教えてくれる人 池田早紀
構成・文 松本あかね
イラスト SAITOE
その②
現在のわたしのドーシャを知る
二回目の今日のテーマは「現在のわたしのドーシャを知る」。
一回目でお話しした、自然界の三つの要素「風・火・水」、
これらのもつエネルギーを自分の中に感じることが、現在の体質(=ドーシャのバランス)を知る手がかりになります。
さあ、ダイナミックな自然界を思い起こしてみてください。
そのイメージをシンプルに日常の中の自分自身のあり方の上に重ねてみましょう。
こんなときの「わたし」〜玄関篇
「約束があり早く出かけたいのですが、玄関で子どもが自分で靴を履くと言って、聞きません。
あなたならどうしますか?」
a. うーん、このままじゃ時間に遅れちゃう・・・どうしよう!「時間がないからお母さんがやってあげるね!!」とは言ってももう間に合わないから靴はあとで履かせましょ!今日は抱っこで走っていくわー!
b. 「この子が自分で靴を履くスピードでは時間に間に合わないから、ここは私が履かせましょう」。テキパキ履かせて、時間通りにさあ出発!!
c. 「時間がかかりそうだけど、子どもが一生懸命履いているから見ていることにしましょう。約束には遅れちゃうけれど、まあしょうがないかなあ」
小さなお子さんのいるご家庭ではよくありそうな玄関先でのエピソード。これらa.b.cのお母さんの反応の違いはそれぞれヴァータ(風)、ピッタ(火)、カファ(水)というドーシャの違いを表しています。さっそくそれぞれのドーシャについて、詳しく見ていきましょう。
「出がけはバタバタ」ヴァータママ
aは「あっちにしよう」と思った次の瞬間にこっちにしてみたり、「あそこに行こう」と思ったけれどやっぱりここに行ってみたりと、思考も行動も常に動き続けているヴァータママ。ヴァータ(風)の特徴のポイントは“一カ所に留まっていない”こと。ゆえに出発前の慌ただしさも定番。ときにおっちょこちょいな忘れ物も多いけれど、いたって気にしない、いつでも明るいお母さんです。
「計画通り、時間通り」ピッタママ
bは、先ほどの方向性の定まらない動き方をするヴァータママに比べ、“理路整然と一直線に動く”ことが特徴のピッタ(火)ママ。時間にも正確で、行動に無駄がありません。合理的なことを好むので、時には予想外の子どもの動きにイラッとしてしまうこともありますが、決断力に富み、常によりよいことを求め、革新と努力をいとわないテキパキお母さんです。
「あわてず騒がず」カファママ
cは、先ほどのヴァータ(風)、ピッタ(火)と比べると何事も“ゆっくり”なカファ(水)タイプ。動くよりも動かないことの方が得意なので、子どもがしていることを待つことも苦ではありません。自然体でいるといつのまにかまわりから遅れをとっていることもあるけれど、そんなこともあまり気にならない、のんびりゆったりマイペースなのがカファママです。
こんなときの「わたし」〜公園篇
「子どもが友達と公園でおもちゃの取り合いをしているようです。あなたがする行動はどれですか?」
a. 慌てて飛んで行くが、何をしていいかわからずおろおろしている。
b. 直ちにお互いの意見をきいて公平に遊べるように采配する。
c. 遠くからじっと様子をみている。
こちらも日常的にありそうな公園の一コマですね。
「不安が湧き上がる」ヴァータママ
a:動きそのものである風の要素が増えすぎているときのヴァータママは、些細な変化にも敏感で、不安や心配ごとも尽きません。周りの目も気になるので、どうやって注意したらよいのしら? うちの子が悪いのかしら、それとも相手の子? 相手のお母さんはどう思っているのかしら? と瞬時にいろいろな思いが頭の中でスパークしてしまいます。
「お奉行様のように公平」ピッタママ
b:熱い火の要素を多く持っているピッタママは、正しいこと、公平であることをとても大切にしています。指示をしたり決断したりすることが自然にできるので、喧嘩の現場に出くわしても、自分の子ども、相手の子どもを問わず公平にピシッと采配できるママです。
「まずは見守る」カファママ
c:水の要素を多く持つ、ゆるゆると流れる大河のようなカファママは、少しのことでは動じません。子ども同士でなにかあっても大抵のことがなければ穏やかにじっと見守っています。逆に自分の子どもに何かあっても、なかなか自分からは言い出せないことも。
いかがでしたか?
「これは私かもしれない」と思い当たる節はあったでしょうか。
とはいえ、以上のエピソードは生活の中の一例にすぎず、あなたという人間の中のほんの一コマ。
風の強い日、日照りの強い日、雨のざあざあ降る日があるように、
あなた自身の中の「大いなる自然」にも、風が強く吹く日もあれば、火がぼうぼうと燃えさかる日、
またゆったり流れる水の要素が強くなる日もあるでしょう。
「私はヴァータ(風)体質」と決めつけてしまうのではなく、
「ヴァータっぽくなることが多いみたい」「でもピッタも増えやすいかも」というように常に移ろい、
揺らいでいる自分をその都度、自然を観察するようにみつめてみてください。
風が風であるように、
火が火であるように、
水が水であるように。
そこにはよい/わるいはなく
あるのはその要素としての特徴だけ。
アーユルヴェーダの視点を借りて、どうか自然と同じようにありのままの自分、
そしてお母さんとしてのありのままの姿を受けとめて、
そんな自分を、自然を楽しむように楽しんでみてはいかがでしょう。
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池田早紀(いけださき)
2002年、心理学を勉強中に南インドでアーユルヴェーダに出会い、その体にも心にも快適な治療法に衝撃を受ける。2006年よりアーユルヴェーダ・カウンセラーとして国内外のさまざまなクリニックや医療施設で研修・施術の経験を積み、トリートメント、カウンセリングを行う。イベント、セミナーなども多数開催。現在は一児の母。
sakin-ayurveda.jimdo.com
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