季節のレクチュール#4・秋 その3
Saison de la Lecture#4 – automne – 03

構成・文 松本 あかね
写真 有賀 傑

※レクチュールlecture:(仏)古くはレッスン、講話という意味を持つ言葉

「季節のなかのわたし」をテーマに、セラピストの小川純一さんが3回にわたり、
毎日のなかにとりいれたい、心と体のためのひとときを提案します。

秋の夜のすごし方 〜眠り〜

睡眠は、魂と肉体の解放の時間。
心地よいと感じるものに囲まれて、心をきれいにしてから休みましょう。

アンティークの
パジャマ

皆さんは、どんなものを着て眠りについていますか。
僕はほぼ一年中、リネンのシャツワンピース。
白と黒のヨーロッパの貴族が着ていたというアンティークのもので、パートナーがプレゼントしてくれました。

これを着て眠ると、不思議と心が落ち着くのです。
初めて触れたのに、どこか馴染みがあるものと出合うと、僕は過去世について思いを巡らします。
私たちは、今世の部分だけで成り立っているのではなくて、これまでの生のたくさんの積み重ねからできていています。
思い出せるところを超えた範囲にも、記憶というのは残っているもの。
過去世で身につけていたものや、使っていたものには必ず心惹かれるものがあるのです。

ものから浮かんでくる、
過去世のひみつ

とはいえ、自分がどんなものに惹かれるのか、
頭で考えようとすると、よくわからなくなってしまいがち。
現に僕が「過去世にヨーロッパが多いんですよ」といっても、
それを実際に証明する何かがある訳でもなく。

でも、人間の脳って不思議。人間の心、かな。
魂には全部記憶があって、過去世でやっていたことは、今世でもできたりするし。その反対も然り。

先日、こんなことがありました。
お菓子を焼くとき、ずっと菜種油や米油を使ってきたのですが、ふと伝統的なバター菓子の本を開いてみたら、すごく魂がわきたつ感じがしたのです。
バターを練ったり粉を混ぜたりしていると、「僕これ、やったことがある」という感覚が強くして。
食べてくれた友人が「純一さんはたぶん過去世で、教会でお菓子作りを担当していた人だったのかな?」と言ってくれて、ああ、きっとそうだろう、と感じました。

人を癒すことができる人は過去世でお医者さんだったことがあったり、 イタリアンが好きな人はイタリアに生まれたことが多かったり。
それをしたとき、心からわくわくして、初めてなのに上手にできたりする場合、それは過去世で関わりのあったことなのかもしれないのです。
こういうささいなことに、自分の遥かかなたの記憶のヒントがいっぱい隠されているところが、生活の面白いところだなと思います。

何かに惹かれるとき、難しく考えないで、何か理由があって
惹かれているんだと、素直に受け取ってみてください。
そして、自分の周りをよく見まわしてみて。
これまで触れてきたもの、見てきたものが、全部自分の答えになっていたりするから。

ものは、自然と集まってくるものだから、持ちすぎてしまうと、よくわからなくもなることも。
適切な量で持っていると、自ずと自分の魂のルーツもわかってくる。
自分が何を求めているかも、よくわかってくると思います。

一瞬で眠りに落ちる
アイピロー

友人の布作家、磯部祥子さんに作ってもらったアイピローを愛用しています。
中袋の中はハーブと小豆。

セージ入りのアイピローは、イライラ、クサクサしているとき。
眠る前に頭の中に何かがこびりついて離れないときに。
ラベンダー入りのアイピローはリラックスしたいな、というときに。
2つの香りをその時の気分で使い分けています。

まぶたの上に置くと、すぐに自分の世界に入れます。
夜は目が疲れているのか、小豆の重みが心地よく感じられて。
周りが遮断される感覚で、ほんのりハーブの香りとともに心穏やかに眠りに入ります。

秋の夜、瞑想で
心をきれいに

心がざわつく秋の夜は、眠りに就く前に夜風にあたって深呼吸をし、
体中の空気を入れ替えましょう。
そのあと、静かに瞑想をすることをお薦めします。

ただ、目を閉じて座る

瞑想は、習わないとできないものではありません。
僕も最初は見よう見まねで始めました。
いくら習ったとしても、結局は「自分と向き合う」こと。
自分の心との向き合い方は、毎日繰り返してやってみて、つかんでいくしかありません。

目を閉じて、一日のことを静かに思い返してください。椅子に座ってでもよいのです。
椅子の背にもたれて、ふーっと息を吐く。
夜の瞑想は、リラックスが目的です。
印を結び、姿勢を正すと瞑想がより深くなることは確かですが、
形を気にするより、まずは目を閉じることから始めてみましょう。

まずは雑念を受け容れる

行きたくない場所に行った。言いたくないことを言った。
人に会いすぎた。活動が多かったり、忙しかった日は、気が落ち着かず、心も波打って雑念が出やすいもの。

瞑想は、お風呂に入ったり、ハミガキをして体をきれいにするのと同じように、心をきれいにすること。
最初から「無」にならないといけない、という訳ではないのです。

いわゆる“雑念”も、日中たくさん活動したら出てくるのは当たり前。
目を閉じて静かにしていたら、心のざわつきに気がつくものなのです。
その忙しくなりすぎていた心を感じる時間をすぎていかないと、その先の静寂は訪れません。
忙しかった心を感じる段階で、ああ雑念が出てしまったとやめてしまう方が多いのですが、そこはプロセスと受け止めて、ぜひ続けてほしいですね。

時を忘れる瞬間

全力疾走してハアハア息切れしているのに、どんどん動き出したりしたら息切れしたまま。
けれど、ちょっと体を休めたら、スッと息も鎮まってくるように、目を閉じて、雑念まみれでも、
いろんなこと、しょうもないことがいっぱい出てきても、それでも気持ちを鎮めて、鎮めてやっていくと、自然と整ってくるのです、心が。

だんだん静かになってきて、呼吸も整ってきて、
そしたらふっと時間を忘れているときが出てきて。それがいわゆる瞑想状態です。

手仕事や編みものをしていたら、気がついたら1時間たっていたということ、ありますよね。
瞑想ってそのようなものなのです。

瞑想=ぼぉっと、すること

簡単にいうと瞑想は、「ぼぉっとすること」です。
リラックスして、肩の力を抜いて、気づいたら20分たってた、という状態。
たまにするのでも意味はあるけれど、1分でもいいから毎日続けることが大切。
目を閉じて、ただ座る。
ストレスは外で発散するという方が多いけれど、内側で発散するのがいいですから。

秋の夜の瞑想はとても良い習慣だと思います。

おわりに

目に見えないところに、希望がある。
目に見えないところに、真実がある。
僕はそう思っている。

季節って目に見えないところでいろんな仕組みが働いている。
春になると新芽が出て花が咲いて、夏になると植物がどんどん育っていって、酸素も濃くなっていく。
目に見えないところでいろんな働きが進行していて
「すごいな」って思う。

神様とか、そんな大きな力が、自分の体の中にも心の中にも、この地球にも
宇宙にもあって、その何かに守られながら、ずーっと生きているんだな、と。
宇宙、に守られながら生きているんだな、と。
山のスコレーで暮らして、
大きな窓から庭や空が変わりゆくのを眺めていると、
なんかすごいな、この地球というステージは、
と思える。

宇宙というか、季節の流れとか、地球がどういうリズムを持っているかを知って、
自分もそこに流れながら生きていくと、なんだそういうことだったのか、と思うことが多い。
秋に心がざわつくのも、悪いことじゃない。
季節の流れの中に起こることでネガティブなものはひとつもなくて、全部必要だから起きているから。
季節はそれを教えてくれるから。

「季節のレクチュール」では、ただただその季節の意味を伝えたかった。
ただただ季節の美しさとか、自分の体を季節に合わせていくすごさとか。
仕組みというか、そういうことを知ったらもっと季節を愛せて、地球を愛せて、自分も愛せるって思うから。
そういうレクチュールにしたかった。

自然の中に身を置くことは難しくても、季節を感じてそのリズムに合わせることは都会でもできるから。
そんなふうにあなたの毎日の中でレクチュールを使ってもらえたら、嬉しい。

JUNICHI OGAWA

JUNICHI OGAWA
セラピスト 大阪出身 鎌倉在住
都内でのケータリング活動を経て、東日本大震災をきっかけにセラピストの道へ。現在は自宅兼アトリエ「yama no schole(山のスコレー)」を鎌倉に構える。スピリチュアルやハーブセラピー、自然療法などのホリスティックな観点から、暮らしと健康、料理の提案をする。「MATRICARIA」(マトリカリア)としてハーブティと焼き菓子の活動も行う。小冊子「MEME spirit&life magazine」を不定期で発行。
junichiogawa.com

MEME

「本当の私と出会う」をテーマに、スピリチュアルな感性をもっと身近に感じるスピリット&ライフマガジン『MEME(ミーム)』。カウンセラーであり、アーティストである小川純一さんが自ら編集長になって立ち上げた小さな冊子です。

MEME spirit&life magazine issue #01
MEME spirit&life magazine issue #02

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