くしまけんじのしあわせ巡るごはんのつくり方 vol.1
僕の料理の原点は「お母さんの味」かもしれないと思う

構成・文 松本あかね
写真 有賀傑

家族のために、日々つくるごはん。
ルーティーンのようでいて、家族の核をつくる
いちばん大切な仕事かもしれません。
新鮮な野菜をつかった、心にも体にも優しいイタリア料理が人気の
「食堂くしま」。オーナーシェフのくしまけんじさんに、
料理をもっと楽しく、きらめくものにするヒントを
3回にわたってうかがいました。

くしまけんじ
料理家。東京・西荻窪にある「食堂くしま」店主。旬の野菜をふんだんに使った大胆な食材の組み合わせと、繊細なお料理が評判。体に優しいイタリア料理を提供し、人気を集める。2015年5月『食堂くしまのレシピ帖 僕のしあわせなごはん 野菜中心イタリア家庭料理』を刊行し、現在、執筆活動、レシピの提供、料理教室など、活躍の場も広げている。
食堂くしま:〒167-0042 東京都杉並区西荻北5丁目26-17 万代荘1階
shokudoukushima.com

野菜ひとつでつくるシンプルな料理が、
これまで食べたことのない、野菜そのものの味がする。
見たことのない素材の組み合わせに驚く。
素材の色から発想された、絵画のようなひと皿にうっとりする。

東京の師のもとで、そしてイタリアで出会った家庭料理は、料理の世界の新しい扉を僕に開いてくれました。
僕が皆さんに食べてもらいたいなと思うのは、扉の向こうで見つけた料理であるのと同時に、心おきなくたっぷり食べられて、でも胃に軽くて、心地よく満たされる、毎日でも食べたい料理。

それは言い換えれば、お母さんの料理にも通じること。
僕がお母さんの料理をすごいと思うのは、家族を思ってつくるから。
お母さんのごはんが安心できる、なつかしくてほっとする味なのは、つくる気持ちの根底に、家族への思いが入っているからだと思います。

しあわせはごはんで巡る

僕は料理にはつくる人のそのときの気持ち、エネルギーが入ると思っています。僕はお母さんじゃないけれど、食べた人がどこか安心できる料理をつくりたい。食べた人がおいしいといってくれて、元気に、健康になってくれたら。そんな気持ちが根底にあれば、そのひと皿は食べた人をしあわせにすると思う。「しあわせ」はそうやって料理を介して人から人へ巡っていくもの。そしてつくる人をもまたしあわせにしてくれるものだと思う。

ごはんの可能性を信じる人へ

とはいえ毎日のことだから、「またごはん?」、「何をつくればいいの?」
という気持ちになることもあるでしょう。
僕の母もそんなふうに感じているのかな? と思えることが時々ありました。

僕は料理を仕事にして7年になるけれど、
家族のために三度三度料理をつくっているお母さんに比べたら、
料理をしている回数はそんなに多くない。
お母さんたちの方がよっぽど料理されているくらいだと思います。
だから皆さんの「こうしたら、こうなる」という経験の蓄積はとても大きいはず。
ただ、何かうまくいかなかったとき、「まいっか」と思うか、「切り方こうした方がよかったな」、
「先に炒めておいて後から加えればよかったな」と思うかが、
次につながっていくかどうかの分かれ目だと思うんです。

もし皆さんの中に「もっとこういう料理ができたらいいな」と思っている方がいたら、
この連載をきっかけに、たまにでいいから新鮮な気持ちで料理ができたり(「最近こういう気持ち、忘れてたわ」)、
ちょっとでいいから工夫してもらえたりしたら(「今日はこうしてみよう」)、すごく嬉しいです。

楽しく料理する

つくったときの気持ちやエネルギーが入るものだとしたら、料理はやっぱり穏やかな気持ちで楽しくするのがいちばん。
料理を「楽しいこと」にするためには、どんな方法があると思いますか? 僕にとっては「感覚を使って料理する」ことがそう。

究極的には料理ってつくる人のもの。好きなように、自分の感覚を信じてつくるもの。そうは言っても、「好きなように」と言われても困る、という声を聞くことも。そこにいたるまでの道のりで迷ってしまう人が多いのかもしれないですね。
そこで、次回は僕がいつもつくっている野菜スープのつくり方をご紹介することで、「自分の感覚を信じて料理する」ってどういうことかをお伝えしたいと思います。

素材を感じる

さっそくですが、今日はそのプレクラスとして、「素材を感じる」というテーマでお話を始めたいと思います。
素材のいちばんのおいしさを引き出すために必要なことはなんだと思いますか? 僕が思うに、まず、素材そのものをよく感じること。
食堂くしまには、毎朝新鮮なオーガニックの野菜が届きます。箱を開けて、届いたばかりの旬の野菜を手にとって、そのエネルギーを感じてみる。
素材そのものからインスピレーションを受け取って、出来上がりを想像する。その出来上がりを目指して調理を進めていく、という順序です。
このとき使うのは目、手、鼻の3つの感覚。

①目で味わう
野菜の勢いを目で見て感じる。味がぎゅっと詰まっておいしそうかどうか、ラベルに惑わされず、内側を探る気持ちで。

② 手のひらで味わう
目でよく味わったら、次は手に取ってみて。先ほど目でとらえた「詰まっている」という感じ、その強さを手のひら全体で確かめて。

③鼻で味わう
ナイフでスパン! と切ったとき、シュッと香りが立ち上ったら、鮮度が良い証拠。香りを確かめたら、加熱したらどうなるかも想像して。香りから新しい素材の組み合わせがひらめくことも。

素材の力を確かめることは、ていねいに料理をすることの第一歩でもあります。素材を感じる方法がわかったら次のステップへ。
次回は素材のおいしさを引き出すために、「自分の感覚を使って料理する」方法をお伝えしたいと思います。

食堂くしまのレシピ帖
僕のしあわせなごはん 野菜中心イタリア家庭料理

くしまけんじ 著
中央公論新社 1,500円(税別)

素材を活かしたシンプルな料理。はっと驚く食材の組み合わせ。
つくる人も食べる人も幸せにする「食堂くしま」のレシピが満載です。
ご家庭でも試したくなること間違いなしです。

「食堂くしまのレシピ帖 – 僕のしあわせなごはん」ご購入はこちら

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くしまけんじさんに習う
しあわせごはんのつくり方

家族のために、パートナーのために、子どもたちのために……
大切な人たちを元気にするごはんをつくるには、料理をする人もハッピーでいることが大切。
くらすことでは、くしまけんじさんと一緒に、
楽しくていねいにお料理することを考える教室を不定期に開いています。

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