今週のあれ見たこれ聞いた『ナミビアの砂漠』

皆さんは「この人が出るならこの作品見てみようかな」と思う俳優さんはいますか?そして、今一番そう思われているのでは?と思うのが俳優の河合優実さん。名前でピンと来なくてもテレビドラマ『不適切にもほどがある』の純子、と言われたら「ああ、あの子か」とわかるかも。

私が最初に彼女に気づいたのは『PLAN 75』という映画。長い出演ではなかったけれど「なんだこの子は!」とびっくりしたのを覚えています。あまりに自然で、役の持つ不安な気持ちをリアルに表現していて心を奪われました。その後「令和の山口百恵」と言われていたり、ドラマやCMでよく見かけるように。今回の映画の少し前に見た『あんのこと』での演技もあまりに素晴らしすぎて、今作も楽しみにしていました。

恋人と同棲しながら他の人とも恋に落ち、何も言わずに引っ越すカナ(河合優実)。仕事はしているが無気力で、一体自分が何がしたくてどうしたらいいのか分からない。そんな苛立ちを新しい恋人にもぶつけてしまう。

テンションが上がったすぐ後には冷め、好きで一緒になった人にも身勝手なわがままをぶつける。厄介で自分勝手なカナにイライラしながらも目が離せないのはどこかチャーミングで魅力的だから。元カレ(寛一郎)と今カレ(金子大地)の優しさと残念感もおかしみがあり、最初は酷いと思って見ていた暴力も段々滑稽に見えてくるから不思議です。現代病とも言えるニヒリズムをうまく表現した映画でした。

歩き方から喋り方まで、作品によって全く違った顔を見せる多面体のような演技力。まだ20代の監督、そして若い役者さんたちの今後の作品も楽しみです。

『ナミビアの砂漠』
脚本・監督:山中瑶子 主演:河合優実

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全国公開中
©2024『ナミビアの砂漠』製作委員会
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ