天然素材の丈夫な糸だからこそできる、
yourwearのお直しサービスのこと

yourwearには、ニットのお直しサービスがあります。
長年の使用でニットキャップが伸びてしまった、ストールを引っ掛けてしまった、
虫に食われて穴が空いてしまった、なんてことがあっても、
もう残念な思いをしなくてもいいんです。

スタンダードなものを作り続ける姿勢と
手作業だからこそできる、お直しサービス

この日、虫食いで穴の空いたストールの修理の依頼があった。孔代さんは棚から修理の依頼があったストールと同じ糸を取り出して、ダーニングと呼ばれる手法で繕っていく。

穴の部分に糸を縦横に交互にくぐらせていく、ダーニング。同じ糸を使うからお直しした箇所も色が変わらず、自然な仕上がりに。これまで使用した糸を取ってあるからこそできるサービス。

「yourwearで使っている天然素材の糸は丈夫なので、虫食いや伸びてしまった場合でも、お直しをすれば長くご使用していただける場合がほとんどです。このお直しサービスは、私たちがほとんどの工程を手作業でやっていることに加えて、毎年目新しいものをどんどんつくるのではなくて、あまり糸を変えずにスタンダードなものを作り続けるという製作スタイルだからこそできること。自分たちが手をかけて作ったニット製品を長く身につけていただけたらうれしいですね」と孔代さん。

工房の棚。これまで使ってきた糸が並ぶ。お直しが可能なのも、こうして糸を一つ一つ取ってあるから。

yourwear(「あなたの衣服」)というブランド名のとおり、着る人の個性を引き出すようなシンプルで余白のあるデザインは、年齢を重ねてもずっと好きでいられるもの。お気に入りを長年愛用できるのは、使い手にとっても幸せなことだ。

ガラス棚には製品の全サンプルがいつでも取り出せるように置いてあった。どれも年を重ねるごとに使い手の体になじんでいくニットだ。

ニット製品のお手入れについても聞いてみた。
孔代さん「虫食いの原因はほとんどが汗などの皮脂です。シーズンが終わって長期間しまうときにきちんと洗って防虫剤を入れておけば、虫食いは防げます。ウールは水に弱いのでドライクリーニングが基本です。カシミヤやアルパカは手洗いができますよ。ブラシは繊維が傷むのでかけません。家庭用のアイロンでスチームをあてると、編み目が空気を含んでふっくらします。」

左から、ラムウールニットキャップ/ベージュ(12,000円)、アルパカジャカードニットキャップ/キャメル×チャコールグレー(14,000円)、ベビーアルパカプレーンストール/チャコールグレー(12,000円)

温かく、柔らかいニット工房の
しなやかな芯の強さ

製品そのものはもちろんだが、ものづくりの流れそのものも、とてもよく「デザインされた」もののように感じられる。「故郷の大館に戻る前からこういうものづくりのスタイルをイメージされていたのですか?」と尋ねると、「いえ、全然」と微笑む。

それぞれに得意分野を持った編み手・作り手の分業によって、一つ一つの製品が手作業で仕上げられていく。

孔代さん「故郷に居を移すと決めたのは、シンプルに自分の人生のタイミングだったと思います。それまで住んできた都市でそのまま年齢を重ねていく、そのイメージがどうしてもできなかった。そしたら故郷でものづくりをするという選択肢が浮かんで。こっちに帰ってくるまで、どんなかたちでyourwearを続けるのかあまり考えなかったけれど、『まぁ、なんとかなるだろう』って。これまでもそうやってきたわけだし。」

孔代さん「故郷に帰ってきて、実家の近くの戸建てに住み始めました。そこで、お向かいに住んでいた政子さんに『だれか編み物が得意な人がいたら紹介してほしい』ってお願いして。そこからは本当に知り合いづてで編み手さんを探していきました。大館には編み物が好きという人が少なからずいたことは幸いでした。

手仕事のいいところはその技術を高めていけるところ。分業することで、一人では気づけない細部にまで目が届くし、得意分野をお互いに生かしていいものづくりができるサイクルがやりながらできあがってきた感じですね。

いつも、どこにいても『もっとこうだったらいいな』とか『こういうものがあったらいいな』っていうことを考えています。それは場所が変わっても変わらない。」

こともなげに語る孔代さんには、柔らかくしなやかな芯の強さがあるように思えてならなかった。

佐藤孔代(さとう・みちよ)
秋田県大館市出身。服飾専門学校を経て東京のアパレルメーカーに就職し、ニット部門で商品企画などを行う。2005年に友人と立ち上げたアパレルブランド「YUKI」を経て、2010年ニットブランド「yourwear」をスタート。2014年春に故郷の大館に戻り、地元の人たちとの共同作業によるニット製品の製作に取り組む。

前編「yourwear 佐藤 孔代さん 北国・秋田の温かなニット 雪深い北東北からの、手仕事の贈り物」へ

写真 船橋陽馬
取材・文 三谷葵