた虫も一緒に茹でてしまっていた。

写真が見切れてしまったけれど、切っただけトマトが必須の子どもたちと私。サイキさんのではないトマトを出した日は、気づかれて手が伸びなかった。美味しいのも罪。

我が家は、お味噌汁のだしは頭も内臓も取らず、いりこを水出ししている。時間がない日はお鍋の中で、弱火でコトコトと野菜などがやわらかくなるまでつけておき、味噌をといたら取り出すのだが、十分おいしい。

家事問屋の「茹で分けザル」は夫が買ってきた我が家になくてはならない画期的な道具。エノキを入れるとだしが出て味がまとまる。

最近夫は、「朝食を食べない方が調子がいいかも」と実験的に朝食を抜いている。夜は夜で、「お酒を飲むから汁ものはいらない」と。それだとお味噌汁を飲む機会がなくなってしまったのが気になり、やっぱり夕飯にお味噌汁を出すことにした。気分を上げるためにお椀を新調。くらすことで購入した山岸厚夫さんの漆器の汁椀を買ったら美味しくなったようにさえ感じるから器は偉大だ。今日も丸つけ待ちの宿題がテーブルに置いたままの食卓だったな。

田植えの後のご馳走

大分県玖珠で自然農をしている佐藤ファームの田植え体験へ。お店でも、佐藤ファームのお米を使わせてもらっている。機械で植えたらすぐに終わる作業なのに、「食べるものとの距離を縮めたい」という想いでこの体験イベントを続けていて、今年で14年目になるという。

去年最年少で沼にハマっていた次女もしっかり戦力!

私は慣れないお店の仕事で体がクタクタで、田植えはやめておこうかな、と思ったけど裸足で泥の田んぼに入りたくなる不思議。娘たちは2年目の田植えで要領を得て楽しみながらサクサクと手を動かす。子どもは働きたい生き物だと聞いたことがあるが、それを実感する。そして私は疲れたけど体が元気になった。

ひたすらオタマジャクシを捕まえる子、入らないで泥団子を作る子、泥には入るけどやらない子。いろんな子がいておもしろい。けどみんな毎日食べる米、それぞれの体験として記憶に残るんだろうなと思う。

長女はこの町に移住した友と久々に会っておしゃべりしながら。

そして、一番楽しみだったのが佐藤家のお母さんが作るごはん! 少食の我が家も、おこわのあとにみんなで白米をおかわり。いつものお米も育った土地の水で炊くと味が違う。水が合うという言葉がしっくり。

私の大好物のおはぎまで。幸せすぎるごはん。こういうごはんが作れる人になりたい。

すり鉢マジック

お店の仕込みの日。サイキさんの野菜を買わせてもらって、大庭さんの野菜を配達してもらって、全部有機野菜ってなんて贅沢なんだろう。

茹でただけで「お待たせしました!」でもいいのかもしれない。塩をしっかり入れたお湯から茹でる。ぷくっと美味しそうになったら火を止めてそのまま少しお湯に入れておく。生でも食べられるからもはや茹でなくてもいいのだけど。
サイキさんの玉ネギとトウモロコシを芯と一緒にクツクツ煮る。芯はだしが出たらとってブレンダーで撹拌して、ポタージュに。

ずっと立ちっぱなしで家に帰って何もしたくない。だけど、使いたい食材がたくさん待っている。

ほうれん草を昨日まとめて茹でてあったので、すり鉢でゴマをする作業を子どもたちにお願いしたら、楽しんでやってくれた。醤油と砂糖も適当に入れて胡麻和えができている! すり鉢のまま出す。よく食べる。すり鉢効果絶大の食卓だった。

使いたい豆腐があったので麻婆豆腐を。えらいぞ私と思いながら、ビール飲みながら作った。味付けは甜麺醤だけで辛味なし。私は食卓で友達に教えてもらった横浜中華街にある「隆泰商行」の麻辣鍋醬を。

夕飯は、ほとんど料理していません

お店が休みでもなんやかんや仕込みがあったりで月曜も出勤している日々を過ごしていたが、今日はお店に行かない日! と決めて春日原の「Basking coffee」へ。やっぱりこういう時間って大事!

最近知り合ったお友達と至福のコーヒー時間。

この連載を読んだ友人が、「いつも品数が多くてすごい」と言ってくれたが、じつは夕飯こそほとんど料理していない。茹でる、和える、切っただけ。それが我が家のいつもの食卓。今日は、厚揚げをトマトとニンニクで炒めたのが唯一の料理といえるかな。

島根県雲南市にある「豆腐工房しろうさぎ」の生揚げはチーズ的な旨味があって、トマトとバジルと合わせてみた。一味加えたトマトなら、夫の箸がすすむことがわかったのが最近の発見。

紫色のトウモロコシを直売所で見つけて買ってみたけど味は微妙! 昔から物珍しい食材を見つけると買ってしまうけど、当たりって少ない。
最近家で流行っている冷凍のブルーベリーとバナナに牛乳少しをハンドブレンダーでガーッと。スムージーというよりアイス。バナナが熟したら、とりあえず冷凍しておく。

パンとお味噌汁って合う!

アレルギー症状が出やすい長女のこともあり、なるべく朝はお米にしよう月間。なので、朝ごはんはおにぎりが多い。でも基本的にはパンがいい子どもたちのリクエストもあって、今日は糸島にある奥添製パンのパン。それとお味噌汁。奥添製パンの店主がパンとお味噌汁の朝ごはんを食べている話がとても気に入って、我が家でもパンだろうとお味噌汁を出すことが増えている。発酵つながりでお味噌とパンってとても合う。

パンにはバターをのせて。味噌汁がほぼ具……。お店でも奥添製パンのパンを使わせてもらっている。aeruのメニューは和洋中、どこかの国の時もあるので、いろんなものに合うパンって最高だ。

おにぎりの具の中でも、私は梅干しが好きだ。カレーにもマリネにも何にでも入れる。お店のピクルスには梅酢を入れている。梅が不作らしい今年は、梅干しは漬けられないのかと思っていたら、買い出ししていたら梅が売っていたので買って帰る。
長女は、「梅シロップつくる!」と言って、次女に手順を教えながら梅を洗ってヘタを取るところまでサクサクと進めてくれた。ということで、結局梅干しにはならなかった梅たち。

「疲れたから今日はやらないよ」って言ったら自分でやると。こういう黙々系の作業へのモチベーションの強さを持っている長女。
この日は洗って終了。翌日最後までやりきる。入れ方にもこだわりがあるそう。でもその後のお世話はしない……。

夫が米粉のパンを焼きたいとホームベーカリーが家にやってきたが、まだ見ないふりをしている私。心の余裕ができたら取り掛かろう。まだまだ朝ごはんの模索は続く。

夜ごはんの炒飯、大皿に盛っておいたら独特の取り分け方の次女。

お誕生日に炒飯!?

お店の日は昼食を食べないことが多い。満腹になると集中力がすごい勢いで低下する。
でも低気圧が苦手で、仕込みの途中に頭がモヤモヤすぎるのでスパイスを摂取したくてお店の下の階にあるタイ料理「thuk wan」でカオソイを食べる。他にもメニューがあるのにどうしてもカオソイを頼んでしまう虜になる味。案の定、仕込みに戻っても多幸感で捗らない!

先週出した「aeru」のランチプレート。トマトの旬は今。旬の栄養しっかり摂ってお客様も家族も友人もみんな元気に夏を乗り切れますように!!

今日は長女の誕生日。ごはんのリクエストを聞いてみたら、なんと炒飯と。こないだも食べたけどいいの? なんの変哲もなく、だいたいニンニク、生姜、豚肉とネギと卵で、仕上げにナンプラーというのが定番。パラリとしていないしっとりした我が家の炒飯だけど、なぜか「炒飯yeah!!」と喜んでくれる姉妹。ケーキは、リクエストで昨日バスクチーズケーキを焼いておいた。フルーツをたっぷり盛ってハッピーバースデー。なんでもない日もおめでとうだし、お誕生日おめでとう。

余り野菜とひき肉でミートソースを作ってあったので、グラタンに。パスタにしたり、週末まで助けてもらう。ナスは喜んで食べないけどしれっと出す。
まるい型がお店に持っていってしまってなくてパウンド型で。バスクチーズケーキは、混ぜるだけで焼いたらできるし、最高のオーダーだ。顔は次女が描いた。

春から夏を記録して

移住、農業、そして飲食店。
なんだか自分で決めているのだけど、せわしない人生。

そしてそんな中、畑仕事は6月で一旦お休みすることになった。
理由は 本格的な夏がはじまると酷暑で昼間の作業が難しいこと。週一の農作業とお店のリズムいいなと思っていたのは私だけで、一週間で畑の様子は全く違うので、頻度が多い方がいいということ。
移住で心細い日々に心身共にありがたい畑仕事と人のつながりだった。これからも食材は使わせてもらうし、すきあらば手伝わせてもらおう。引き続きお世話になります。

2年間継続的に農業をさせてもらって、食の仕事への気持ちも変わった。
お店で、「このトマト何かでマリネしているんですか?」とただのトマトを食べて聞かれたり、「久々に美味しいお米を食べました」とか、「このパンどこのですか?美味しいですね」とか、素材を褒められると嬉しい。作る過程を体験したことで生産者、加工する側、そういう垣根がなくなって、家族に食べてもらうように、総じて安全で美味しいものを届けられたらと思うようになった。

あとは土に触れるセラピーがあるというが、ある程度の病は、継続的な農体験で治るような気がしている。工業地帯育ちの私は、土に触れて来なかったコンプレックスがあったが、それをこの2年で回収させてもらって、なんでも遅いってことはないとはよく言ったものだけど、もっと早くに体験していたかったなとも思う。土はすごい。

そして、慣れない土地でのお店が始まった春。
お店から家に帰って来て朝洗い残したお皿を片付けながら、さっきお店で片付けたばかりなのにと2倍に増えたような気がするタスクをこなしながら、家と仕事のバランスが目下の課題です。

でも、美味しい食材と調味料があれば料理しなくていいことに、家でも店でも助けられています。

再度、半農半Xするために畑を借りたいなと思いながら、現実的にできるかなと自問自答。全てはやるかやらないかだな。

和田麻紀子

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