くらすことの本」より
目に見えない「気」の世界に気づく
自分のものさしを作るレッスン

心地がいい、何だか違和感がする。
「気」の世界に気づくはじまりは、そんな小さな感覚。
まずは、自分の内側に耳をすましてみませんか?

身体感覚研究者である、松田恵美子先生に教わります。

※「くらすことの本」48〜54ページに掲載されている内容をウェブマガジンとして公開しています。

わたしたちの日常生活の中で、「気」というものは、様々な場面に溶け込んでいます。

まず日本の文化として、茶道や武道などの道の世界に、型として身体技法が残っています。
例えば、お客様にお茶をお出しするときに、ちょうどいい距離、場所というのがありますよね。
焼き魚は、必ず左に頭を置く。右に置かれると、なんだか気持ちが悪い。
それは地球の磁場と関係する壮大な話で、証明はできないけれど、日本の国が東から太陽がのぼり西に沈む。日本が北半球にあり、左が先というのが、エネルギーレベルの感覚で体に染み込んでいて、それが作法として残っているのだと思います。

日常生活でいうと、例えばいつもはおいしく飲める珈琲が、今日は少ししか飲めないなんてとき。
それは体の自然が、意識以外のところで判断していたりする。

気の通い合いということで言えば、かかってきた電話が誰からなのかがわかったり、今日は子どもの帰りが遅くなるんじゃないかと、ふっと感じたり。
第六感とも言いますが、そんな絶対的な確信ではないけれど、何となくそう思うということ。
こっちが心地いいなとか、なんとなく気持ちが悪いとか、そんな小さな感覚ですが、自分にとってはとても大きな判断に無意識になっていることもあります。

それらに自覚的になっていくうちに、自分のこの感覚は信じられる、認められるというように変わってくる。

物事の判断をするとき、周りからの情報や知識が、全ての拠りどころになってしまいがちな現代人にとって、自分の無意識レベルの判断が、ひとつのものさしになればいいなと思います。

(写真 白木 世志一)

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「気」に気づくレッスン1
雑巾がけ

道場の清めやお寺での掃除の方法で雑巾掛けをし、清めた畳に仰向けになってみると、やっていない畳と比べて、感覚が違うことに気がつくと思います。
清々しく、床と体がすんなり一体となれる感じ。
きちんと四隅を抑えた畳は意識が行き渡り、「自分の場」となるからなんです。
それを昔の人は「結界」と言いました。
畳が家になくても、仕事机やテーブルでも応用できるので、ぜひ試してみてください。

雑巾掛けの基本と準備

  • 雑巾にするには、ホテルや温泉旅館でお土産としてもらう薄手のタオルが一番おすすめ。
  • 清めで使うときは、乾拭き。
  • 雑巾は四つ折りにして使う。

■ 雑巾の表と裏、どっちを使う?

手ぬぐいの表を使った場合と、裏を使った場合。両手を置いてみて感じてみる。
触感だけではなく、どちらが、今日の自分に馴染むかどうかを感じてみてください。
違いがわかりますか?

実は、正解はありません。その判断は、自分のからだに負担がかからない方を選ぶ。
要するに、気が通る方を選びます。
ただ、馴染み方というのにはポイントがあり、ひとつには季節。腰をたてたほうがいい初夏から秋は、表を使う。
冬や春は、お腹を使った方が気が頭に上りづらいので、お腹とつながりやすい裏が馴染みます。
生理中や妊娠中の女性も裏がおすすめ。
日本では、道具を自分のからだと一つにして使う文化があり、自分といかに一体となれるかを大事にします。
今日のあなたと一体となれるのは、表ですか裏ですか?

■ 輪が上?ふちが上?

古い木造の小学校の長い廊下を、端から端まで雑巾掛けをする。
輪を上にしたときとふちを上にしたとき、どちらがスムーズか?そんなシチュエーションを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

指を揃えて雑巾の上に置き、指をスッと伸ばそうとした時。
輪が上の方が、一瞬、息がふっとつまりませんか?
ふちを上に置くと、スーッと指が伸びていく気がして、息もらく。
息が詰まるということは、気が詰まるということなので、体に負担がかかる。そんな風に、息を目安にするとわかりやすいのです。

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雑巾掛けの姿勢、跪座(きざ)のやり方

雑巾掛けの姿勢は跪座(きざ)。
シャキッとしたいときや背骨をたてたいとき、雑巾掛けのときだけではなく、腰が落ちてくる梅雨から秋にかけておすすめの姿勢です。
普段、わたしたちは足の指をほとんど使わないので、慣れるまでこの姿勢を保つのは、少ししんどいかもしれません。
足首や手首は、生殖器と関係が深く、締まっていないといけないところですが、そこを鍛えるのはなかなか難しい。それができるのがこの姿勢で、足首が締まると腰が自然に無理なくたち、きちんと型に入って、体全体がまとまっていきます。

両方のかかとを合わせ、片足ずつ、親指から小指まですべてを、床に押し込むようにつけます。
親指の付け根が床につかないかもしれませんが、頑張って床に突き刺す感じで。

顎を少し引きます。引く時の角度は、後頭部が少し軽く感じる箇所を目安に、頭頂が上からそっと引っ張られている感覚をつかみます。
上半身にきばりがなく、腰が立ち、下半身が締まり、体の軸がたつ跪座。
腰が立つと自然に目に力がでるので、目が開き、見やすくなっているのではないでしょうか。

いよいよ、雑巾掛けをはじめます。

01.

四つ折りにして、雑巾のふちを上に。

02.

跪座になり、両手で拭く。
片手間にせず、全身で、雑巾がけという一つの動作に関わります。
畳の目に添い、一枚の畳の端から端まで四隅をおさえ、拭くときは手から動かしません。

03.

足を軽く開くと、腕が勝手についてくる。

04.

すーっと足を閉じたくなって閉じる。この繰り返しです。雑巾を下におろしたいときは、腰を上に伸ばすとバランスをとろうとして、自然と腕が下におります。そのとき、お尻と踵はできるだけ離さず、跪座のままで。この動作は慣れると流れるように行えますが、まずは、丁寧に。「四角い部屋は丸く掃かない」。そんな原理です。

やってみてどうですか?

そうして清めた畳に、手のひらを上にし仰向けになってみてください。
寝心地はどうでしょう。
わたしが教える身体感覚講座で、他のひとが清めた畳に寝てもらって比べるのですが、他所の畳にいくと、これはちょっと変とか、ここは大好きとか、気の馴染みというのが、畳一枚でも当たり前のように起こります。
自分で清めた畳は、わたしの場という感じがしませんか?

教えてくれた人

松田 恵美子 先生

身体感覚教育研究者。日々の動作や日本文化における型などを感覚からひもとき、日常生活に活かせる知恵や技として活用することで、自分の身体を自分で育む姿勢を指導。大学院大学至善館客員教授。 著書に『身体感覚を磨く12カ月』 (ちくま文庫) など。

▶︎ 「気」に気づくレッスン 2
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