第3回 堀家(日本・東京/2013年・秋)
堀道広さん、山元かえさん
道広さんは漫画家、かえさんはイラストレーターと、ともに絵を描く仕事をされている堀さんご夫婦。結婚を機にこの場所に住まいを構えて、約6年経ちます。「僕はそれまでボロボロの花屋さんの空き店舗に住んでいました。タイル張りだったので、もう寒くて寒くて! 8シーズンめに突入して限界を感じたところで結婚を決めたというのもあります(笑)」と道広さんが言えば、「堀さんの漫画は雑誌で見ていて知っていました。さぞ変な人なんだろうと勝手に思いこんでいたんですが、実際に会ったら本人はすごい普通のビジュアルでびっくり(笑)」とかえさんが返します。
近所の方に麦酵母をもらったのがきっかけで始めたパンづくり(道広さんだけ)。「酵母を死なせないように、追われるように焼いている」(かえさん)。「ホームベーカリーのほうがふんわり焼けておいしいんですけどね」(道広さん)。
道広さんの故郷である富山県は、昆布の消費量が日本一。「昆布は北海道産ですけど(笑)。あんまりたくさん実家から送ってくるのでストップかけて、いまはストックがこれしかない」と言いながら、それでも一般家庭にしては豊富な数!
上段は道広さんによるイラストのマグカップ。下段のサザエさんのマグは偶然にも、道広さんとかえさんが独身時代からそれぞれ持っていたもの(!)。やっぱり夫婦です。
この冷蔵庫は結婚したときからのつきあいです。堀家の食生活は、おもにごはんをつくっているかえさんの味が基本になっています。
鹿児島出身であるかえさん、お母様がもともと関東の人ということもあって、鹿児島の味に関東風味が混ざったのがベースの味です。たとえば2年に一度自作する味噌は、麦味噌ベースの大豆との合わせ味噌。料理にはふつうの醤油だけれど、刺身には甘口醤油を使う、といったように。
「実家ではそんなに九州の味で過ごしてはいなかったんです。甘口醤油は父しか使っていなかったし。むしろ、上京して九州物産展に出かけたりするようになってから、好きになりました。実家の味噌が、あるときから麦味噌に変わったのは憶えてます。それまで嫌いだった味噌汁が好きになったので。だから味噌だけは、それ以来ずっと麦味噌です」(かえさん)。
左から、煮物や炒め物をつくるときなどに使う、米麹でできた甘じょっぱい茶うけみそ。ポン酢代わりに、餃子のたれに、ドレッシングにといろいろに使えるなごみ酢。絶対に常備しているという白だし。
味噌とらっきょうはかえさんがかならず手づくりしている。「らっきょうは毎年3kg漬けています。ものすごい食べるので、今年漬けたぶんはもうこれしか残ってない」。
梅酒。ご近所さんで集まって鉄鍋でぐつぐつ煮こんだトマトソース。漆かぶれに効く、かえさんのおばあちゃんの畑で穫ったびわの葉の焼酎漬けも見えます。
「ふたりなのでそんなにパンパンに食材が入っている冷蔵庫でもないんですが、それにしても撮影のために整頓してしまったので(笑)、あまり生活感が出てないかも」とかえさん。でも、もうすぐ冷蔵庫がいっぱいになる日が来るかもしれません。かえさんは現在、妊娠8ヵ月。すぐに、もうひとり家族が加わるからです。
※2013年12月、女の子が誕生しました。
冷蔵庫には世界各地の3Dマグネットコレクションが。「自分で行って買ってきたのより、いただいたもののほうが多いんですけど。この筆使い見てください、全部同じです。きっと中国あたりのひとつの工場でつくってるんですよ(笑)。いつかそこへ行って、世界中のマグネットを買ってきてやろうかと」(道広さん)。「最初は実際に行った場所で買ってくるっていうルールだったのに、いまはネット通販に手を出しています(笑)」(かえさん)。そして冷蔵庫側面には、正面に貼ってもらえなかった「二軍」と呼ばれるマグネットたちが。
山元かえさんのお母さん直伝 豚軟骨の煮物
豚軟骨は、鹿児島ではスーパーなどでふつうに買えますが、東京ではお肉屋さんに予約注文して手に入れます。「食べる前日につくると味がしみておいしいですよ」。
材料
豚軟骨 500〜600g
(7cm大ぶつ切り)
だいこん 1/2本
(1cm強の厚さで半月切り)
里いも 6〜8個
こんにゃく 1袋(200〜300g)
(A)
生姜 1片(千切り)
三温糖 25g
うすくち醤油 30cc
こいくち醤油 30cc
みりん 30cc
白だし 大さじ2
芋焼酎 100cc
茶うけみそ 70g
水 800cc
つくりかた
1. だいこんを下茹でする。
2. 豚軟骨を水で洗い、水から茹でて沸騰したらざるに上げる。再度、水で洗う。
3. 圧力鍋に(A)と豚軟骨を入れて3分加圧、自然に冷ます。
※煮込むだけ味が濃くなるので、この時点では少し味が薄いくらいでだいじょうぶ。
味噌が鍋の下に沈んでいるので、味見するときは混ぜるのがポイントです。
4. 下だいこん、里いも、こんにゃくを入れ、20分ことこと煮る。
5. 翌日、仕上げに10分ほど煮こむ。
※軟骨はほどよくコリコリ感を残して。軟骨ごと食べられます。