もの、場所、人をつなげ、循環させる
エフスタイル

エフスタイルのプロダクトは、過剰な要素がまったくなく、とてもシンプル。
それだけに、細部のどこをとっても神経が行き届いていて、本当に真剣につくられたものということが伝わってきます。
いったいどうしたら、こんなすばらしい製品が生まれるのか。
エフスタイルのおふたりが、どんな想いでものづくりに携わっているのか。
ショールームを移転、新しい場所で動きだしたばかりの五十嵐恵美さん、星野若菜さんに、お話をうかがってきました。

「私の家」から「みんなの場所」へ

──今回、どういう経緯があってショールームを移転されたのですか?

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星野 私たちのところに、品物を見にこられるお客さんの他に、地域がらみの相談に来られる方も多くなりました。たとえば、都心で活躍していて、地元に帰ってきたいと思っている専門職の方が、地方ではどういう仕事があるのか、といったことなど。また、エフスタイルを訪ねてきてくれる県外のお客さんに新潟を紹介する機会も増えてきました。私たちの仕事は製造の方たちと商品をともに企画して手渡していく問屋業がメインではありますが、新潟で13年仕事を続けてきたことで、さまざまな出会いがあり、ネットワークも生まれ、外と地域のハブのような役割が自然と出てきました。そんなことで、もう少し自分たちから切り離した空間が必要になってきた。前の場所もすごく好きだったんですけど、そういう可能性を広げる場所には適さなかったんです。

五十嵐 二軒長屋の住居+店舗の物件だったので、自分たちの家のような感覚になっていて。仕事場を開放するイベントなども、気持ちの部分でのびのびとできていませんでした。

星野 自分たちからちょっと手放した空間で、そこでなにかが起こっているんですけど、私たちはその風景を、映画を観ているように「よかったなぁ」と感じていて。人と人が自然と出会う、その風景を外側から見ているのが好きなんですね。あとは、二軒長屋で出荷作業をやってたので、急な階段を毎日ものすごいサイズの荷物を持って上り下りをしなくてはならないという物理的な問題もあって。

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五十嵐 いまはいいけれど、長く続けることをいちばんに考えているので。とにかく、このふたりでまわせるマックスで働きやすい環境っていうのをつくりたかったんです。

星野 いちばんミニマムでいい流れで仕事できる空間づくりを第一に、あらためて仕事をゼロから組み立てたんです。ですから、移転は(2012年)10月で、通常の業務は引っ越し後すぐに再開していましたが、お店をオープンしたのは12月末でした。いちばんの心臓部分であるシステムをまず整え、商品をきちんと出荷できる場所をつくって、それから、外側を組み立てていきました。

五十嵐 なるべく仕事を止めないようにしながら。

星野 あと、前の事務所の店舗スペースには商品全部を置ききれないようになってきて、さらに新しいものをっていうのが正直考えられなくなっていました。言うならば、その古い家に自分たちの仕事を合わせていたんです。いま思うと、自分たちのサイズを自分たちの空間で決めちゃっていて、可能性があることも広げないようにセーブしたりと、どんどん保守的になってしまってた。だから、まず自分たちを別の空間に放りこんで、そこから自分たちがどう変わるかを見たかったんです。

“ためていた縁”を循環させる

──実際、新しい場所に移ってみて、どうですか?

星野 ずっとここにいたんじゃないかというくらい、なんの違和感もないです。

五十嵐 そうだね、気持ちいい場所。

星野 向かいが神社で、その反対は公園で。場の空気がピッとしてる。

五十嵐 イベントを何度かやったんですけど、みんなが楽しそうにしていて。外から来た人と新潟の人がつながる場所をつくれたのが、よかったなと思って。

星野 そのようすを、キッチンの窓越しに見ていて。

五十嵐 その後、みなさんがまたどこかでつながっていけば、それがいちばんいい流れだと思っています。

星野 私たちも行商時代、いろんな人にそういうふうにお世話になったんです。そのとき自分たちがもらった、人のつながりの財産みたいなものが、またうまく循環していったらなって。

五十嵐 それをもらいすぎて、ためていて(笑)。なかなか返せずに滞っちゃっていました。でも、集まる場所があると、そこからまたなにか新しい芽が生まれることもあるかもしれないですし。

星野 集まってお茶飲んだり、話したり。それができるようになったのがよかったってまわりの人は言ってくれて、そういう場所をつくれてよかったなって。だから、仕事の規模を大きくしたいとかということよりは、自分たちのなかにたまっている縁をまた、まわしていきたかった。それは、前の場所では限界があったことだったと思います。

地域のパイプとしての役割

──商品をお客さまに届けることも「縁をまわす」ことだとも言えますよね。対象がなんであれ結局、エフスタイルさんは同じことをされてるような気がします。

星野 パイプ掃除? みたいなことですね。

五十嵐 どうやったら、ものが売れて、使ってもらえるのかっていうところから始まっています。滞っている部分を見つけては流したいという想いは、行商時代から変わらない考えかたです。

星野 最初に人のつながりができてから、ものを手渡していくっていうのは、エフスタイルを始めたころに出会った方々に教わったんです。自然なご縁がかたちになることが好きなので、よそから無理やり引っぱってくるより、ちゃんと理由があるつながりのものを、きちんと紹介できたらいいなって。

本当に必要なものとはなにか

_MG_2686──いまおつきあいのあるつくり手さんで、自分たちからアプローチをかけた方はいないそうですね。

星野 なんだか、自然と出会うんです。私たちは、いろんなものをデザインしたいわけじゃなく、つくり手の人たちの誠実な仕事にお金を支払いたいのです。だからたとえば、この生地屋さんのほうが、あの生地屋さんより安くつくってくれるからっていうことで、浮気したりはしない。その工場でその人たちとできる商品を考える。つくりたいものがあってやってるわけではないので。

──その人がつくるものが、大事。

星野 それに、シーズンごとに新作を打ちだしてつくり手に負担をかけるより、みんなで協力しあって定番をつくりつづけていきたい。お客さんが同じものをまた買いたいと思ったときに、買い足せる商品でありたいです。たぶんそう思って買ってくださる方がいて、そういうお客さまとつながっているお店の方がいて、私たちもずっと定番をつくりたいと思ってて、つくり手も飽きずにつくってくれて。その全体で、うちの商品が成り立ってるんですよね。エフスタイルっていう仕事は、関わってくださっているみなさんがいて、成り立っている。だから、1個の形や色がどうこうではなくて、流通の流れまでの全体でエフスタイルの商品なんですね。

五十嵐 商品1個で完結するわけではないから、売りにくいものを売る局面もけっこうあるんですが、そこはチャンレジしたいところで。鍋などの道具類っていうのはそれなりに値段もしますし、使いかたが難しそうなどといったことがあって、衣類などに比べると商品としては動きにくいんです。そこで、展示会では自分たちが実際に使っているものを持っていったりして、使ってみてのよさや注意点をお伝えする。引っ越してきたこの場所も、そういう空間にしたかったんですね。ゆっくりものと向きあって、自分の生活にそれが本当に必要かどうかを、自分自身でじっくり考えられるような、そんな場所にしたかった。

同じものを見て、感じたことを共有する

──知識も経験もなにもないところから、エフスタイルはスタートしています。なのに、仕事のやりかたさえ全然知らなかったわりには(笑)、おふたりははじめから、ぶれていないような印象を受けます。想いが最初から、あっちこっちに行っていない。

星野 アノニマスタジオさんとの本づくりのときには最初、ずっとそこが謎で、だから本をつくりたいって言われました(『エフスタイルの仕事』2008年)。でも、つくっても結局わからなかった(笑)。大前提として、自分がされて嬉しいことはしようと思うし、されて嫌だって思うようなことは商売上でもしたくない。そんなことぐらいしか言えないです。

──じゃあ、おふたりの間で、なにか明確なルールみたいなものはない?

星野 ないです。これはいいとか、あれは気持ちよくないっていうのは、お互いなんとなく共通してありますけどね。私たちは一緒に同じものを見てる。たとえばつくり手の現場に一緒に行って、帰りの道すがら、いろいろしゃべるわけじゃないですか。そうやって同じ経験をして、そのとき感じたことを話しあうことを重ねていくと、やっぱり呼吸って合っていくのかなと思う。働き方研究家の西村佳哲さんの言葉をお借りすると、リンゴといっても、紅玉もあれば、フジもあれば、青いのも、赤いのもある。でも、「あのとき食べた、あのリンゴ」って言うと、その味はふたりで共有してるから、すぐにわかりあえるんです。だから、ふたりで感じたことを話しあうってことは、お互い意識しています。でも、持ち味はそれぞれ違うので。

──同じなら、ふたりいらないですもんね(笑)。

星野 そうなんです。ただやっぱり、ほんとにそれが必要なのかどうかっていうのはよく考えます。私たちが暮らしてるなかで必要じゃないと思うものはつくらない。だから、つくりだしていくものはやっぱり絞られちゃう。たぶん、自分たちがいちばん厳しいお客さんなんだと思うんですよね。

(2013年 春)

エフスタイル
ともに新潟生まれの五十嵐恵美と星野若菜のふたりにより、2001年にスタート。「製造以外で商品が流通するまでに必要なことはすべてやってみる」をモットーに、デザイン提案から販路の開拓まで一貫して請け負っている。おもな仕事に、山形の月山緞通とのコラボレートによるマットシリーズ、新潟の伝統工芸品シナ織りのバッグなど。伝統産業と「いま」を結び、使い手へと商品を届けている。著書に『エフスタイルの仕事』など。
http://www.fstyle-web.net

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