我が家のリアルごはん日記

日々のごはん作りって、正直、たいへん!
「実際のところ、みんな、何食べているの〜??」
おしゃれじゃなくてもいい。映えなくてもいい。
知りたいのは、着飾っていない、毎日のふつうのごはん。
そこで、くらすことが気になっている方々に、ごはん日記をつけていただくことに。

後日届いた日記には、気になる献立はもちろん、作る人、食べる人の思いや、真似してみたいアイディアがぎゅっと詰まっていたのでした。

福岡市にある食事と喫茶のお店「aeru」の店主で、料理家の和田麻紀子さんちのリアルごはん日記第4回目をお届けします。

我が家のリアルごはん日記 一覧

料理家 和田麻紀子さんちのリアルごはん日記

神奈川県生まれ。5歳と9歳の姉妹の母。学生時代に訪れた国々の日常食に興味を持ち、世界のお母さんの味と保存食をテーマに岡本雅恵とTORiを主宰。中目黒でカフェとケータリング、社員食堂やレシピ開発など、2021年まで東京で活動。
2022年、土に近い生活をと福岡県那珂川市に移住し、有機野菜を育てる畑で働く。2024年春に福岡市南区大楠に食の拠点aeru」をオープン。

文・写真:和田麻紀子
編集:神武春菜

秋のごはん日記より

塩むすび最強説

料理研究家の土井善晴さんがテレビで紹介していた「土井さんの塩むすび」という作り方で、塩むすびを作ったら、おいしすぎて止まらない!といつもの倍食べた朝。炊きたてのごはんを水を通したふきんで一握りしてしばし放置、蒸気が出てちょっとバカっと割れ目が出た頃に、水としっかりめの塩を手にすりこんで軽く握る。シンプルな料理こそちょっとしたことが大事なのだな。

寝る前に、明日はパンにする?って聞いたら塩むすび!!とな。
ブロンズ新社から発売されている高山なおみさんの本。東京に住んでいるとき、ブロンズ新社の社食を作らせてもらっている時期があり、思い入れのある大切な一冊。長女はこの本も引っ張り出してきて作っていた。子どもが手を動かして作れるようによく考えられている。

急に豚汁ブームの次女。「今日は豚汁?」っていつも聞いてくる。豚汁のゴボウがお気に入りになったんだそう。

お店で、お客さんが「子どもが味噌汁を急に飲まなくなった」とか、いろんな子どもの食事事情を聞いて、子どもの味覚が敏感であることは間違いないのだけど、誰かと一緒に食べたら急に好きになったり、たまたま口にしたものが気分的に受け入れられなかったことで苦手になったりとか、記憶と味覚の繋がりが明確で面白いなーと思う。ちょっとした体験で急に変わる。ただ、次女になんで豚汁急に好きになったのって聞いても「知らん」との答えだった。

蒸したり焼いたり煮たりと大活躍のストウブ26cm。重いしどう考えても一つ小さいサイズの方がいいのだけど、と思いながら何年経ったのか。

トーマス家の日常

今週はお弁当の注文がたくさんあって、全てお届け完了し、やっとホッとした週末。たまたま近くに住んでいる東京時代からの友人ゆっこ(@yukiko.thomastable)のお家で、お昼ごはんを持ち寄って遊ぶことに。私はお店で余ったカレーを持って行った。

子ども達も普段家だと食べないものに挑戦したり、持ち寄りごはんって大人も子どもも楽しい。ルイボスティーをトーマス家で飲んでから、「あのお茶がいい」と家の麦茶がルイボスティーに変わる。

ゆっこは、イギリス人の旦那さんと共にDIYでお家と工房を整えながら、イギリス菓子を焼いて販売している。ゆっこがいろんな料理を用意してくれた上、庭の栗を栗ごはんにしてくれた。皮を剥くのが大変な栗。栗を料理してくれる人は神と思っている。オムレツにはカボチャが入っていて、自分では入れない組み合わせに嬉しくなる。

虫にも食われずに綺麗なほくほくの栗。今年は水につけて冷凍して、次の日に熱湯につけてから剥いてみたら楽だった。

モンテッソーリの保育園の給食を作る仕事もしている彼女のごはんは、子どもにもとっても優しく、幸せな気持ちに。畑があって、野良猫を飼い猫のように愛で、子どもたちはひたすら走り、光景に癒された。お土産に庭の栗とバナナの実を持たせてくれて、家からそんなに遠くないのだけど、旅帰りのような日。

敷地内のバナナの木からバナナの実を取ってくれているトーマス氏。トーマス家にとっては日常の光景なわけで。世界中のいろんな人が毎日暮らしているこの地球の当たり前ってそれぞれで。そんなことをよく考える。

文明の利器!

夫が米粉パンを食べたいからと、我が家にパンメーカーがやってきた。材料を入れたら焼けるから料理感はないのだけど便利。パン食べたいとなったら、子どもたちに計量してもらっている。私がチョコ入りのジャンクなパンが食べたくて製菓用の小さくカットしてあるチョコを入れて焼いたら全体に溶けて思ったよりもビターな仕上がりで大人の味に 。

チョコ入りパンは強力粉で作ってみた。米粉のパンはパンメーカーで焼くと上の面に焼き目がつかないとお店の常連さんに話すと生地だけこれで捏ねてオーブンで焼いたらいいと教えてもらう。※ホームベーカリーによって使用法が違うと思いますので、説明書をご確認くださいね。私は自己流で使っていますので。

お店に来るお客さんの話が毎日楽しい。お客さん同士で「ニンニクが好きだけど、ほうっておくと芽が出ちゃうし、日々どうやって使ってる?」という話が聞こえてきた。お節介と思いつつ、ニンニクは刻んでオイルで絡めてビンに入れておくと便利で、さらに工程を踏めるならニンニク麹がおすすめ!という話をしたら、後日、そのお客さんがまた来てくれて、ニンニク麹を作っていると報告してくれた。こういうのが嬉しい。

ニンニクのみじん切りと米油を空き瓶に入れてひたひたにオイルを入れておく。オイルは1ヶ月で使い切るくらいの量が目安。ニンニク麹は切らし中。
揚げ物はする気もなかった夫が、家事問屋の油はね防止の網を買ってきて揚げてくれるようになった。私は油がはねてもあまり気にならないけど、ちょっと裏ごしをしたい時とか、鍋ごと水切りにもなって優秀な道具。
買い物に行ってないので、冷凍庫にあったエビを唐揚げにして、ジャガイモはピーマンとニンニクとごま油と酒とお塩と少しの酢で炒める。

9歳、お店に立つ

長女は2日間の秋休み中。今日は一緒にお店に行くことに。カウンターの端っこで読書したり最近ブームの漫画描いたりするかな、と思っていたら、お店に着くと、「次何する?」となかなかいい感じに仕事をこなしていく。

母娘で来る常連さんが写真を撮って送ってくれた。長女の報酬は野菜が売れた分から仕入れを引いた金額ねと伝えると、黒板に絵と価格を丁寧に書いて野菜を並べ替えたり。お金を稼ぐ方法がちょっとわかったかな。

お願いできることがなくなったので私用のコーヒーを淹れてもらうことに。ずっとドリップで淹れていたけれど、より簡単においしいコーヒーを淹れられると、豆を仕入れているBASKING COFFEEのともこさんの提案でクレバーの浸漬式ドリッパーを導入。お湯を淹れたら蓋をしてあとは待つだけ。お店はワンオペなのでドリップだと途中で途切れてしまうことがあるけど、これならお湯さえ入れてしまえばおいしく入る。台湾発の道具。

上手に淹れられて気を良くした長女、お客様用のも淹れてもらい、自分で運ぶ、と。常連さんばかりだったので、笑顔で受け入れてくださって感謝。

家に帰ると次は手伝うよーと寄ってくる次女。働き者姉妹だな。ピーマンを洗って切って油と味の母、塩昆布、ごま油で炒めて作ってくれた。

たくさん食べてくれて、手伝ってくれたかいがある。

フライパンのまま、どんっ!

急に涼しくなった。今年の夏の暑さを体験すると、あの暑さが当たり前になっていくのだろうと思うと秋の貴重さが増す。お店のランチはどうしようかな。とりあえず栗を使いたいから気力で剥く。栗って一人でやるといつだって途中でもうやめたいってなる。

朝ごはん。キャンプ用の小さいロッジのスキレット、スクランブルエッグ作ってそのまま出したり、ソーセージだけ焼いたり、そのままテーブルへ。使い勝手がいい。

寒くなってきたからか、久々に煮込みが作りたくなってプルーンと鶏肉と栗で煮込む。フランスのおばあちゃんな気分で妄想料理。味の着地的にはすごく良いのに、栗が崩れてしまった。あんなに苦労したのに栗の煮込みとはメニュー名には書けないな。

この季節の寒暖差ってなんだか嬉しいけど疲れがドッとでる。ほんとーに何もしたくない。そしてなんでもないところでお皿も割ってしまってしょんぼりな日。

夜ごはんもフライパンのまま蒸し豚しゃぶに。端境期で野菜が少ないのでもやしとニンジンをちょっとを敷いて、豚バラを並べて、ねぎ、塩、薄口と味の母で味付けして蒸すだけ。朝も夜もテーブルにフライパンな日。

オクラナムルは茹でたオクラをごま油と塩で和えただけ。フライパンは料理研究家の有元葉子さんのキッチンウェアブランド「ラバーゼ」の26cmサイズを長年愛用。キャンプにも連れて行かれてタフな道具。

お店のお客さんが、家ごはんがおだしと醤油味でつまらないと話していた。それが最高なのにと思って聞いていたけど、そういう方がナンプラー使ったらいい着地するんではないかなという話になった。だしとしてのナンプラー、おすすめです。

こちらは別の日のお昼ごはん。万願寺唐辛子と豚ひき肉、冷蔵庫にあるものをナンプラーとオイスターソースで炒めてガパオ風に。

畑からの繋がりが見える店

朝ごはんは「目玉焼きが食べたい!」と、長女がなんだかおいしそうなやつを作っていた。

「あたしンち」の漫画に出てきたんだそう。ドラマでみたやり方で茶漉しで卵をこして余分な水分を取ってから焼いていた。私より料理に向いている。次女は目玉焼き作るのは好きだけど黄身を食べない。

お昼は、お店のイベントに出店してくれるメンバーと常連さんが教えてくれてずっと行きたかった薬院の「アジアンマルシェ」というお店へ。家族が営むアジアンハーブや野菜の農園のお野菜をふんだんに使ったプレート、口に入れたことがない食感の野菜も入っていて賑やかなお皿。前菜の盛り付けも斬新!店内にたくさん並んだアジアの食材や道具にも旅情を誘われ、目も舌も楽しい。

「アジアンマルシェ」にて。ハーブは軸ごとモリモリで贅沢。バジルだけでも数種類。ココナッツミルクのお好み焼き的なベトナムのバインセオ。大好き。

夫が出張でいない夜ごはんは大抵パスタ!子どもが食べたいものをチャッと作ればいいから楽でいい。しかも、次女が、家にある材料でほぼ自分だけで作った。茹でて切って、やけどもしていたけど、盛り付けも!よくできました。

次女作バター醤油味。私は大葉をどっさりのせて。
夫が不在の別の日の夜ごはん。たこ焼き器引っ張り出してきてたこ焼き。と刺身。
ちょっとエンタメ感出してみたり。大人のこと考えないごはんは楽だ。

チートデイってこういうこと?

今週は平日に次女の運動会もありめまぐるしかった。おいしそうな秋刀魚があったのでお店のランチは秋刀魚のコンフィを無心で大量に仕込んだ。たくさん作って、洗って、喋って、今週も疲れたけど楽しかった。

朝ごはんに食べたリンゴは、親戚が長野から毎年送ってくれるもの。果物消費量の多い我が家。毎日おいしいリンゴがある生活って、幸せ。

ずっと座ってないから足は棒のようだけど、家の冷蔵庫に何もないなーと帰りにスーパーへ。頑張った反動なのか、安くなっていたし、と普段はあまり買わないステーキ肉をカゴに入れていた。余っていたジャガイモにチーズとトマトソースかけて焼いて、ステーキとポテト、赤ワインも飲んで。それぞれ食べたいものを食べて、飲んで、週末!

「ごはん進む〜」とご機嫌にいつもより早いペースでペロリ。サツマイモのフライは、スティック状に切って素揚げしたもの。フライドポテトが大好きな我が家、これはよく出てくる。

農産物としてのワイン

糸島のマスエワイナリでワインの仕込みのためのお弁当を依頼してもらったので朝から家族総出でお店に出動。お弁当を詰めて、いざ糸島へ。

ワインの仕込みに使用するブドウが入っていたものすごい量の空箱を見て、原材料がブドウだけ、当たり前のことだけどワインって農産物だな、と改めて思わされる。

ブドウをフサから外して潰し、樽に移して酵母を入れて発酵させる。文字に書いたらなんてことない作業だけど、量があるととにかく人手が必要で地道にコツコツ。食べたり飲んだりって一瞬だけど、作るのって本当に手間と労力がかかっている。畑作業と一緒だな。

いいところばかり体験させてもらってしまったような気がして、ぶどうについた虫の除去とか、瓶詰めとか、地道な作業のお手伝いにくることをワイナリーの馬淵くんに宣言しておいた。今日のワインは年末には飲めるそう。出来上がりが楽しみだ。

発酵中の樽をまぜまぜする夫。なかなかの重労働。いい香りが漂ってくる。
ワイナリーの皆さんと食べるお昼ごはんは、aeruで担当。白ワインにもあって、子どもも食べられるがテーマで、糸島の食材を使ってお弁当を作りました。

お店をはじめてから、作り過ぎてしまったおかず達に救われている。フライやカレーを冷凍したり、家のごはんに使ったりしている。それがとても便利。何でも作りすぎて誰かとトレードできたらいいのに……なんて毎日思っている。

こちらは翌週の、なんでもない朝ごはん。

ごはん日記を振り返って

以前、畑仕事のお手伝いをさせてもらっていた「さいきのやさい」のさいきさんが「同じ畑のもの食べているから同じ釜の飯みたいなもんですよね」と言っていたのが印象的でよく思い出す。

東京で社員食堂を作っていた頃は、メニューを考える時に、この人が好きそうとかこの人は苦手かな、とかもはや家族に作っているような感覚だなと思いながら楽しく作らせてもらっていた。

そして今、お店に何度も来てくださる方が多くて、一生のうちの何分の一かのごはんを作らせてもらっていること、同じ釜の飯を共有していることが恐れ多くも幸せなことだなと思う日々。

そして、家に帰ってまた作る。

仕事のごはんと家のごはん、どちらが大事かってどちらも大事なんだけど、疲れて帰ってきて作る家のごはんはだいたいめんどくさい。けど、そんな気持ちで作るとそんなごはんになってしまうから、音楽かけたり、ビール開けてみたり、なるべくご機嫌に作るようにしている。ごはんの時間が多少遅くなってもいいと、もはや自分のご機嫌取り優先。時には充電がきれてキッチンの床に座って休憩している時もある。

ふと、以前の日記を読み返してみたら、次女が、今は大好きな豚汁を嫌がっていた。相変わらず蒸しナスは最高だけど、たまに焼きナスもする。糠の秋刀魚は見つけると買っていて、焼いたらおいしい干物や、季節の顔の見える野菜は私の味方。相変わらず料理という料理はしてない。変わったこともあるけど、変わらないことも多い。忘れてしまいそうなたわいのないことこそ、記録するってとっても面白いことをこの連載が教えてくれている。

野菜がちょうどない時期も、それはそれで畑が食卓と繋がっていることを感じられることが嬉しいと思うようになって、あるときにある野菜を食べられる贅沢と思えるようになった。

いろんな人の毎日の食卓、日々変化と共に。

和田麻紀子

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