
そうですね。いちばん簡単なのは、恥ずかしいかもしれないですがーー自分の利き耳を相手の方に立てて聞くことです。
利き耳ってどうやったらわかるんですか?
だいたいは電話をかけたり、聞いたりする方ですね。電話はどっちで聞きますか?
右です。
そしたら右の耳が利き耳かもしれないですね。ちょっとやってみましょうか。
相手に一個質問をして、一個応えてもらう。その時に自分の利き耳を立てて相手の話を聞いて、応えていく。たとえば「趣味はなんですか?」って片方が聞いたあとに、「趣味は○○です」って答える。すごく地味ですけど、利き耳を立てて聞いていくと「相手が言いたいことはなにか」っていうふうに聞けるようになります。言葉じゃなくて、「相手はなにを言いたくてこういうふうに言ってるのかな」って聞けるようになりますね。
たとえば保育士さんだったら、お子さんがいろんなことを言うけど、なにを言ってるかなかなかわからないわけですよね。そういう時って、「うん」とか「なぁに?」ってゆっくり言ったりするでしょう。そうすると、相手は落ち着いて「あのね」って言ってから、「○○なんだよ」ってはっきり言える。つまり、聞く方が「しっかり受け止めたよ」っていう姿勢をすると、人間ってゆっくり話すんです。
ちょっとやってみましょう、お隣の方と。
(やってみる)
これだけで結構、盛り上がってますねぇ(笑)。
じゃあ、ある程度息が合ってきましたから、質問をふたつに変えます。相手の利き耳で聞いてもらってる動作がだいぶ馴染みましたから、「もうちょっとあなたに興味がある」、そういう内容の質問をしてあげてください。今した話をきっかけに、「わたし、あなたのこういうところをもうちょっと聞きたいんです」っていうことを聞いてあげる。
まず「こうかな?ってことを質問していいですか」って聞いて、「はい」って相手に言われてから質問をして、聞いてから答えてみましょう。
(よりもりあがる)
止められない感じになってきましたねー(笑)。
ね、こんなにみんなちゃんと聞けるんです。ただ、こうやってるだけですよ。別におばあちゃんとか、志村けんの『あぁ?』ってやるあれじゃないですよ。
相手に「聞きますよー」っていう姿勢をとって、ただポカンとお耳を傾けるだけなのに、「話してもいいかな」ってなるのが人間の自然なんですね。
そして、話す内容は大したことないのに、大したことないことを聞いてもらえたから「もうちょっと聞いてほしい」になるんですね。そしてみなさん、聞く力がこれだけあります。使ってないだけですから。
「このひとはどうしたいのかな」って少し待ってもらう。ここが頑張りどころです。聞いたことのないひとは我慢できないからね。でも待っておく。そしたら必ず「なにか言おう」っていう力を引き出しますから。今話した内容で面白いのは、相手の話のどこを覚えているかですね。
相手のどういうところに気づきましたか?
彼女の好きなことを聞きました。
好きなことがあなたにとっては興味あることでしたか?
はい。
それは発見ですね。さっき、「恥ずかしい〜!」っていうのが聞こえてきたけど(笑)。
(別の参加者に)どうですか?
彼女の中に「やってみたい」っていう気持ちがあるんだな、っていうのを受け取りました。
なんとなく受け取ってもらった感じはしますか?
(聞いてもらった方) はい。
ってことは、たったこれだけのことでも、みなさんの中に「相手を受け取るのって楽しいな」っていう気持ちがあるってことです。聞かされているのではなく、「聞きたいな」「楽しいな」ってなると、こっちも楽しいから、「楽しい話をしよう」っていうことが伝わるので。
最後に、こういう質問をしていただいたところからお話ができてよかったと思います。それが最終的にはお互いに支え合っていたり、信頼し合ってるところをコツコツつくるので。よかったら今日、みなさん覚えられたので、ぜひまわりの方のお話を一個ずつ聞いていってください。
そうするとスピードアップして、最後は「それでね、あれでね」ってやり取りができるので。最初のきっかけとしては、「お話聞いてもらってもいいですか」ってまず相手に聞いてください。触れる時もそうなんですが、「ここに触れてもいいですか?」って聞いてから触れる。相手に「いいですよ」って言われてから話す。話してから聞いたら、「聞かせてくれてありがとう」ってやり取りを重ねてみてください。そしたら、「聞いてもらったな」とか、「話したな」っていう疲れも心地いいのでね。
じゃあ、これで最後にいたします。長い時間、ありがとうございました。
ありがとうございましたー。
