

写真・繁延あづさ
長崎・雲仙を拠点に、
料理と理論を東洋の視点から伝えている奥津典子さん。
18 歳、12 歳、3 歳の歳の差のある、3人の子育てまっただ中です。
「子どもひとり一人の個性が違うように、
土地土地で風土や食材も違い、たのしい学びがあります。
そしてますます、台所こそ全ての土台だなあと思うのです」
食事は毎日のもの。おいしいと、毎日が愉しく豊かになります。
この連載では、奥津さんが日々実践する、
家族が元気になる台所の知恵を紹介します。

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切り方 実践編・お味噌汁
家族の健康は日々の台所から。
おいしくて、からだにいい食事の
決め手は「切り方」にある、と奥津さん。
Vol.1に続く実践編では日々の食卓の基本でもあるお味噌汁。
切り方を変えるだけでおいしくなり、さまざまなバリエーションも生まれます。
切り方ひとつで
いろいろなお味噌汁がつくれる
お味噌汁は貴重なタンパク源でもあり、塩分、油脂分、ミネラル、ビタミンなどが摂れます。
スープは固形の食べものよりも栄養を早く吸収でき、健康のベースになります。
おいしくつくれば、楽しく元気を支えてくれます。
食材の切り方ひとつで、ぜんぜん違うお味噌汁がつくれます。
たとえば、同じ大根でもいろいろな切り方があります。
私は乱切りにして歯ごたえを楽しむのがすごく好きですね。
そのときは炒めてから煮ることもあって、長女がすごく好きです。
半分短冊、半分おろしにすることも。おろしをからめながら食べるのは夫が好きです。
みじん切りのお味噌汁は、喉ごしがいいので夏にすごく飲みやすいのです。
冷蔵庫に少しずつ余った野菜があれば、みじん切りして煮るんです。
7種類くらい入れると、ミネストローネのようなお味噌汁がつくれますよ。
◎ 切り方の違い
大根の短冊切り
同じ大根の短冊切りでも切る手順によって、食感や味わいが違ってきます。
その日の気分や家族の好みに合わせて変えてみてください。

先に輪切り→縦に短冊切り
食感がやわらかくなる。女性が好む。

先に縦切り→横にして短冊切り
歯ごたえがある。男性が好む。

上:先に輪切り→縦に短冊切り
下:先に縦切り→横にして短冊切り
お味噌汁をおいしくするポイント
─── 出汁選び
下のAとBを組み合わせるのがおすすめです。
A 昆布、いりこ、かつお節 × B わかめ、干ししいたけ、きのこ類
*昆布×わかめのように、海藻だけになってしまう組み合わせにはしません。
─── 味噌選び
大豆、麦または米(麹)、塩だけを原材料とし、ひと夏から1年熟成させて無添加のものを選びましょう。2種類の味噌を混ぜてもおいしいです。
─── 味噌をする
味噌をすり鉢でするとよりおいしくなります。

少し冷ましただし汁をすり鉢に入れて、さらにすります。

─── とろ火で煮る
味噌を鍋に入れたらとろ火で2〜3分煮ます。するとまろやかになり、油っぽさも抜けます。
*味噌は煮立てず、とろ火で煮ましょう。煮ないと味噌の油脂や塩分が消化吸収・過剰を排出しにくいです。


薬味にパセリを入れると、なんともさわやかに。

季節の野菜を具にします。

お味噌汁(4人分)
A 出汁
水 800cc
いりこ(小) 2本
スライス干し椎茸 2〜3枚
乾燥わかめ 小さじ1/2
*干し椎茸か乾燥わかめのどちらかでもよい。
具
季節の自然栽培野菜 2〜5種類
お好みで油揚げや豆腐など
味噌 適量
季節の薬味 パセリや大葉や小ネギ、ゆずの皮、しょうがおろしなど
①Aを鍋に入れる(一晩のおいたほうがおいしいが、直前でもOK)。
②野菜を好みの大きさに切りそろえる。皮はむかずに丸ごと使う。
*じゃがいもは皮の下や芽が有害なことがあるので、取り除く。
◎Point
季節によって具の切り方を変える
夏:小さく切って加熱時間を短くし、からだをあたためすぎないようにする。喉ごしもよい。
冬:大きく切って長く煮て、からだをあたためるようにする。
③火が通りにくい野菜から順に①に入れて煮る。
④一度火をとめる。
⑤小さめのすりばちで味噌をすって滑らかにする。④の温度が少し下がったら、すり鉢に少量を加えて溶き入れ、とろ火で2〜3分煮る(煮立てないように注意)。
⑥椀にうつし、好みの薬味を浮かべる。
家庭の歳時記のように
毎日のお味噌汁をたのしんで
お味噌汁は男女によって好みも違と感じます。
男性は汁が楽しみ。出汁がきちんと取れていると「今日のおいしいね」と
よろこぶ人が多い気がします。
女性と子どもは具沢山の味噌汁が好きですね。
忙しくてお料理が大変でも、お味噌汁だけはぜひつくってみてください。
切り方や具材選びなど、今日を体現してくれる食べものです。
日めくりカレンダーのように、ご家庭ならではの歳時記を楽しんでください。
vol.3は子育てがテーマです。

奥津典子
風土と身体に根ざした台所の理論と料理を発信。
2003年よりオーガニックベースを、07年より福島にて、食堂「ヒトト」(旧Base café)を夫と営む。18歳、12歳、3歳の一男二女の母。2015年より、長崎県雲仙市小浜町に暮らす。
東京・京都・長崎県内を中心に教室と講座や「お母さん会」などで教えている。
オンデマンド講座「子育てのきほん」では、育児と教室業の両方から培った、
実際的で役立つ子育て論・料理を配信中。「台所料理の基本を学ぶ」通信講座を9月から配信予定。ご予約はオーガニックベースのホームページから。
www.organic-base.com
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www.instagram.com/norikookutsu/
撮影:高橋マナミ
編集:天田 泉
デザイン:嶌村美里