アーユルヴェーダが教えてくれる新しい親子関係

教えてくれる人 池田早紀
構成・文 松本あかね
イラスト SAITOE

その⑦【最終回】
わたしと子どものドーシャを調和する

自分自身の体質(=ドーシャのバランス)、子どもの体質、そしてその体質の組み合わせによって、日常生活の中でもさまざまなドラマが生まれています。
最終回の今日は、異なるドーシャの親子が調和をしていくためのポイントをお伝えします。
皆さんは異なるドーシャ同士が調和するには、どんな方法があると思いますか?

この場合の「調和」とは、決してそれぞれの個性を抑えて和することではなく、それぞれの違いを認め合いながら共に在ること。
そもそも、
Vata ヴァータ(風)の語源はサンスクリット語で「動く」、
Pitta ピッタ(火)の場合は「変換する」、
Kapha カファ(水)の場合は「抱きしめる」、という意味があります。
これらの全く異なる特徴を、まずはそれぞれの「違い」を「違い」として認識すること。
そして、それぞれのドーシャが「過剰」にならないようにすること。この2つが調和のポイントとなります。

「過剰」にならないようにというのは、
ヴァータ(風)なら、そのエネルギーが過剰になって大嵐にならないように、
ピッタ(火)なら大火事にならないように、
カファ(水)なら、洪水にならないようにすること。

そして、その人の中でドーシャのバランスがとれていると、ヴァータの場合は人の肌をくすぐる心軽やかな風のように在ることができ、
ピッタなら明るく人を導く灯のように、カファは穏やかに佇む湖のような存り方ができます。
このように内側のバランスのとれた状態であれば、ほかのドーシャとの調和もスムーズにいきます。
逆にバランスが崩れていると、そのドーシャの良い性質よりも悪い性質が引き出されやすく、
自分自身の内側でも、周りとの間でも不調和が起こるもの。
もし「ドーシャが過剰になっているな!」と思った時には次の方法を試してみてください。

ヴァータママ、ヴァータっ子には「気分転換」
ヴァータ(風)のエネルギーが過剰になり易いのは、慌ただしいとき、生活が不規則なとき、空腹時、睡眠不足が続くとき。そして秋や季節の変わり目です。

そんなときは、いつもよりもたくさん寝ることを心がけてください。また日常生活に気分転換、音楽、ダンスなどを上手に取り入れて。
食べ物は生野菜や冷たい飲み物は控えましょう。温かいスープで肉や野菜、適切な油分を摂ることで過剰になっていたドーシャが鎮静化していきます。

ピッタママ、ピッタっ子には「自分の舞台」
ピッタ(火)のエネルギーが過剰になり易いのは、競争が激しいとき、責任のある立場にいるとき。そして夏や陽射しの強い日です。

そんなときは、まず意識して呼吸を深くし、体に無理をさせすぎないこと。そしてどんなにささやかな機会でもよいので、自分の舞台をもちましょう。自分が舞台に立ち何かを発表したり、皆に見てもらって拍手喝采を浴びたりするシチュエーションを、趣味やお稽古ごとなどで作ってみてください。
食べ物では玄米やお肉などは控えて。身体を冷ますキュウリなど瓜科の野菜や牛乳、果物を摂ることで、ドーシャのバランスがとれていきます。

カファママ、カファっ子には「静寂」
カファ(水)のエネルギーが過剰になり易いのは、体を動かさないでじっとしているとき、眠りすぎているとき。そして寒い季節です。

そんな時には、体力の半分程度の軽い運動を日常的に行うようにしてください。また静寂の中に身を置くことも大切なこと。
食べ物ではチーズ、ナッツ、乳製品、お肉、甘いものを控え、豆類、お野菜をたっぷり摂ることで、過剰になっていたドーシャのバランスがとれていきます。

以上が、日常の中で過剰になった不調和なエネルギーを鎮静化し、調和に導いていくための具体的な方法です。
ドーシャが異なれば、親子であってもそれぞれ心と体のチューニングポイントが異なります。
季節によってすごし方を工夫してみたり、ドーシャのバランスが崩れている家族のために献立をアレンジしてみたり。
ドーシャのバランスがとれてくると、合わない性格だと感じていたのに、意外なハーモニーが生まれていた、
というような嬉しい変化が訪れ始めます。

◎親子として出会った理由

感情的なことや感覚に敏感なヴァータママ、知性的でしつけや倫理観に重きをおくピッタママ、優しさや思いやりを大切にするカファママ、それぞれに特徴がありますが、これらはあくまで無意識のレベルにおいて、自然に行われていること。それぞれの体質の傾向とも呼べるもので、どの体質が良いとか、また母親に向いているとかいった判断の材料にするものではありません。

親子だから体質が同じということはなく、ほとんどの場合、異なる体質を生まれ持って親子として出会い、存在している。そのことから私たちは多くのことを学ぶことができます。つまり、異なるドーシャを持つ子どもとの関係を楽しみ、味わい尽くしていくこと。それが、お互いを認め合うということにほかならないのだと思います。

◎お母さんでありながら“私らしく”

お子さんと接する中で、どうしてもイライラしてしまう、あるいは戸惑い、頭ではわかっていても、うまく受け止められないことがあるとしたら、そのときはヴァータ(風)、ピッタ(火)、カファ(水)というドーシャ理論を思い出してみてください。

子育ての時期はどんなお母さんであっても、ピッタ(火)の要素が増えるもの。子どもを守るため、これまでの自分には想像もできなかったような強さを発揮したり、公平や正義について、また社会問題についても、真剣に考えるようになっていたり。ピッタは子どもを導く親として欠かせない大切なエネルギー。また人生のこの時期(アーユルヴェーダでは30代—60代といわれます)において最も盛んになるエネルギーでもあります。
それを踏まえ、自分という人間についても、アーユルヴェーダの智慧を借りてみつめなおす時間をとってみましょう。
持って生まれたドーシャのバランス、そしてこの時期に多くなるピッタのバランスをとることができたら、
自分らしさと母親らしさが無理なく共存する、新しい自分自身をみつけることができるといえるのではないでしょうか。

自然界は拮抗と調和を絶えずくりかえしながら、完全な姿を保っています。
風が全く吹かないと大変なように、太陽が全く照らないと大変なように、
雨が全く降らないと大変なように、風、火、水どの要素一つ欠けたとしても、世界は成り立ちません。

アーユルヴェーダのドーシャ理論で子育てをひも解くこと面白さは、人の個性には絶対的なよい、わるいなどなくて、それぞれ異なるもの、
という違いそのものをあたりまえとする視点に気付くことに、凝縮されているともいえるでしょう。

最後に、もう一度、留意点を。

アーユルヴェーダでいう体質は、決してフィックスしたものではありません。
おひさまの昇り沈みがあり、四季の移ろいがあり、一時として同じ姿を留めることのない自然界のように、
常に一定のレベルを保つために、ゆらぎながら生きているのが人間です。
誰しもが大きな宇宙(自然界)として全ての要素を備えていて、そのうちの増えやすいものを、
その人の体質(=ドーシャの偏り)と呼んでいるのです。

ドーシャを知るのは、ドーシャをバランスさせる手段を講じるため。
これを機に、人間をやさしくみつめるアーユルヴェーダの智慧の豊かさを、
親子ですごす毎日の時間に活用してみてください。

アーユルヴェーダの人間観がその発祥以来、今日までそうであったように、
これからもどなたの暮らしの中でも役に立つことを祈っています。

profile池田早紀(いけださき)
2002年、心理学を勉強中に南インドでアーユルヴェーダに出会い、その体にも心にも快適な治療法に衝撃を受ける。2006年よりアーユルヴェーダ・カウンセラーとして国内外のさまざまなクリニックや医療施設で研修・施術の経験を積み、トリートメント、カウンセリングを行う。イベント、セミナーなども多数開催。現在は一児の母。

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