シュタイナーのお手当て
その1 〜カモミールのお手当て

開催日:2015年1月27日
教えてくれる人:アントロポゾフィー看護スペシャリスト 村上典子

シュタイナーのお手当て もくじ

ある日のこと。
くらすことの店にほど近い、とある場所に、
おんぶやだっこで小さな子どもを連れたかあさんたちが集まってきました。
じつは、かあさんたちには気になることがありました。

この子はお腹を下しやすい。乾燥に弱くてよく咳こむ。すぐ熱を出す。
病院に行くほどではないけれど、市販の薬を使うのはまだ早い気がする。
かといって辛そうなのに何もしてあげられないのはかわいそう。
こんなときってどうしたらいいんだろう・・

そんな思いを胸に抱いたかあさんたちが向かった先は、
シュタイナーが創始した医学の中の、お手当を学ぶ場。
1回目のテーマは「カモミールのお手当て」。
さあ、どんなお話が聴けるのでしょう。

シュタイナーとの出会い〜典子さんの自己紹介から

開口一番、「私のことは皆さんより少しだけ先輩のお母さん、と思ってくださいね」と典子さん。
ほがらかな雰囲気で講座は始まりました。
初のお話は、ご自身とシュタイナーの世界との出会いについて。
2歳と4歳の息子さんを連れて家族で渡ったアメリカで、たまたまご主人がみつけた『philosophy of freedom』という看板。
学校かもね、と扉を叩いてみた所がシュタイナー学校だったのだそう。
そこでふたりの息子さんが幼稚園、学校へと通うかたわら、典子さん自身もシュタイナーの思想について学び始めました。

「そのとき以来、私はルドルフ・シュタイナーという人が系統立てた世界観・人間観に興味をもち続けているのです。
私自身の言葉でいうと『世界やものの成り立ち、あり方を見る方法』といったらいいかな。
現在はシュタイナーの思想に基づく看護について、お伝えする立場にいます」。

ハーブの並ぶ看護室

現在スペシャリストとして看護に携わる典子さん。
「私たちが携わっているのはアントロポゾフィー医療の現場で実践されている看護です。
そこで浮かぶのは、シュタイナーの看護って、どんなことをするの? という疑問。

アントロポゾフィー医学
アントロポゾフィー医学はルドルフ・シュタイナーの思想(「人間の叡智」という意味を持ち「人智学」と訳されます)をもとにオランダ人の女医イタ・ヴェーグマンら数人の医師と共に創始した医学。
通常の現代医学に加えて、シュタイナーの思想に基づいた世界観、人間観を医療に生かします。

アントロポゾフィー医療における看護の特徴のひとつは、薬草、つまりハーブを使うこと。
飲用はもちろん、ハーブのお茶やオイルで湿布をしたり、ハーブのオイルを使ってマッサージをしたり、
日々の看護の中に薬草のケアが取り入れられています。
典子さん曰く、「ヨーロッパのアントロポゾフィーの病院では、看護室にハーブが並んでいたり、
湿布に使う柔らかい布がかけてあったりして、普通のおうちのお台所みたいな雰囲気なんですよ」。
今日習うのは、その中のカモミールのお茶を使ったお手当です。

カモミールはりんごのような甘い香りのする薬草で、ヨーロッパでは昔から使われている家庭薬のひとつ。
お腹が痛いときやよく眠れないときにハーブティーとしてよく飲まれています。
「カモミールの花は芯が濃い黄色で、お日さまに向かって伸びていくようなイメージがありますが、
この黄色の部分に硫黄に似た働きをする成分が含まれていて、お腹を温める作用があるのです。
お日さまの力がこの黄色の部分に凝縮されているんですね」と典子さん。
お子さんをお膝に、熱心にメモをとるお母さんたち。さっそくデモンストレーションが始まります。

カモミールの湿布

まず「湿布法」とはどんなお手当てでしょう。
百科事典を引くと

〈湿布法〉
冷水または高温湯およびこれらに薬剤を混和したものを浸した布を病巣患部にはり、適宜交換するもの。
必要に応じて保温および乾燥防止のためその上を油紙、ゴム、タオルなどでおおう
(出典:株式会社日立ソリューションズ・クリエイト『百科事典マイペディア』)

とあります。

ここで紹介されたのは、熱いカモミールティーにガーゼを浸し、きつく絞ったものをお腹にあて、
保温のためにウールの布をぐるぐる巻くという方法。

「お腹が痛いときや軽い下痢のとき、あるいは、なんとなく元気がなくて活力がないというときにもいいですね。
子どもが興奮しすぎて眠れない、というときにも試してみてください」

参加者の方の中には湿布法に馴染みがなく、「どうして飲んだりお風呂に入れるのでなくて、湿布をするのですか?」という質問も。
典子さんのお答えは、「飲んでもいいんですよ。中から温めるということも大事ですから。
湿布を用いるのは、外(皮膚)から作用させて調子を整えるため。
カモミールを濃く煮出してお風呂に入れるのも気持ちいいですね。
でも、お腹の具合が悪いときには、お腹に直接湿布でお手当する意味があると思います」。

デモンストレーションのモデルになってくださったお母さんは、
「家でこんにゃく湿布をすることがあるのですが、カモミールの湿布はもっとほんわかと優しい温かさの湿布でした。
ぎゅっと絞ってあるせいか、濡れたものがお腹にあるという冷たさは全くなかったです。
香り自体に癒されるような気がしました。
植物の力はすごいなぁとあらためて感じました」
と、ふわっと肩の力が抜けた表情でお話くださいました。

次は実践編。空気が乾くこの季節にぴったりの「カモミールティーの蒸気吸入法」をご紹介します。

実践編

カモミールティーの吸入

とても簡単なカモミールティーの吸入法をご紹介します。
鼻風邪や風邪のひき始め、乾燥して湿気が欲しい時などに。

【対応症状】
鼻水、鼻風邪、風邪のひきはじめ
空気の乾燥が気になるとき

【用意するもの】
カモミール
ボウル(マグカップでもよい)、バスタオル

【手順】
①ボウルにハーブティーを入れます。
ボウルがお湯で熱くなるので触らないように気をつけて!ボウルの周りにタオルを巻くなど、工夫してください。

②顔を近づけて頭からバスタオルでテントのように覆います。
こうするとテントの中に蒸気がこもります。刺激があるので、 目は閉じていた方がいいですね、刺激があるので。蒸気で濡れるので終わった後はしっかり顔を拭いてください。子どもと一緒に入ると、子どもも喜びますね。マグカップの大きなものでも十分なので、 やってみるといいと思います。中はいい香りでいっぱい。包みこまれるようで気持ちがよいですよ。これがハーブティーの蒸気吸入法です。

質問の時間

カモミールは普通に売っているものでいいですか?
ティーバッグでは効果が弱いでしょうか?

– 自然食品屋さんに売っているような市販のもので大丈夫です。お庭で育てたものなど生のお花を使う場合は、花だけを摘んで乾燥させて使ってください。
ティーパックになっているものは、効果の面でお勧めできません。寝ているこどもたちの枕元に、いい香りとともにこんなふうにちょっとお花が見えたるすることは、雰囲気をつくるというか、看護の空間を作るためにもお勧めです。

ハーブの代わりにエッセンシャルオイルでも?

– 子どもの場合は、エッセンシャルオイルは刺激が強いのでお勧めしません。ハーブの方がいいです。例えば大人なら、喉が痛いときや喉がからんだときにユーカリのエッセンシャルオイルを使ってもよいのですが、その時でも刺激が強いので、ボウルやマグカップに張ったお湯に1適で十分。(注!喘息の時は禁忌です。)
子どもにユーカリは強いので、お母さんがご自身のためにするときは、部屋の隅で行なってくださいね。

今日はカモミールを使ったお手当てを二つ紹介していただきました。
「じつは子どもたちには温めたタオルやただの水蒸気でも十分なんです。
お母さんが『してしてくれた』という行為自体が子どもにとっては最高のお手当てなんですね。
お母さんの手の力って絶対だから。それにプラスして植物の力に助けてもらう、そんな気持ちでトライしてみてください」と典子さん。

加えて気をつけたいのは、「子どもに我慢をさせすぎないこと。
どの段階で病院へ行くか、薬を使うかの見極めは重要です。
西洋医学の治療に加えて、家庭でできるこうしたお手当てを併用する、そういうスタンスで看病に当たられることをお勧めします。

村上典子
大学病院で看護師として勤務後、家族と共に渡米。シュタイナー教育基礎を学ぶ。帰国後、シュタイナー美術教育を学び、現在は子どものためのクラスや児童精神科、認知症デイサービスなどで絵のクラスを持つ。2004-08年 IPMT、2009-13年国際アントロポゾフィー看護ゼミナールに参加し、アントロポゾフィー看護スペシャリスト取得。ほりクリニックに勤務。アントロポゾフィー看護を学ぶ看護職の会 会員。
共著『シュタイナーのアントロポゾフィー医学』(2017年2月刊/ビイング・ネット・プレス)では「看護」の章を執筆

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「植物を食して健康で美しく」をコンセプトに、日常を少し特別に彩り、こころとからだが贅沢を感じるようなハーブティーを提案。ハーブをたんなる健康的な食品として捉えるのではなく、五感を刺激するその美しさやエネルギーも感じてほしいという観点から、フラワーアレンジをするようにブレンドしています。

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