くしまけんじのしあわせ巡るごはんのつくり方 vol.2
自分の感覚を信じて料理をするのって楽しい

構成・文 松本あかね
写真 有賀傑

——くしまけんじさんに教えていただく、料理を楽しむ秘訣。
二回目の今日は、食堂くしま定番のスープの作り方を通して、
目分量の感覚を養うレッスンをします。

くしまけんじ
料理家。東京・西荻窪にある「食堂くしま」店主。旬の野菜をふんだんに使った大胆な食材の組み合わせと、繊細なお料理が評判。体に優しいイタリア料理を提供し、人気を集める。2015年5月『食堂くしまのレシピ帖 僕のしあわせなごはん 野菜中心イタリア家庭料理』を刊行し、現在、執筆活動、レシピの提供、料理教室など、活躍の場も広げている。
食堂くしま:〒167-0042 東京都杉並区西荻北5丁目26-17 万代荘1階
shokudoukushima.com

皆さんは料理するとき、何に従っていますか?
料理の本? それともタイマー?
僕はふだん、計量カップやスプーンを使いません。
というのも、食堂くしまでお出ししている料理に決まったレシピはないからです。

味覚は日によって変わる

お天気や体調が日によって異なるように、人の味覚も日によって変わるもの。野菜の状態も日によって違うでしょうし、そうするとグラム数だけでは計りきれないところも出てくる。
だから昨日はこうしたけれど、今日はこうしてと、同じ料理でも日によってちょっとずつ違う。でもその日の僕がおいしいと思うものなら、その日のお客さんにもちょうどいいのかなと思っていて。
今日の「おいしい感覚」に従って料理しています。

自分の感覚で料理をするのって楽しい

自由にのびのびと料理をするためには、一律のレシピに従うことで閉じてしまっている(使わないでいる)感覚を使うことが必要です。
そこで、今日は計量カップを使わずに、いろいろな野菜の入ったスープを作ることを通して、自分の感覚を使って料理するレッスンを始めてみたいと思います。

目分量の感覚をつかむ

スープを作るときはまず材料を並べてみて、出来上がりを思い描きます。
もうひとつのポイントは、いつも同じ鍋を使うこと。
なぜなら同じ鍋を繰り返し使ううちに、数えたり、計ったりしなくても、鍋のこのくらいまで入れればよし、という割合が目分量でわかるようになってくるから。
「この大きさの玉ねぎなら3個」、「玉ねぎがこのくらいならセロリはこのくらい」、「火の通り方が似ているから、同じ大きさに切ろう」という調子で、切ったはしからどんどん鍋に入れていきます。
鍋の中のバランスを見つつ、次の野菜はこのくらい入れよう、と考える。そういう感覚です。

「この野菜の組み合わせにこれを加えたら合わないな」、「こっちの野菜を入れたらもっとおいしくなりそう」。
煮込んでいるうちに甘い香りがしてきたら、「野菜の香りを生かすために、調味料は塩だけにしておこう」、とか。
そんなふうにお鍋の中を見ながら、素材と向かい合って料理していくと、どう調理するか、どんな味付けにするかなどの感覚が自然にだんだんと身についてくると思います。

これからあげるレシピも、一度この通りに作ってみて、
みなさんお手持ちの鍋の中でどのくらいの量になるのかを見てもらえると、そのうち計ったりしなくてもできるようになっていくし、アレンジもきくようになっていくと思います。

白いんげん豆と季節の野菜のスープ(5〜6皿分)

材料:

  • 最初に炒めるグループの野菜
    白いんげん豆150g、玉ねぎ3個、セロリ1本、人参1本、カラーピーマン(赤・黄)各1個
  • 後から加える野菜
    じゃがいも大1個(180gくらい)、さつまいも大3分の1個(60gくらい)、プチトマト、ローリエ
  • オリーブ油、塩

*白いんげん豆は前夜からたっぷりの水に浸しておく。

①「鍋を自分のそばに持ってくる」
このスープを作るときは、いつも同じ鍋を使うことをおすすめします(ここでは直径20センチの『ルクルーゼ』を使用)。
「鍋を自分のそばに」というのは、野菜を切ったらどんどん鍋に入れ、鍋の中の野菜の量を目で見ながら、感覚を掴んでいくため。

②出来上がりをイメージして、野菜を切る
「じっくり炒めて引き出した玉ねぎと人参の甘み、セロリの香りをベースに、カラーピーマンのほろ苦さ、トマトの甘酸っぱさで軽やかさを添えたスープ」、というのが今回作りたいスープのイメージ。それと野菜が煮崩れないよう、形を残して煮込むこと。

玉ねぎ、セロリは火の通りが同じくらいなので、同じように1センチ角くらいの大きさに切る。
人参はそれより固いので小さめの7ミリ角ほどに。
カラーピーマンは5ミリ角ほど。
ここまでが最初に炒める野菜のグループ。

③切った順に、どんどん鍋に入れていく。
分量、他の野菜に対しての割合を目で確認しながら鍋に野菜をいれていきます。

④オリーブ油を3、4周(大さじ3くらい)回しかけて、強火にかける。
「ジャーッ」と大きな音がするようになったら、弱火にする。
「シャ…シャ…シャ…」という音がする状態を保ち、気長に火を通す。
時々上下を入れ替えるように混ぜて。かさが減って、甘い香りがしてくるまで炒める。

⑤ 白いんげん豆とセロリの葉3分の1本分、ローリエを加え、豆を浸しておいた水を八〜九分目くらいまで加えて強火にし、沸騰したら弱火に落として、蓋をして45分ほど煮る。
豆が柔らかく煮え、ふたつに割れるようになったら、芋類、プチトマトを入れる。

⑥ じゃがいも、さつまいもは1,5センチ角くらいに切る。
煮崩れさせたくないので、大き目に。(サツマイモは浸るくらいの水加減に塩ふたつまみを入れ、さらしておくと、ぐっと甘みが引き出される)
蓋をして弱火で15分から20分煮る。

⑦ 味見をする
塩は小さじ2位を目安に加えて味見をし、足りないようなら少しずつ足していく。その都度、味見をしながら、素材の味がよく感じられる程度の塩加減に仕上げる。
一旦濃く味付けしてしまうと、水を足して薄めるしかなくなり、せっかくの野菜の旨味が薄まってしまう。

できあがり!

ドサッ、と盛る

みなさん、料理の盛り付けはたっぷり派? それとも軽め派? 僕はたっぷり派。
性格的なものだと思いますが、大きなお皿に少しだけだと寂しい気がしてしまうし、
「足りなくて我慢している人がいるんじゃないか」、と心配するのがいやなんですね。
うちの母もそうで、たくさん作ってお腹いっぱいになるまで食べてっていう主義でした。

それにドサッとした盛り付けが僕の料理をおいしく見せてくれると思っていて。
お皿でいうとリムが隠れるくらい。
この間もお客さんが「これなら盛り付けも真似できそう」って(笑)。
スープなら迫力を感じさせるくらいたっぷり盛り付けて、
みんなで食べる、そういうのがいいと思っています。

道具に助けられる

料理を楽しくしたいとき、使い勝手の良い道具に助けられることは多々あります。
僕の台所道具は決して多くはないけれど、調理中の小さなイライラを解消してくれる道具は良き相棒。
いつもそばに置いておきたいものです。

グレーター:
かたまりのパルミジャーノはもちろん、硬いものをすりおろすときに使います。レモンの皮を削ると、香りがふわっと立ちあがります。

小さなスパチュラ:
細身の小さなスパチュラは、小鍋を混ぜる時にちょうどよい大きさ。見つけたら買い足すようにしています。

大きなスパチュラ:
耐熱性でスコップ状のもの。炒めやすく、そのままよそうこともできるから一つで二役。重宝しています。

食堂くしまのレシピ帖
僕のしあわせなごはん 野菜中心イタリア家庭料理

くしまけんじ 著
中央公論新社 1,500円(税別)

素材を活かしたシンプルな料理。はっと驚く食材の組み合わせ。
つくる人も食べる人も幸せにする「食堂くしま」のレシピが満載です。
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