コミュニケーション力が育つ、
考える力がつく

学習塾の
ボードゲームタイムから

このところ、じわじわと人気が広まりつつあるボードゲーム。
やればやるほどおもしろくなる奥深さ、ファンタジックで冒険的な世界観など、
魅力はさまざまですが、今新たにコミュニケーション能力や思考力を
育むものとしても注目を集めています。

福岡市内のとある学習塾では毎回クラスの最後に「ボードゲームタイム」があります。
なぜ学習塾でボードゲームを? 
その背景を伺っていくうちに浮かび上がってきたのは
「遊び」と「考える力」の深い相関関係。

教室を主宰する滝大夢先生のお話を通じて、「考える力」を養うために、
ボードゲームにはどんな役割があるのかを、考えていきたいと思います。

撮影:白木世志一
構成・文:松本あかね
写真提供:滝大夢(学び舎こいく)

お楽しみのボードゲームタイム

学習教室『学び舎こいく』のモットーは「考える力を育むこと」。 そのために年長から六年生までの子どもたちが『絵で解く算数文章題』(「どんぐり倶楽部」の糸山泰造先生が提唱する学習法)に取り組んでいます。毎回クラスの後半25分間は恒例の“ボードゲームタイム”。1クラス6人、学校も学年もバラバラの子どもたちが、畳の上で頭を寄せ合っています。 高学年の子どもたちが「うーん」と考え込む傍らで、サイコロで多い目が出た低学年の子から歓声が上がったり。

ボードゲームというと人生ゲームやモノポリーが有名ですが、こいくの皆が遊んでいるのは、1970年代以降にヨーロッパ、特にドイツを中心に開発された近代ボードゲーム。常時数百種類が流通し、新作も続々と生まれているのだとか。

ルールはシンプル。年長や低学年の子どもたちは基本的なゲーム展開を覚えるところから始まります。
「宝石がいっぱい集まった!」、「モンスターフィッシュに食べられちゃった!」
一喜一憂しては大盛り上がり。
一方、高学年はといえば「自分のコマだけでなく、隣のプレイヤーのコマをいかに利用するか」「カードを何枚張ればライバルに競り勝てるか」など、仲間の表情を読み取りつつ、勝負のしどころを探るという具合。

同じ一つのゲームなのに、学年によって楽しみ方はこんなに違う。でもそれぞれに面白く遊べてしまうのがボードゲームのいいところ、と滝先生。
「将棋や囲碁のように完全な実力勝負ではなく、サイコロなど運の要素も含まれているので、年齢差や実力差があっても一緒に遊ぶことができる。皆で楽しくプレイできるようによく考えられているなと思います」

子ども同士の
コミュニケーションツールに

ボードゲームとデジタルゲームの違いを挙げるなら、「子ども同士の向き合い方が違うこと」だと滝先生はいいます。その理由は、たとえ対戦していても視線は画面に注がれたままのデジタルゲームに比べ、ボードゲームは相手の表情を見ながら、存在を感じながら進んでいくから。
「ゲームですからこちらから仕掛けたり、相手の出方を待ったりという勝負の仕方があるわけですが、どこでどう振る舞ったら盛り上がるか、その辺りを考えながらプレイしている子も多いです」
「あまり利己的な態度を前面に出すと、勝ったとしても後味がよくないとか、だんだん理解するようになる。すると今度は緊張感を解きほぐすためにおちゃらけ役を買って出る子がいたりして、そばで見ていると、皆でゲームを作り上げていく様子がよくわかりますね」

負けそうになった小さな子が拗ねてしまう、といったこともほとんどなく、どうやら上の学年の子たちが、それとなくフォローしてあげているよう。
良い雰囲気の中で遊ぶために、それぞれが役割を担い、温かみのある場を作っていく。こうした異年齢の集団の共同作業を通して、コミュニケーション力が育まれていくのでしょうね、と滝先生は話してくれました。

遊びが「考える力」を育む

こいくでは年2回、保護者との面談があります。そのとき必ず滝先生が話すのは 「遊ぶ力が大事ですよ」 ということ。

塾の先生がなぜ遊びにこだわるのか。その背景には以前勤めていた大手進学塾での経験があります。
たとえば机に向かっている時間が長いわりに学力が伸びない、あるいは計算はできるのに、文章題となるとお手上げ、という子どもたち。それも決して少ない数ではありません。
なぜだろう? その疑問は『学び舎こいく』を設立し、糸山泰造先生の「絵で解く算数文章題」を実践する中で解けていくことになります。
文章題では問題を絵に描き現すことを通して、何が問われているかを理解し、求められる答えを導き出していきます。そのときに必要なのは、いろいろな方法を試しながら、独りでじっくりと考える力だといいます。
面談で家庭での過ごし方を聞くうちに気が付いたのは、「よく遊ぶ習慣を持っている子ほど『考える力』がうまく育っているのではないか」 ということでした。

「子どもの思考力は、必ずしも机に向かうことで養成されるわけではありません。小学校時代にいちばん良いのは、自然の中で仲間と遊ぶこと。自然の中にいる子どもは飽きることがなく、どんどん発展させながらいろんな遊び方をする。そうやって工夫したり、試行錯誤したりすることの中から『考える力』が育まれていくのではないかと考えるようになりました」

「遊ぶ力」を目覚めさせるボードゲーム

自然の中で遊ぶのが理想、そうはいっても現在の環境でそれは叶えてあげられない、という方も多いかもしれません。
都会では公園に集まってデジタルゲームに没頭する小学生の姿も見慣れたものになりました。しかし、滝先生は強い危機感を抱いています。
「小さなときからデジタルゲームを与えられ、そればかりで遊んでいるから、自由に遊んでいいよ、といわれときどうしたらいいかわからない。そうした子が増えているのではないでしょうか」
「子どもは放っておけば遊んでいるという時代ではなくなってしまいました。むしろ『遊ぶ力』を鍛えるように、誘導していかなければならないのです」

言い替えれば「遊ぶ」とは「楽しんでやる」こと。楽しいから熱中できる、没頭できる。するといつのまにか上達していたり、成長していたりする。
とことん遊ぶ力がとことん考える力を育んでいく。この好循環が起こればしめたもの。
それにはボードゲームが良いきっかけになると滝先生はいいます。
「デジタルゲームにない楽しさを知ることが、他の遊びの展開も促していくのだと思います」

「子どもが喜んで教室に通うようになりました」

『学び舎こいく』でボードゲームタイムが始まって今年で8年。「年齢や学校の違う友達と一緒に遊ぶ機会ができて嬉しい」「先生、うちの子がすごく面白かった、といっているんですけれど、何ていうゲームなんですか」
こんな保護者の声が後をたちません。
最近ではボードゲームをきっかけに入ってくる子もあるそうで、これには滝先生もびっくり。
「もともとはボードゲームが好きで、子どもたちと遊びたくて始めたこと。それが今の時代に合っていたのかな」
僕くらい子ども向けのボードゲームで遊んでいる大人は日本にいないと思いますよ、と笑う滝先生。今日も子どもたちと同じくらいボードゲームタイムを楽しみにしているのに違いありません。

友達も夢中になる、頭をしっかり使う
皆で遊ぶボードゲーム

ルールがシンプルで、年齢ごとの楽しみ方ができるボードゲーム。
相手の出方を見る、場を読む、タイミングをはかる、勝負どころや引き際を見極める。
楽しんで仲間とプレイするうち、自ずと「考える力」もついてきます。
ボードゲームで遊んでみたいけれど、種類が多くてどれを選んだらいいかわからない
という方のために、「小学生がしっかり頭を使って楽しめる」を基準に滝先生がセレクトしてくれました。

参考までに対象年齢を記載していますが、その年齢の上の学年の子や大人ももちろん楽しめ、ゲームによってはその下の年齢のお子さんも遊べます。滝先生のおすすめの中で絶版になっていたものの代わりに東京・高円寺のボードゲーム専門店「すごろくや」さんにおすすめゲームを推奨していただきました。そちらも合わせてご紹介します。近所のお友達を巻き込んで、ご家族揃って、ボードゲ—ムの世界をお楽しみください。

滝 大夢 先生
福岡市内の学習教室「学び舎こいく」主宰。大手進学塾に勤務後、独立。糸山泰造先生が提唱する『絵で解く算数文章題』を主なテキストに、じっくり考える力を育てる個別学習指導を行う。2014年より家族6人で福岡県糸島市在住。
koiku.pupu.jp/pineapple1

すごろくや
東京・高円寺発、海外製を中心に近代ボードゲーム・カードゲームを「見て・さわって・買える」専門店。知性を発揮しつつ、子どもから大人まで夢中になれる“みんなで遊ぶ”ためのゲームを500種以上取り扱う。全て日本語説明書付き。「プレイ経験、知識も豊富なスタッフがゲーム選びをお手伝いします」
sugorokuya.jp

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