この革で何つくろう?
革小物ブランドsafujiが革ととことん向き合うわけ、
そしてお手入れ篇

前回は「混んでいるレジでもスマートに支払いを済ませたい」というつくり手自身の「困った」から生まれた、「ミニ長財布」と「こさいふL」をご紹介しました。
今回は、safujiの革と向き合うものづくりについて、そして革小物のお手入れ法をお送りします。

並んで店頭に立つ、safujiの沢藤勉さんと加奈子さん。

safujiのショップはJR中央線東小金井駅の高架下、5つの店舗が併設された「アトリエテンポ」内にあります。
つくり手は沢藤勉さんと加奈子さん。制作は東京、三鷹市にある住居兼工房で、スタッフの手を借りつつ、全製品をつくっています。

工房にはさまざまなオリジナルの抜き型が。これを使ってパーツを裁断。

ポンチで小さな穴を開けてから手縫いをする。

手縫いセット。昔は馬のアキレス腱が使われていたそう。今はロウ引きした糸を使って。

一枚の革からはじまる

「革には表情がある」と沢藤さんはいいます。
いつも制作の一番はじめにするのは、革を広げてみること。
safujiで使うのは主にイタリア製。「つるっとしたものより、表情があるものが好きだから」、表面を傷つける特別な加工が施された革を使っています。

表情があるものを探すうちに行き着いた、イタリア製の革。

皮革製品に用いられるのは食用の牛のもので、いわば副産物。
なめし、染色、オイルを含ませる工程を経て、しなやかさ、丈夫が加わります。私たちが馴染んでいる香ばしい革の香りも、このプロセスから生まれるものだそう。

ただ、このように手をかけたとしても、固体によってコンディションが大きく変わるのは避けられません。成長具合や季節によっても大きさや厚みが異なる上、シワ、特に傷などは生きている間につくこともあるからです。

大きな工場では大型プレス機でガシャンと一発で裁断できるが、手作業なので粗型で裁つところから。「その分無駄が出るのが申し訳ない」

革は使い切る

「僕が考えるいい革というのは、繊維が詰まっていてしなやかで、適度にオイルを含んでいるもの。どんなに表情がよくても、乾燥してパサついていたりするといけないですし。でもどんな革かは広げてみないとわからない。」

裁断前の革は、イタリア製なら胴体の真ん中から肩とお尻に分けた、長さ2メートルほどの大きなもの。
制作のなかでいちばん難しいのは、コンディションを見極め、一枚の革から必要なパーツをいかに無駄なく取っていくかを判断することだといいます。
財布には柔らかすぎるとしたらバッグに、傷があればポケットの裏地や小さなパーツに。とことん使い切るのが信条。「余らせるのは、生きていたものに対して失礼なことですから」

財布のベルト部分を型で抜く。ギリギリまで間隔を詰めて取り切る。

「漉き」を施した後の革。新しいプロダクトが、もうすぐ生まれるかもしれない。

革を使ってできることはたくさんある

「これを見てみてください」
沢藤さんが次に広げたのは、両面裏地のような一枚の革。

革の加工には、使うものによって厚みを揃える「漉き」の工程があります。
梳きを終えた革は通常廃棄されますが、加工するには十分な厚みと大きさを備えているものも。
「リサイクルレザー」といって、革を粉砕して樹脂でつなげた製品もあるけれど、漉いた後の革ならそのまま使うことができる。それが見過ごされているのはもったいないと沢藤さん。「まだアイデア段階ですが、これを使ったプロダクトを提案してみたい。価格も下げられるので、もっとラフに、気軽に使ってもらえるものができたら、革のプロダクトの世界ももっと広がると思うんです」

大学で機械工学を学びながら、革に惹かれ、在学中からメーカーで働き始めた沢藤さん。独立して夫婦でブランドを創立してからもうすぐ9年。

現在はバッグ、財布を中心に手掛け、全国のイベントへ出張することも増えたそう。忙しさが増す一方で、「頭のなかはつくりたいものであふれている」。
「かといって外注したり、スタッフをたくさん抱えてというのは、僕らには違う気がする。これまではがむしゃらにやってきたけれど、次の10年をどうするか……、そろそろ考える時期にきているのかな」

工房の壁に、新しいバッグのスケッチが留められていました。
シンプルな鉛筆の線からは、わくわくする気持ちが伝わってくるよう。
それはきっと、革に惹かれ、ひとり東急ハンズに通い、革を眺めさわり始めたときからかわらない沢藤さんの原動力。
プロダクトを通じて、革の新しい魅力を、たくさんの人の手の中で実感してもらうために。
safujiの新しいステージが始まるのも、もうすぐかもしれません。

工房には、デザインのラフがあちこちに。

お手入れについて

革靴は定期的に磨くことが必須。では革のお財布やバッグのお手入れ法は? 加奈子さんに教えてもらいました。

最初はこの2つから。IKEAのクロスと豚毛ブラシ。

◎ 新品の場合

「新品なら、まずは使うことが一番のお手入れです」と加奈子さん。
触ったり、擦れたりするうちに、革に含まれているオイルが全体に馴染んでいくのだそう。もししばらく使わないという場合は、時々ブラッシングするのがおすすめ。ブラシがなければ、木綿のキッチンクロスなどでさっと表面をさするだけでも良いそうです。

傷がついてしまったときも、ブラッシングが効果的。
「革はよく見ると、表面が細かく毛羽立っています。ブラッシングすると毛の流れが整うので目立たなくなる。傷だけをこすると、そこだけ毛羽が取れてしまうので、全体をブラッシングするのがポイントです」

もし濡れてしまったら?
「乾いた布で軽くぬぐって自然乾燥。それだけで跡がほとんどわからなくなります。慌てて強くこすると、シミが定着してしまうので避けてください」

◎ 次のステップ、ツヤが出てきたら

「私たちが使っている革は、使い続けていれば特別なケアは必要ありませんが、もし保湿のためにオイルやクリームを使用する場合は、ツヤが出始めてから」
『ラナパー レザートリートメント』はミツロウ、ホホバオイルが主成分で、手に入りやすいのでおすすめです。

こんなふうにツヤが出てきたら、保湿のためにオイルやクリームを使っても。

「くらすこと おかあさんとこども」で取り扱いのあるkinariバッグは、長女・きなりちゃんにつくってあげたちいさなポシェットが始まりです。こちらはホンモノのkinariバッグ。ご本人が学校へ行っている間、工房のすみっこでお留守番していました。

前編「safujiの小さなお財布シリーズから、「ミニ長財布」と「こさいふL」の使い方」へ

写真 米谷享
構成・文 松本あかね

safuji

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