アーユルヴェーダが教えてくれる新しい親子関係

アーユルヴェーダが教えてくれる新しい親子関係(6) 〜わたしと子どもの関係をドーシャから紐解く

教えてくれる人 池田早紀
構成・文 松本あかね
イラスト SAITOE

その⑥
わたしと子どもの関係をドーシャから紐解く

アーユルヴェーダが教えてくれる、新しい親子関係。
いよいよわたしと子どもの関係を、ドーシャ理論をもとに読み解いていきましょう。

自然界の中の風、火、水にはそれぞれ全く異なる特徴があるように、
体質(=ドーシャのバランス)が違えば、同じ親子であっても全く異なる生理的な欲求や行動パターンを持つことがあります。
お母さんにとっては当たり前のことが、子どもにとっては窮屈だったり、
逆に子どもにとって自然なことが、お母さんにはどうしても理解できないことだったり。

そしてそこには、体質という自分自身の個性を知るヒントが眠っています。
さっそく日常の中の次のような場面を見てみましょう。

家で(幼稚園児の場合)

a.「僕のママはいつも『キチンとしなさい!』というけれど、なんでいつもそんなに怒っているんだろう? あ! またクツを履かないでお外まで遊びにきちゃった! アハハ」

b.「ママといると落ち着くなあ、幼稚園では居場所がないけれどお家にかえると安心でうれしいや。もっとおやつ食べようっと」

c.「え? 今から友達の家へ遊びに行くの? ママはもう支度しているけれど、わたしはこのまま家にいる方がいいなあ」


a. ピッタのお母さんとヴァータの子ども

自由奔放なヴァータっ子には、規律を求めるピッタママのイライラが理解できません。怒られてもすぐに忘れてケロッ。風のように一所に留まることなく、常に動き回っていることがヴァータっ子にとっての居心地のよさなのです。ママのイライラは、ピッタの「火」がヴァータの「風」に煽られて燃え盛るせいと捉えて。ふたりはお互いに「自由と規律」、「感覚と理性」という、相反するものを学び合う関係なのだと考えましょう。自由な身体表現や歌、楽器、図画工作などを一緒に楽しんでみると、ヴァータっ子の生き生きした姿にピッタママは自分にはない才能を感じるはずです。


b. カファのお母さんとカファの子ども

のんびりおっとり、スローペースなカファっ子にとっては幼稚園のにぎやかな集団生活よりも、家での生活の方が大切。同じくもの静かでゆったりしているカファママといると、心からくつろぐことができます。いつでも美味しいものを食べられることも安心理由の一つですが、つい親子で食べすぎてしまうなんてことも。


c. ヴァータのお母さんとカファの子ども

みんなでワイワイ集まるのが好きで、ひらめくとすぐ行動するヴァータママに対して、おなじみの「いつもの日常」を過ごすことがカファっ子の安定の鍵。あまり自分の意見や不満を言わずに、どんなことでも受け止めるところがありますが、ヴァータママにとっては刺激が少なくて退屈に思えるくらいのことが、カファっ子にとっては快適であることを覚えていてあげて。

公園で(幼稚園児の場合)

「お友達と遊んでいたら、突然知らない子が来て、お友だちに意地悪したんだ」

a. 「ママはその場でその子を注意しようとしたけれど、僕だってお友達のためにママより先にその子にダメ! ってすぐにその場で言ったんだ!」

b. 「僕はその場でそいつをやっつけた! ママに言ったら、誰とでも仲良くしなきゃだめよ、と悲しい顔をされちゃった」

c. 「僕は怖くてすぐ逃げちゃった! そんな意地悪な子いや〜ね〜、とママも眉をひそめていたよ。それでその後はすぐにまた楽しく遊んだんだ!」


a. ピッタのお母さんとピッタの子ども

公平であることや正義を重んじるピッタ同士の親子は、行動の決断も素早いもの。価値観が同じなので、目標に向かって進むときはまっしぐら。お互いに「なかなかやるな!」と思えるようなよい仲間でもあります。逆に意見が異なるときは、双方ともに自分の意見を曲げようとしないことも。一度決めるとテコでも動かない真っすぐさ、頑固さもお互いに「なかなかやるな!」です。お互いの「火」のエネルギーの強さを認め合うようにすると、スムーズにいきます。


b. カファのお母さんとピッタの子ども 

お友達が意地悪されているのを黙って見過ごすわけにはいかないピッタっ子。すぐ応戦して、勝つまで粘ります。正義のために戦うことで喜びを感じるのですが、平和主義のカファママはみんなが仲良くできたらいいのに、と戸惑いがち。でも戸惑ったままでよいのです。はらはらしつつも見守っていると、ピッタっ子はどんどん独立心を育てていきます。ママがおおらかでいることで、いざというときにはお互い最も頼りになる存在でいられるでしょう。


c. ヴァータのお母さんとヴァータの子ども

怖がりなヴァータっ子はピンチになると、得意のすばしっこさで真っ先に回避。ヴァータママならそれに対してすんなり共感して終わります。切り替えの早さも、ヴァータならでは。楽しさ優先でテンポよく行動するヴァータ親子のペースは、周りから見ると時に目が回るほど!ただし動きすぎから体調を崩すこともあるので、疲れ果ててしまう前に休息をとることを忘れずに。また耳からの刺激には特に敏感。TVや音楽をつけっぱなしでご飯を食べるとヴァータが乱れてしまうので、避けましょう。

海水浴場で(小学校低学年の場合)

a. 「わ〜、海だ〜。きれいだなあ。波の模様ってずっと見ていても飽きなくてすてき。ママはせっかく来たから早く海に入ろうというけれど、僕はずっとここに座ってアイスクリームを食べながら見ていたいなあ」

b. 「海って楽しいな! お母さんもっと遊ぼうよ! って思ったらあれ? お母さんビーチで寝てる〜! じゃあ今新しくお友達になった子と遊んでよーっと!」

c. 「約束してた海だから嬉しい! あれ? ママはもう疲れちゃったの? 朝一番に来て準備体操をして、海でみんなで競争して、その後は砂遊びをして、また海に入って、焼きそばを買ってもらって、まだまだ計画があるのにもう帰ろうだなんて、そんなの絶対にイヤよ!」


a. ピッタのお母さんとカファの子ども

ロマンチストな一面をもつカファっ子にとって、海はそこにいるだけで満足できる場所。アクティブなピッタママには物足りないかもしれませんが、カファっ子にとって、同じものをじっと見ていることはとても楽しいことなのです。
ママはぜひマリンスポーツなど自分のしたいことを楽しんで!無理に一緒にアクティブでいようとしないこと。カファっ子にとっては活動的なピッタママを見ているだけで充分に楽しいのですから。


b. カファのお母さんとヴァータの子ども

興奮しやすいヴァータっ子は海をエンジョイ、そして物怖じせず誰とでも遊べるのも特徴です。アクティブというよりのんびり派なカファママは、そのペースになかなかついていけません。ただ瞬発力はピカイチでも、持久力はそれほどでもないのがヴァータっ子。疲れすぎないように、カファママにはせっかちかな? と思えるくらいのタイミングで遊びを切り上げるのがちょうどいい。


c. ヴァータのお母さんとピッタの子ども

ピッタっ子にとって約束の遂行はとても大事なこと。自分で計画を立てることも好きで、元気もやる気も人一倍です。一方、瞬発力はあっても持久力・体力面がウィークポイントのヴァータママは先にダウンしてしまって、ピッタっ子を怒らせてしまうことも。とはいえ実は最も日焼けや直射日光に弱いのがピッタっ子。特に夏は皮膚の炎症のトラブルを起こしやすいので、日の当たりすぎに気をつけてあげて。

いかがでしたか?
ドーシャの違いから起こりやすい、親子のすれちがいのエピソードを描いてみました。
どこか、ご自分とお子さんの間に通じるものがあったでしょうか。
ドーシャの違いは日常の中にさまざまなドラマを生み出します。
心に留めていただきたいのは、ドーシャの違いは決してトラブルの素という訳ではないこと。
むしろ、異なる個性を学び合うことで、親子の関係性をより豊かに、奥行きのあるものに深めてくれます。
次回は、お互いのドーシャが調和し、響き合う関係をいっしょに考えてゆきましょう。

profile池田早紀(いけださき)
2002年、心理学を勉強中に南インドでアーユルヴェーダに出会い、その体にも心にも快適な治療法に衝撃を受ける。2006年よりアーユルヴェーダ・カウンセラーとして国内外のさまざまなクリニックや医療施設で研修・施術の経験を積み、トリートメント、カウンセリングを行う。イベント、セミナーなども多数開催。現在は一児の母。